2015年12月25日(金) 7:00pm 東京文化会館
ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調 15′11′16′23′
ソプラノ、安藤赴美子
アルト、中島郁子
テノール、大槻孝志
バリトン、甲斐栄次郎
合唱、二期会合唱団
エリアフ・インバル 指揮 東京都交響楽団
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インバルの棒というのはヤノフスキなんかと同様、叩きつけ派で、突き上げ派に見られるような音の出はここらあたりどこでも可能といった呼吸の不揃いの確率が高くなるやりかたのファジーな部分を嫌っていることからくるものと推測されます。それがデフォの前提ですから、プレイヤーはまずそこまで意識レベルを上げてからの演奏行為となるわけです。インバルの作戦勝ちと言ったところもありますが、若いときに彼の時代の時代音楽やいわゆる現代音楽を振っていればこその今という話しでもあります。正確性は彼の要求の前提でしかないということ。
そのようなことを頭に描きながら観聴きしているとなるほどと思うことはたくさん出てきます。コントロールと開放。コントロールは彼が振るという行為により、つまりポーディアムに立つことによる存在自体が、このオーケストラにとって既に解決しているものとみるべき。ですから聴衆が聴くのは開放の音楽です。素晴らしい、というより、凄いという話にもなるわけですね。
まぁ、一言でいうと第九のレベルが高い。
インバルの指示は非常に的確で明快。彼の得意とするテクスチャの浮かび上がらせ、これがこのオーケストラの明るくて硬くて一見、録音向き的なサウンドに合致していて見事に出てくる。インバルの指向性がこのオーケストラと一致しているかどうかは別の話しですが、このようなオーケストラ・サウンド表現で解決されるケースもあるということです。
パシーンパシーンとインストゥルメント単位に揃って研ぎ澄まされた鋭角的な響きは露骨ではあるが正しく分離したサウンドは聴く者に生理的快感をもたらすのですね。ティンパニが硬すぎて強すぎるのが個人的には耳障りでなんとかならないものかと思いますが、これはこのオケをドライブする上で必要なものだとインバルは感じているふしがありますね。歌えるティンパニがリズムを正確に取る、これが理想かもしれません。一流を感じさせるにはこういったことがクリアできていないとなかなか世界でトップレベルオケとまではいかないのかもしれません。
したがって、インバルが年月とともにこのオケへの要求が高くなるのは、良いことで、正しいことでもあります。
合唱、ソリスト登場はともに第2楽章後。ソリストは合唱とともに奥の最前列。甲斐さんはじめ柔らかで充実した響き、このオーケストラとのソノリティは聴く側の問題なのかもしれませんけれど、一致したものではないが、年末ですし。
3楽章ホルンソロは1番さん。
因みにホルンをはじめとした作為的な表情はここには無く、パーヴォ・ヤルヴィ&N響ではかなり感じた。インバルが一枚上と思う。
おわり