2016年7月9日(土) 4:00pm サントリー
グラズノフ 四季 36′
Int
ショスタコーヴィッチ 交響曲第15番イ長調 8′、16+5′、18′
アレクサンドル・ラザレフ 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
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前日の公演感想は以下に。
2150- グラズノフ、四季、ショスタコーヴィッチ15番、ラザレフ、日フィル、2016.7.8
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ラザレフが日フィルの首席指揮者として振る最終公演。昨晩はP席で熱演を観ました。今日は定席の正面席で。開始時刻がいつもの2時ではなく4時なのは、後半のショスタコーヴィッチに臨席された天皇皇后両陛下へのスケジュール配慮のためと思われます。
ご臨席のためなのかどうかわかりませんが、それよりもラザレフ最終と言うこともあるのか、とにかく、異様にテンションの高い演奏。100人を数えるオーケストラの個々のメンバーがそろいもそろってこんなに集中力の高いプレイをするのを観たのは、ほんとうに久しぶりの出来事。この前のアシュケナージ、N響のシューマン2番、エルガー2番もすごかったが、あれを上回るハイエスト・テンション、空気が火のようだ。めったにない出来事でした。
ダイナミックさを強調した第1楽章の後、一服して、静かな2楽章。チェロのソロはこの前の横浜ドヴォルザークのソロの勢いそのまま、濃い。流れは横に置かれているが、ショスタコーヴィッチの沈殿していくような曲想にはふさわしい。ベースのソロは黒光りでチェロと同じスタンス。そしてむき出してグイグイ吹かれていくトロンボーンが続くのだが、この演奏ではそのトロンボーンは抑えられていてメゾフォルテぐらいのソロ圧力で、これは意外。この3ソロのバランスなんですが、正面席で聴くと同じ強さに聴こえてくるんですね。絶妙にバランスされたラザレフコントロールにうなる。深刻度をみんなで共有しているようなアトモスフィアが自然と醸しだされてくる。圧倒的な説得力の第2楽章。
この第2楽章と終楽章は前の晩よりもテンポが若干スロー。これは自然なものだろう。第1楽章は今日の方が激しかった気がする、これはノリの良さで迫ってくる感じ。初日より全体的にメリハリがさらに出た感じ。謎が謎を呼ぶ魅惑が魅惑を呼ぶ。大きく水平に展開されていく演奏でこの作品に終わりはないような気がする。
全プレイヤー渾身の演奏で火の出るような勢いの音が静かに進行していく、絶演の極み。
終楽章のパーカッションエンドに移っていくところの弦のユニゾン、もう、ため息状態。
お見事なショスタコーヴィッチでした。感動しました。声にならない。
フライング封じの振りは今日もさえわたり、ペンギン振りヴァージョン2、小さく上のほうで30秒ほど少しずつ両腕を下げながら空気振り。そしてダラッとその両腕をおろし、終わり。ラザレフの首席指揮者としての振りが終わった瞬間でもある。
素晴らしい演奏、ありがとうございました。
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前半のグラズノフは明らかに今日の方がよく揃っている。ブラスのバシャッと感もあまりなくてダイナミックな四季を堪能できました。これからはグラズノフの世界を広げていけそうだ。
それから、天皇皇后両陛下の退席にあたって、N響などは特になにもモーションはないのですが、日フィルさんは全員でラザレフ共々、深々と。このため、ラザレフに聴衆からのさよならは言えるタイミングがありませんでした。これがひとつ心残りと言えばそうかもしれない。今年後半来日してまた振りますからそれを楽しみに待ちましょう。
おわり