河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2254- ヘンデル、ベルシャザル、三澤寿喜、キャノンズ・コンサートcham.O. Cho.、2017.1.9

2017-01-09 23:23:16 | オペラ

2017年1月9日(月) 3:30-7:30pm (4 hour-long) 浜離宮朝日ホール

HFJプレゼンツ
ヘンデル 作曲
プロダクション コンサート・スタイル(日本語字幕付き)
ベルシャザルHWV61

キャスト(in order of voices’ appearance)
1.ニトクリス、佐竹由美(S)、 母
2.ゴブリアス、牧野正人(Br) 敵討ち側(征伐側)
3.キュロス、山下牧子(A) 征伐する王子
4.ダニエル、波多野睦美(Ms) 預言者
5.ベルシャザル、辻裕久(T) 征伐される王

三澤寿喜 指揮
キャノンズ・コンサート室内管弦楽団、室内合唱団

(duration)
Overture 5′
Act1 sc1 10′ (3ピースカット)
Act1 sc2 23′
Tunig pause
Act1 sc3 12′
Act1 sc4 31′
Int
Act2 sc1 12′
Act2 sc2 27′
Act2 sc3 10′
Int
Act3 sc1 11′
Act3 sc2 2′
Act3 sc3 21′

アンコール 2′
(Act1最後のところのユダヤ人の合唱 かな、第九のフシに似てるとこ)


ヘンデルのオラトリオは昔、サムソンのオペラ形式上演を観たことがあって(*)、いたく感動。サムソン音源は結構漁りましたが、他はかじる程度。
今回は曲も団体もお初体験です。

2幕2場でのクライマックス、手が現れ壁に字を書く、ここのところの音楽表現というのは、偉大なものは単純である。それを地で行くもので、瞬時に、シュトラウスのサロメの凄惨シーンでの超高音ベース弾き、これがオーヴァーラップするドラマチック性の強いもの。印象的な音楽表現でした。

第1幕に時間的な推移は無い。4場ともに人物登場紹介とシチュエーション説明。3ピースカットがあるがそれでも80分超えの長い幕。聴く方としてはここを乗り切ればとは割とスイスイいく。
字幕はなじみの縦型両サイドではなく、奥に横にセッティング、国内オペラ上演の字幕初期の頃を思い出すが、ホールのキャパ的には適しているものと思います。訳も概ねわかりやすいものでした。

この1幕で登場人物のキャラが音楽のみで明確に描き分けられていく様はお見事というほかなく、ヘンデルの凄さが圧倒的に迫ってきますね。
母ニトクリスにつけたヘンデルの音符は3拍子系の気品があって美しくノーブルなメロディーライン、ぐっと惹かれます。
預言者ダニエルはテヌートが何かあたたか味を感じさせる。母性的なものとは少し違う、世界の事象、物事への包容力を強く思わせる。じわっと滲み出る達観力とでも言えるか。
征伐側王子キュロスは快活な流れが印象的、ゴブリアスは出番が多くありませんが声質含めベースの基盤という感じ。
タイトルロールのベルシャザルはレシタティーヴォで迫ってくる。ここらあたり、流れは遠くヴォータンの色模様が浮き上がる。

コンサートスタイルとは言え、タイトルロールの辻さんは表情も豊かでキャラがさらによくきまっている。プログラムに紹介されている写真とは随分と雰囲気が違う。メガネをかけていて、まぁ、お母さんが歌っている局面でも色々と表情が濃い。役になりきっていますね。
キュロス山下さんとゴブリアス牧野さんは国内のオペラ上演で観る機会が色々とあるのでなじみ深い。ほかの方々は初めて聴きますたぶん。
ニトクリス佐竹さんのソプラノは声幅があり声量豊かにホールに響き渡る。ヘンデルの美しいメロディーを歌い尽くす。いいですね。
みなさん、同じように声幅がある。デカいホールで聴くのとは随分と違っていて、肌触りがわかるような感じ。この後の2幕3幕では劇性が増してきてドラマチックな表現にみなさんなっていくわけですが、基本的にこの1幕がキャラ決めの重要な幕なのがよくわかる。
第1幕大詰め、ニトクリスとベルシャザルの掛け合い、そして流れるように合唱へ。ここらあたり言葉と音楽のマッチ、リアリティを感じさせてくれるものでビンビンきました。
合唱はステージ奥に1列に整列。透明、力感、前にくる響き。この幕は4場それぞれの締めシーンでコーラスされる。第4場の最後だけフラットになってピッチの音探しをしながら終わった感はありましたが、ほか、概ね、響きに浸る感じ、いい感じ。


第2幕は時間が推移しドラマとしてはここから。ストーリー通り音楽もドラマチックな展開へ。2場のクライマックスの手の表現は最初に書いた通りのお見事さです。
プログラムにあるあらすじの説明、文字解きの説明と、字幕の内容が少し異なるように思う。双方、硬い訳。一番ポイントな部分ですしもっとクリアなほうがいい。すっきりしない訳です。いいたいところは分かるが。
いずれにしてもここがストーリーの転換点。山を駆け上がったベルシャザルは意図せずこれから山から転げ落ちる。ヘンデルの音楽は緊張感の連続で圧倒的。なにやらベルシャザルは身の破滅を自らさぐっているのではないのか、音付けはそんな感じですね。ダニエルの先を読むヘンデル。
この幕、ゴブリアスの出番は無し。

終幕、一番短い幕、音楽の凝縮度が高い。ドラマチックな2幕から場はさらに緊張感が増してくる。でもそれも2場でベルシャザルが討たれるまで。
場はゆるみ、予定調和的にエンディングへ。この3場は結構な時間をとっていたように思います。ゆるみつつ、とりあえず、平和のすそ野は広がりをみせる。

管弦楽の腕前は素晴らしかった。息の長いパッセージを歌い切るストリング、この打ち込みよう!
後半になってこのストリングたまに、ボサボサと縦ずれ起こす局面もすぐに自覚症状に目覚め立ち直る。張りつめた演奏、打ち込み集中、それでいて明るくクリア。
オーボエお二方は特に息があっていて気持ちいいプレイ。お見事で、唖然です。ここでの管は難易度高いでしょうね。素晴らしいアンサンブル。
チェロのプリンシパルさんは今日の肝みたいなもんで、中心的な役割。つい先だって12月に聴いた初来日アンサンブル・レゾナンツのゴルドベルク弦楽版でのチェロ思い出しました。
その日のバッハにあってもこの日のヘンデルにあっても、音楽的に、それと、場の中心なんですね、いたくわかりました。
指揮の三澤さんもお初です。ストイックとさえ思えるのはこっちの勝手な想像で、ご本人はヘンデルの化身となっているのだろうと思いますね。ボサボサというのは指揮者によるところだとは思いますが、過剰な動きを排した動きは堅実にして強固なヘンデル像を作り上げていたと思います。ありがとうございました。

この日の500円プログラムにはオリジナルの英語の日本語訳がついているのでなんだかお得。カットが残念ですが、国内盤のCDに付くブックレット、あれの占める価格、高いですからね。メリット感あります。
充実の内容共々、ありがとうございました。
おわり

(*)
ヘンデル/サムソン
1986年2月15日(土) 8:00-11:40pm メト
ジョン・ヴィッカーズ
キャロル・ヴァネス
ジョン・マッカーディ
レオーナ・ミッチェル
ポール・プリシュカ
ヘイ・キュン・ホン

指揮、ジュリアス・ルデール

 


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