共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はモーツァルト《交響曲第39番 変ホ長調》の完成した日〜ホグウッド指揮による古楽オーケストラの響き

2023年06月26日 16時45分50秒 | 音楽
今日も日中は晴れて、気温がぐんぐん上昇しました。ヘタに外に居たりすると、きちんと水分補給をしていないと具合が悪くなりそうです…。

ところで、今日6月26日はモーツァルトの《交響曲第39番》が完成した日です。



モーツァルトの名作のひとつ《交響曲第39番 変ホ長調 K. 543》は、1788年の6月26日にウィーンで完成されました(上の写真のスコアに完成年月日の記載があります)。

この作品は、後の第40番ト短調、第41番ハ長調『ジュピター』とともに、モーツァルト晩年の円熟した傑作として知られる『モーツァルト後期三大交響曲』の最初の曲です。この《交響曲第39番》の特徴として、モーツァルトの交響曲としては珍しくオーボエが除外されて代わりにクラリネットが入っており、3曲の中ではこの作品のみに序奏がついています。

一連の『後期三大交響曲』は、わずか1ヵ月半の間に連続的に書かれました。しかし、当時の通例から演奏会や出版など何等かの目的があって書かれたと考えられるのですが、父レオポルト・モーツァルトが他界した後のモーツァルトの晩年の書簡は極めて少なく、演奏したかもしれない演奏会などの詳細が不明なため、作曲の動機はいまだ特定されていません。それどころか、この3曲ともモーツァルトの生前に演奏されたかどうかすら定かではありません。

個人的な話で恐縮ですが、モーツァルトの交響曲の中で恐らく私が一番回数多く演奏に参加したのがこの第39番でしょう。大学生の時に初めて演奏してから、プロオケアマオケ問わずめぐり逢うことが多い交響曲で、演奏する度に作品の魅力にハマっています。

ティンパニが主導する堂々たる序奏に始まって、モーツァルトらしい爽快感が楽しいアレグロが展開していく第1楽章、変イ長調という柔らかい響きの中にも時折厳しい感情の嵐が渦巻く第2楽章、これぞモーツァルトのメヌエット!とでも言うべき溌剌とした音楽と中間部のクラリネットのメロディがこの上なく美しい第3楽章、冒頭に展開されるテーマが、弦楽器や管楽器に移ったり、高音と低音でカノンを展開したりと、息つくひまもない疾走感に溢れた第4楽章と、どこをとっても魅力的な作品です。

80年代くらいのいわゆる『巨匠たちの時代』の演奏では冒頭の序奏をかなりゆったりしたテンポで演奏して、その後のアレグロとのテンポの差をかなりつけていました。その後90年代に入って古楽器アンサンブルによる古楽奏法が市民権を得てくると、序奏のテンポがかなり軽快になり、アレグロとのテンポ差がかなり近くなりました。

前者はアダージョという表記をメトロノームの目盛りに照らしてテンポを設定して演奏していて、後者はモーツァルトの時代にはまだメトロノームが存在していなかったこと(メトロノームが開発されたのはこの曲が完成した28年後の1816年のこと)から、より古楽的なアプローチでの演奏をしています。ただ『どちらが正しいか』ということではなく、それぞれを聴き比べて『自分はどちらの演奏が好きか』で選べばいいと思います。

と言いつつも、今回は古楽オーケストラでの演奏でお聴きいただきたいと思います(笑)。クリストファー・ホグウッド指揮によるアカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックの演奏で、古楽オーケストラによる古雅で素朴なモーツァルトをお楽しみください(○HKのカメラワークは相変わらずダメダメですが演奏は素晴らしいです)。


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