29Lib 分館

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調査方法は単純だが、面白く仕立てるセンスで読ませる

2014-10-06 21:00:23 | 読書ノート
パオロ・マッツァリーノ『誰も調べなかった日本文化史: 土下座・先生・牛・全裸』ちくま文庫, 筑摩書房, 2014.

  個人的には『反社会学講座』(参考)以来久々に読むマッツァリーノ本。この文庫版は二見書房からの『日本史漫談』の改題である。土下座の意味の変遷や、「先生」と呼ばれる職業の範囲とそう呼ばれるようになった経緯、ほか全裸、開襟シャツ、子どもにつける名前、明治まで東京に牛がいたこと、殺菌法の違いによる牛乳の匂いの違い、新聞の一面広告の変遷、亡国論の歴史などについて探っている。

  冒頭の土下座の話は以外な事実の連続で面白い。土下座のもともとの意味に「謝罪」は含まれておらず、またその形も江戸時代にはただの「ウンコ座り」のことだったという。時代劇で見る正座して頭を地面に擦り付けるあのスタイルは最近のもののようだ。ではいつ頃からか?というのは中身を読んで確認すべし。このほかのトピックは土下座ネタほどショッキングではないが、そこそこ楽しめる。牛乳の匂いは著者ほど僕は気にならないな。

  その調査方法は、疑問に思った概念について、新聞記事DB、NDL-OPAC、青空文庫などで関連語彙の登場回数などを調べ、その概念が普及した時期を確定し、その当時の新聞雑誌等を読み解いて現在の常識となった理由を明らかにするというもの。一時期こういうスタイルの研究は文学部の卒論にぴったりだと考えていたことがあったが、やっぱり学生にはできないんだよね。今ある常識を疑ってみるというのはやはり訓練とセンスが必要なことだと最近は思うようになった。
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