中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査

2013年07月31日 | 情報
労働政策研究・研修機構(JILPT)では、企業における労働者の治療(私傷病も含む)と
職業生活の両立支援の実態を明らかにするためアンケート調査を実施し、
その結果を速報版としてとりまとめ、公表しました。以下に概要を転載します。
とても参考になる調査結果です。
http://www.jil.go.jp/institute/research/2013/112.htm

「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」
調査結果のポイント
過去3年間で半数の企業に休職者が発生。復職率は約5割
治療と仕事との両立の課題、「休職者の復帰後の仕事の与え方、配置」がトップ

<6 割の企業が異常所見のある社員をフォローアップ。そのうち、メンタルヘルスでは6 割
弱の企業が「事案に応じて主治医と連携」と回答>
健康診断等で異常所見が出ている社員に対するフォローアップ体制は、何らかのフォローアップをしている企業が60.8%であり、
「特段にフォローアップはしていない」は27.1%である(4 頁、図表6)。
何らかのフォローアップをしている企業での主治医との連携状況では、
「積極的に主治医と連携している」は、メンタルヘルスの場合7.7%、その他の身体疾患の場合5.2%となっている。
「事案に応じて主治医と連携することがある」は、メンタルヘルスの場合59.9%、その他の身体疾患の場合52.2%である(4 頁、図表7)。

<慣行を含めると9 割の企業に病気休職制度がある。そのうち8 割弱が就業規則等に規定>
通常の年次有給休暇以外で、連続して1ヵ月以上、従業員が私傷病時に利用できる休暇・休職・休業する制度(慣行を含む。
「病気休職制度」と略す。)があるのは、91.9%(6 頁、図表10)。
そのうち、就業規則等の規定状況は、「規定されている」が77.7%で、「規定されていない」は9.7%(6 頁、図表11)。
傷病手当金の受給勧奨を「している」とする企業は83.2%(8 頁、図表14)。
病気休職期間中の月例賃金(「傷病手当金」や「傷病手当付加金」等は除く。)の支給状況では、
「支給されない」が74.8%となっており、「支給している」は18.1%である。
正社員規模別にみると、規模が大きくなるほど「支給している」割合がおおむね高くなっている(9 頁、図表16)。

<病気休職制度がある企業のうち、「非正社員には適用されない」が48.5%>
病気休職制度の非正社員への適用状況は、「非正社員には適用されない」が48.5%とも
っとも高く、「すべての非正社員に適用される」が31.1%、「一部に適用されている者がいる」が14.5%となっている(11 頁、図表20)。
病気休職制度が非正社員に「一部に適用されている者がいる」とする企業での適用基準は、
「就業形態」が59.9%ともっとも多い(11 頁、図表21)。

<過去3 年間で半数の企業に休職者。非正社員の休職者がいる企業は1 割程度>
過去3 年間の病気休職制度の休職者人数(新規利用人数)の平均値は2.88 人である。
休職者1 人以上の割合(すなわち休職者がいる企業割合)は52.0%となっている。他方、非正社員の休職者人数の平均値は0.38 人である。
休職者1 人以上の割合(非正社員の休職者がいる企業割合)は10.8%となっている(16 頁、図表31)。

<過去3 年間の復職率の平均値は51.9%で、2 人に1 人は復職。一方、退職率が高いのは「がん」「メンタルヘルス」「脳血管疾患」>
過去3 年間における病気休職制度利用者の復職率の平均値が51.9%となっている(19頁、図表36)。
一方、過去3 年間の病気休職制度利用者の退職率の平均値は37.8%である。
疾病別に退職率の平均値をみると、「がん」(42.7%)がもっとも高く、
次いで、「メンタルヘルス」(42.3%)、「脳血管疾患」(41.6%)などとなっている(19 頁、図表37)。
メンタルヘルスの退職率を、再発の状況別にみると、再発の割合が高くなるほど高くなっている(20頁、図表38)。

<「休職をせずに退職」、正社員に比べ非正社員のほうが高い>
継続就業のパターンでは、正社員の場合、「退職・計」(「休職期間中(もしくは復職直後)に退職している」
「休職を経て復職後、しばらく勤務した後に退職している」「休職をせずに退職している」の合計)の割合は、
「メンタルヘルス」が27.0%でもっとも高い。
「休職をせずに退職している」割合は「難病」がもっとも高く、次いで「脳血管疾患」「B 型肝炎もしくはC 型肝炎」などとなっている。
正社員と非正社員を比較すると、「休職をせずに退職している」割合は、
いずれの疾病でも正社員に比べ非正社員のほうが高い(21 頁、図表40)。

<今後の疾病対策の重要性、「メンタルヘルス」「糖尿病・高血圧等の生活習慣病」が上位>
今後3 年間程度でみた疾病への対策を経営・労務管理上の重要課題と考えるかについては、
「重要」(「最重要課題」「どちらかといえば重要課題」の合計)とする割合が「メンタルヘルス」で72.2%ともっとも高くなっており、
次いで「糖尿病・高血圧等の生活習慣病」「がん」「心疾患」などとなっている(23 頁、図表43)。

<治療と仕事との両立の課題、「休職者の復帰後の仕事の与え方、配置」がトップ>
メンタルヘルスや私傷病の治療と仕事を両立させるための課題でもっとも多かったのは、
「休職者の復帰後の仕事の与え方、配置」で55.6%となっており、
次いで、「代替要員の確保が困難」「再発防止」「休業期間中の給与の保障が困難」などとなっている(23 頁、図表44)。
コメント
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