中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

定期健康診断の受診率は何パーセントならば

2013年07月02日 | 情報
定期健康診断の受診率は、何%ならばよいのか? 答えは、100%です。

まず、対象者の確認です。労働安全衛生法では、健康診断は、「常時使用する労働者」に対して実施しなければならないとされています。
この「常時使用する労働者」とは、次のいずれの要件も満たす者とされています(労働安全衛生規則第44条)。
 イ 期間の定めのない契約により使用されるものであること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、
更新により1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。
(特定業務従事者健診の場合、1年以上を6か月以上と読み替。)
 ロ その者の1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の
1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。2分の1以上である者に対しても実施することが望ましいとされている。

次に、「労働者は、事業主の行う健康診断を受けなければならない。」(労働安全衛生法第66条第5項)とされていますので、
健康診断について労働者の受診義務を定めています。ただし、労働者の受診義務について罰則はありません。
しかし事業者は、労働者に健康診断を受けさせる義務を果たしていないとみなされると、
50万円以下の罰金(安衛法第120条)に処されます。
判例では、事業者は労働者に対して労安衛法上の健康診断の受診を職務上の命令として命じることができ、
受診拒否に対しては懲戒処分を行うことが認められています(平成13.4.26最高裁「愛知県教委事件」)。

実務上はどうなるのでしょう。常時50人以上の労働者を使用している事業者は、
労働基準監督署に健康診断の結果を報告する義務がありますが、報告書と、実際に受診すべき人数が合わない場合、
労基署から勧告や指導が入る可能性もあります。
ですから、定期健康診断の受診率は、100%でなければなりません。

また、定期健康診断を受診しなさい、と言っただけでは「安全配慮義務」を果たしたことにはなりません。
「再三言っているのですが」これでも駄目です。
一方で、所定時間内での定期健康診断として、会社が賃金を負担するなど、従業員が受診しやすい環境を整えることも必要です。
就業規則に「社員は健康の維持に努め、会社の指定する医師の診断を受けなければならない」と明記します。
就業規則に定めがあれば、それを根拠として社員に働きかけることが可能になります。
さらに、受診を拒否する理由も、当該従業員に確認することも必要です。
重大な疾患を隠して就業している可能性もあるからです。
担当部門のみなさんは、大変なご苦労をされていると推測しますが、定期健康診断の受診率100%を目指しましょう。

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