北海道美術ネット別館

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■蓬春モダニズムとその展開―創造と変革― 東京2017-2(5)

2017年04月19日 09時48分38秒 | 道外で見た展覧会
承前

 さて、神奈川県立近代美術館・葉山まで来たからには、道民としては、立ち寄らないで帰るわけにはいかない施設がすぐ近くにある。

 渡島管内福山町(現松前町)出身で、戦前から戦後にかけて日展などで活躍し「新日本画」の担い手といわれた日本画家、山口蓬春ほうしゅん(1893~1971年)のアトリエに設置された記念館である。




 近代美術館の前を走っている県道を渡ると
「山口蓬春記念館」
の看板がある。
 その矢印に従い、2人が並んで歩くのがやっとという細い小道(札幌あたりではまずありえない細さ!)を上っていくと、蓬春の東京美術学校(現東京藝大)以来の親友の建築家、吉田五十八が設計した彼のアトリエが見えてくる。これが、歿後に山口蓬春記念館となっている建物だ。

 山口蓬春はいまは、昔にくらべるとやや知名度が落ちている感もあるが、1977年に道立近代美術館が開館した際の所蔵品目録では、表紙に作品が掲載されるなど、北海道ゆかりの画家として代表的な存在であった。

 現在は「蓬春モダニズムとその展開―創造と変革―」と題した春季企画展を開催中。
 同館所蔵の蓬春の絵はもちろん、彼がコレクションしていたピカソやブラックの版画などもあわせて展示している。目玉は、東京国立近代美術館所蔵の「榻上の花」(展示は4月30日まで)だろう。

 ここでほめるのも気が引けるが、やはり蓬春のコレクションである尾形光琳「飛鴨図」が展示されており、これがすばらしい作なのだ。
 漫画のような補助線もなく、筆勢や筆触に頼ることもなく、鳥が生き生きと羽ばたいて飛んでいる動感を表現する力量は、あらためてすごいと言いたくなる。


 ところで、山口蓬春の画業を語るとき、よく「新日本画」という語が用いられていた。
 現代から見ると、どのあたりが「新」なのか、正直なところよくわからない。それ以前の日本画とさして変わらないようにも感じられる。横山操や加山又造などの形容として「新日本画」と言われるなら、まだしも理解できるのだが…。
 しかし「榻上の花」や、今回下図が展示されている「山湖」などを見ていると、「新日本画」「モダニズム」などと言われたのも、だんだんわかってくるのだ。

 蓬春の絵は、ひと言でいえば、明るい。
 陰影や湿っぽさにとぼしい、いわばライト感覚なのである。
 旧来の日本画にはあった輪郭線は引かれず、くまどりによって影を表現している。

 このライトさは、一種の折衷性かもしれないが、昭和の日本人に、感覚的に合っていたのではないかと思う。


 ところで、やはり戦後の代表作「望郷」の下図も展示されていたが、これって、ホッキョクグマの背後にペンギンが登場していることから、動物園の絵だということがわかる。
 「望郷」という題が良い。この題をみると、画家がたんにかわいらしい動物の絵を描こうとしていたわけではないことが、つたわってくる。 


2017年3月25日(土)~6月4日(日)午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)、月曜休み(5月1日は開館)
山口蓬春記念館(神奈川県三浦郡葉山町一色2320)

・一般600円、高校生以下無料

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