福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

金光明最勝王經卷第六四天王護國品第十二

2019-01-27 | 諸経
四天王護國品第十二

爾時世尊、四天王、金光明經を恭敬供養し及び能く諸持經者を擁護したまうを聞き給い、讃じて言く、
「善哉善哉。汝等四王、已に過去無量百千萬億の佛の所において、恭敬供養尊重讃歎し諸善根を植え、正法を修行し、常に正法を説き、法を以て世を化す。汝等は長夜に於いて諸衆生において常に利益を思い大慈心を起こし安樂を與えんことを願う。是の因縁をもって能く汝等をして現に勝報を受けしむ。若し人王ありて、此金光明最勝經典を恭敬供養せば、汝等應當に勤めて守護を加え安隱を得せしむべし。
汝諸四王及び餘の眷屬・無量無數百千藥叉、是の經を護る者は、即ち是れ
過去未來現在の諸佛の正法を護持するなり。汝等四王及餘の天衆并びに諸藥叉、阿蘇羅と共に鬪戰するとき常に勝利を得ん。汝等若能く是の經を護持せば經力によるがゆえに、能く衆苦怨賊飢饉及諸疾疫を除かん。是の故に汝等四衆もし此經王を受持讀誦する者を見ては亦應に勤心に共に守護を加えて爲に衰惱を除き安樂を施與すべし。」

爾時、四天王、即ち座より起ち偏袒右肩し、右膝を著地し、合掌恭敬して佛にもうして言さく、
「世尊。此金光明最勝經王を、未來世において若し國土ありて城邑聚落山林曠野隨所至處に流布する時、若し彼の國王、此經典において至心に聽受稱歎供養并びに復た是の經を受持する四部の衆に供養して深心に擁護し衰惱を離れしめんに、是の因縁をもって、我れ彼の王及び諸人衆を護り、皆な安隱にして遠離憂苦を遠離し、壽命を増益し、威徳具足せしめん。世尊。若し彼の國王・四衆が經を受持し恭敬守護すること猶父母のごとく、一切の須むるところ悉く皆な供給せんに、我等四王常に爲に守護し、諸有情をして尊敬せざるなからしめん。是故に我等并に無量藥叉諸神と與に、此經王の流布する處に従って、潜身擁護し留難なからしめん。亦た當に是の經を聴かん諸國王等を護念して、其の衰患を除き悉く安隱ならしめ他方の怨賊皆な退散せしめん。若し人王ありて是經を聴かん時、隣國の怨敵、是の如きの念を興さん、『當に四兵を具足して彼國土を壞るべし』と。世尊よ、是の經王の威神力の故に、是時隣敵更に異怨あり來りて其境界を侵擾し諸災變多く疫病流行せん。時に王見已って即ち四兵を厳にし彼國に發向し討罰をなさんと欲す。我等爾時、眷屬無量無邊藥叉諸神と各自隱形し爲に護助をなし彼の怨敵をして自然に降伏して尚ほ敢て其國界に來至せしめざらん。豈復た兵戈もて相い伐つことを得んや。」

爾時、佛、四天王に告げたまはく、
「善哉善哉。汝等四王。乃ち能く如是經典を擁護す。我れ過去百千倶胝那庾多劫において諸苦行を修し阿耨多羅三藐三菩提を得、一切智を證し、今是法を説く。若し人王有て是の經を受持し恭敬し供養する者は、爲に衰患を消して安隱ならしめん。亦復た城邑聚落を擁護し、乃至怨賊を悉く退散せしめ、亦た一切贍部洲内の所有の諸王をして永く衰惱鬪諍之事なからしめん。四王よ當に知るべし。此贍部洲の八萬四千城邑聚落、八萬四千諸人王等は各其國において諸快樂を受け、皆自在を得べし。所有の財寶は豐足受用し相侵奪せず。彼の宿因に従いて其報を受け、惡念を起こして他國を貧求せず、咸く少欲利樂の心を生じ、鬪戰繋縛等の苦あることなからん。其土の人民は自然に樂を受け、上下和穆すること猶し水乳のごとし。情相愛重し歡喜遊戲し慈悲謙讓して善根を増長せん。是因縁をもって此贍部洲は安隱豐樂、人民熾盛、大地沃壤、寒暑調和、時不乖序、日月星宿常度無虧、風雨隨時、離諸災横。資産財寶皆悉豐盈、心無慳鄙、常行慧施、具十善業ならん。若し人命終せば多くは天上に生じ天衆を増益せん。大王よ、若し未來世に諸人王有て是經を聴受・恭敬供養并びに受持せば、四部の衆は尊重稱讃せん。復た 汝等及び諸眷屬無量百千諸藥叉は衆を安樂饒益せんと欲す。是故に彼の王、常に當に是妙經王を聽受すべし。此を聞くことを得るに由り正法の水・甘露上味は汝等身心勢力を増益して、精進・勇猛・福徳・威光、悉く充滿せしめん。是の諸人王、若し能く至心に是經を聽受せば、則ち廣大希有の供養をもって我が釋迦牟尼應正等覺を供養すとなす。若し我を供養せば則ち是れ過去未來現在の百千倶胝那庾多佛を供養するなり。若し能く三世諸佛を供養せば、則ち無量不可思議功徳の聚を得ん。是の因縁をもって、汝等まさに彼の王の后妃眷屬を擁護して衰惱なからしむべし。及び宮宅の神は常に安樂を受け、功徳難思なり。是の諸國土の所有の人民亦た種種五欲の樂を受け、一切の惡事は皆な消殄せん。」

爾時、四天王佛にもうして言さく、
「世尊よ、未來世みおいて
、若し人王ありて如是の金光明經をねがい聴き、自身・后妃・王子乃至内宮諸婇女等および城邑宮殿を擁護せんと欲せば、皆な第一不可思議最上歡喜寂靜安樂を得て現世中において、王位尊高、自在昌盛、常に増長を得せしめん。復た無量無邊難思の福聚を攝受せんと欲するならば、自國土において怨敵及び諸憂惱災厄事なからしめん。世尊よ、是のごとく人王は放逸にして心をして散亂せしむべからず。當に恭敬を生じ至誠殷重に是の如き最勝經王を聽受すべし。
之を聴かんと欲する時、先ず當に最上宮室王所愛重顯敞の處を莊嚴して香水灑地し衆名花を散じ、師子殊勝法座を安置し、諸珍寶を以て挍飾となし、種種寶蓋幢幡を張施し、無價の香を焼き諸音樂奏すべし。其王は爾時には當に淨澡浴し香を以て塗身し、新淨衣及諸瓔珞を著し、小卑座に座し、高擧を生ぜず、自在位を捨て、諸憍慢を離れ、端心正念に是の經王を聴き、法師の所において大師の想を起こすべし。復た宮内の后妃王子婇女眷屬は慈愍心を生じ、喜悦して相視、和顏軟語して自身の心において大喜充遍して是の如き念をなすべし、『我れ今、難思殊勝廣大利益を獲得したり』と。此の經王において盛んに供養を興し既に敷設し已りて法師の至るを見て、當に虔敬渇仰之心を興すべし」

爾時、佛四天王に告げたまはく、
「是のごとくして法師を迎えざるべからず、時に
彼の人王、應に純淨鮮潔の衣を著し、種種の瓔珞を以て嚴飾となし、自ら白蓋及び香花を持し、軍儀盛を備え整え、音樂を陳り、歩して城闕を出でて彼の法師を迎え、想を運して虔恭に吉祥の事をなすべし。四王よ、何の因縁を以て彼の人王をして親しく如是の恭敬供養をなさしむるや。彼の人王の擧足下足、歩歩即ち是れ百千萬億那庾多諸佛世尊を恭敬供養承事尊重するによる。復た如是の劫數の生死の苦を超越するを得、復た來世の如是の劫數において當に輪王殊勝尊位を受くべし。其の歩歩に随いて亦た現世において福徳増長し、自在に王となり、感應思い難く、衆に欽重せられ、當に無量百千億劫において人天に七寶宮殿を受用し、所在の生處に常に王となることを得、壽命増益、言詞辯了、人天信受、無所畏懼にして大名稱あり、咸く共に瞻仰し、天上・人中に勝妙樂を受け大力勢を獲、大威徳あり、身相奇妙に端嚴無比にして天人師に値い、善知識に遇い、無量福聚を成就具足すべし。四王よ、當に知るべし。彼の諸の人王、如是等の種種無量の功徳利益を見るがゆえに、應に自ら往きて法師を奉迎すること若しは一踰繕那、乃至百千踰繕那なるべし。説法師においては應に佛の想いを生ずべし。還って城に至りおわり、如是の念をなすべし。今日釋迦牟尼如來應正等覺、我宮中に入り、我供養を受け我為に説法したまうなり。我れ法を聞き已らば即ち阿耨多羅三藐三菩提において復た退轉せず、即ち是れ百千萬億那庾多諸佛世尊に値遇するなり。我今日において即ち是の種種廣大殊勝上妙の樂具をもって過去未來現在諸佛を供養す。我れ今日において即ち是れ永く琰摩王界地獄餓鬼傍生の苦を拔き、便ち爲に已に、無量百千萬億轉輪聖王釋梵天主の善根種子を種え、當に無量百千萬億衆生をして生死の苦を出で涅槃の樂を得、無量無邊不可思議福徳の聚を積集せしめん。後宮眷屬及諸人民皆安隱を蒙むり、國土清泰、諸災厄毒害惡人なく、他方怨敵不來侵擾、遠離憂患ならん。
四王よ當に知るべし、時に彼の人王、應に如是に正法を尊重すべし。亦た是れ妙經典を受持する苾芻・苾芻尼・鄔波索迦・鄔波斯迦において供養恭敬尊重讃歎し、所獲の善根、先ず勝福をもって汝等及諸眷屬に施與すべし。彼の人王、大福徳善業の因縁あり、現世中において大自在を得、増益威光にして吉祥妙相皆な悉く莊嚴し、一切の怨敵、能く正法をもってこれを摧伏せん。」

爾時。四天王白佛言、
「世尊よ、若し人王ありて能く如是をなし、正法を恭敬して此の經王を聴き、并びに四衆持經の人において恭敬供養尊重讃歎せんとき彼の人王、我等に歡喜を生ぜしめんがためのゆえに當に一邊にありて法座に近く、香水灑地し、散衆名花し、處所を安置し、四王の座を設けるべし。我と彼の王と共に正法を聽かん。其王の所有の自利の善根、亦た福分を以て施して我等に及ばん。世尊よ、時に彼の人王、説法者を請いて昇座の時、便ち我等のために衆の名香を焼きて是の經を供養せん。世尊よ、時の香煙、一念の頃において虚空に上昇し、即ち我等諸天宮殿に至り、虚空中において變成して香蓋とならん。我等天衆は彼の妙香を聞くに、香に金光ありて、我等所居の宮殿乃至梵宮及び帝釋・大辯才天・大吉祥天・堅牢地神・正了知大將・二十八
部諸藥叉神・大自在天・金剛密主・寶賢大將・訶利底母・五百眷屬・無熱惱池龍王・大
海龍王の所居の處を照曜せん。世尊よ、如是等の衆、自宮殿において彼の香煙の一刹那の頃に變じて香蓋となるを見て香の芬馥たるを聞き、色の光明遍ねく一切諸天神宮に至を覩ん。」
佛、四天王に告げたまはく、「是、香の光明、但だ此の宮殿にいたり、變じて香蓋となりて大光明を放つのみならず、彼の人王、手に香鑪をとり、衆の名香を焼き、經を供養するによりて、時に其の香煙の氣は一念の頃に遍く三千大千世界の百億日月・百億妙高山王・百億四洲に至り、此の三千大千世界の一切の天・龍・藥叉・健闥婆・阿蘇羅・掲路茶・緊那羅・莫呼洛伽の宮殿の所に至り、虚空中において、充滿して住し、種種の香煙は變じて雲蓋となる。其蓋は金色にして天宮を普照せん。如是の三千大千世界の所有の種種の香雲・香蓋は皆是れ金光明最勝王經の威神の力なり。是の諸の人王、手に香鑪を持ちて經を供養する時、種種の香氣は但だ此の三千大千世界に遍きのみにあらず、一念の頃において亦た十方無量無邊恒河沙等の百千萬億諸佛國土に遍く、諸佛の上の虚空の中において變じて香蓋となり、金色にして普照せんこと亦復如是。時に彼の諸佛は此の妙香を聞き斯の雲蓋及び金色を覩て、十方界において恒河沙等の諸佛世尊を現じおわり、悉く共に觀察し、異口同音に法師を讃じて曰わん、『善哉善哉。汝大丈夫。能く廣く如是の甚深微妙經典を流布す。則ち無量無邊不可思議の福徳の聚を成就するとなす。』と。
若し 如是の經を聽聞することあらば、獲る所の功徳は其量甚多し。何に況んや書寫受持讀誦し、他のために敷演し、如説修行せんをや。
何をもっての故に、善男子。若し衆生ありて此の金光明最勝王經を聞く者は、即ち阿耨多羅三藐三菩提において復た退轉せず。
爾時、十方に百千倶胝那庾多の無量無數恒河沙等の諸佛刹土あり。彼の諸刹土の一切如來は異口同音に法座の上において彼の法師を讃じて言わん、「善哉善哉、善男子よ、汝は來世において精勤力をもって當に無量百千の苦行を修し、資糧を具足し、諸聖衆を超え、三界を出過して最勝尊となるべし。當に菩提樹王の下に座し、殊勝に莊嚴し、能く三千大千世界の有縁の衆生を救い、善く能く畏るべき形儀の諸魔軍衆を摧伏し、諸法の最勝・清淨・甚深無上の正等菩提を覺了すべし。善男子よ、汝、當に金剛座に坐して、無上諸佛の讃ずるところの十二妙行・甚深法輪を轉ずべし。能く無上最大の法鼓を撃ち、能く無上極妙の法螺を吹き、能く無上殊勝の法幢を建て、能く無上極明の法炬を然やし、能く無上甘露の法雨を降らし、能く無量煩惱の怨結を斷じ、能く無量百千萬億那庾多の有情をして涯しなき畏るべき大海をわたらしめ、生死無際の輪迴を解脱し、無量百千萬億那庾多の佛に値遇せしめん。」と。

爾時、四天王復た佛にもうして言さく、
「世尊よ、是の金光明最勝王經は能く未來現在において如是の無量功徳を成就す。是故に人王、若し是の微妙經典を聞くことを得れば、即ち是れ已に百千萬億無量佛の所において諸善根を種えるなり。彼の人王において、
我れ當に護念すべし。復た無量福徳利を見るがゆえに、我等四王および餘の眷屬無量百千萬億諸神は自宮殿において、是の種種香煙雲蓋神變を見るとき、我れ當に隱蔽して其の身を現わさず、法を聽くための故に、當に是の王、清淨嚴飾所止の宮殿講法の處に至るべし。如是、乃至梵宮・帝釋・大辯才天・大吉祥天・堅牢地神・正了知神大將・二
十八部諸藥叉神・大自在天・金剛密主・寶賢大將・訶利底母と五百眷屬・無熱惱池龍王・大海龍王・無量百千萬億那庾多諸天藥叉、是の如き等の衆、聽法の為の故に、皆な身を現ぜず、彼の人王の殊勝宮殿莊嚴高座説法之所に至らん。世尊よ我等四王及び餘の眷屬藥叉諸神、皆な當に一心に彼の人王とともに善知識と為らん。是の無上大法施主、甘露味を以て我を充足するによりて是の故に我等は是の王を擁護し、其の衰患を除き、安隱を得せしめ、及び其の宮殿・城邑・國土の諸惡災變は悉く消滅せしめん。」

爾時四天王倶に共に合掌して佛に白して言さく、
「世尊よ。若し人王ありて其の國土において此の經ありといえども未だ流布せず、心に捨離を生じ、聽聞することを楽はず、亦た供養・尊重・讃歎せず、四部の衆、持經の人を見て亦復た能く尊重し供養せず、遂に我等及び餘の眷屬無量諸天をして此の甚深妙法を聞くことを得ず、甘露味に背き、正法の流を失い、威光及び勢力あることなく、惡趣を増長し人天を損減し、生死の河に堕ち、涅槃の路に乖かしむ。世尊よ、我等四王并び諸眷屬及び藥叉等は、斯の如き事を見て、其の國土を捨てて擁護の心なし。
但に我等が是の王を捨棄するのみならず、亦た無量の國土を守護する諸大善神あるも、悉く皆な捨去らん。既に捨離已らば、其國は當に種種の災禍ありて、國位をも喪失すべし。一切の人衆に皆な善心なく、惟だ繋縛・殺害ありて瞋り諍い互に相い讒諂し、抂無辜におよび、疾疫流行せん。彗星數ば出で、兩日並現、博蝕恒なく、黒白の二虹は不祥の相を示し、星は流れ地は動き、井内に聲を発し暴雨惡風は時節によらず、常に飢饉に遭い、苗實は成らず、多く他方の怨賊の侵掠あり、國内人民は諸苦惱を受け、土地に樂しむべきの處あることなし。世尊よ、我等四王及び無量百千天神并びに護國土諸舊善神は遠く離れ去る時、是の如き等の無量百千災怪惡事を生ぜん。世尊よ、若し人王ありて、國土を護り常に快樂を受けんと欲し、衆生をして咸く安隱を蒙らしめんと欲し、一切外敵を摧伏するを得て自國境において永く昌盛を得んと欲し、正教をして世間に流布せしめ、苦惱惡法皆除滅せしめんと欲せば、世尊よ、是の諸國主は必ず當さに是妙經王を聽受すべし。亦た應に経を讀誦受持するものを恭敬供養すべし。我等
及び餘の無量の天衆、是の聽法の善根威力をもって無上の甘露法味を服するを得て、我等の所有の眷屬を増益し、并に餘の天神皆勝利を得ん。何以故。是の人王の是經典を至心に聽受するが故なり。世尊よ、大梵天のごときは諸有情において常に世・出世論を宣説す。帝釋は復た種種の諸論を説き、五通の神仙もまた諸論を説く。世尊、梵天・帝釋・五通仙人、百千倶胝那庾多の無量の諸論ありといえども、然も、佛・世尊は慈悲哀愍し、人天衆の為に金光明微妙經典を説き給う。前の所説に比するに、彼に勝ること百千倶胝那庾多倍にして喩となすべからず。何以故。此によって諸贍部洲の所有の王等をして正法によりて世を化せしめ、能く衆生に安樂の事を与えしめ、自身及び諸眷屬を護りて苦惱なからしむるがためなり。又た他方怨賊の侵害なく、所有る諸惡は悉く皆遠く去り、亦た國土の災厄をして屏除せしめ、化すに正法を以てして、諍訟あることなし。是の故に人王、各國土において、當に法炬をもやし明照無邊にして天衆并び諸眷屬を増益すべし。
世尊。我等四王無量天神藥叉の衆、贍部洲内の所有ゆる天神、是の因縁を以て得服無上甘露の法味を服するを得、大威徳勢力光明を獲て具足せざるべし。
一切の衆生皆安隱を得、復た來世無量百千不可思議那庾多劫において常に快樂を受けん。復た無量諸佛に値遇するを得て諸善根を種え、然る後に阿耨多羅三藐三菩提を證得せん。是の如きの無量無邊の勝利は皆な是れ如來應正等覺、大慈悲を以て諸梵衆に過ぎ、大智慧を以て帝釋に逾え、諸苦行を修すること五通仙に勝り、百千萬億那庾多倍にして稱計不可なり。諸衆生の為に如是の微妙經典を演説し、贍部洲一切の國主及び諸人衆をして世間の所有の法式、治國し人を化し、勸導の事を明了ならしむ。この經王流通力の力によるがゆえに、普く安樂を得る。此等の福利、皆是れ釋迦大師が此の經典において廣く流通をなす慈悲力の故なり。世尊よ、是の因縁を以て、諸の人王等、皆な應に此妙經王を受持供養恭敬尊重讃歎すべし。何以故。如是等の不可思議殊勝功徳。ありて一切を利益すればなり。是の故に名つ゛けて最勝經王という。」
爾時。世尊復た四天王に告げたまわく、「汝等四王及び餘の眷屬、無量百千倶胝那庾多諸天大衆は彼の人王を見て若し能く至心に是の經典を聽き、供養恭敬尊重讃歎せば、
應當に擁護して其の衰患を除くべし。能く汝等をして亦た安樂を受けしめん。
若し四部衆、能く廣く是經王を流布せば、人天中において廣く佛事をなし、普く能く無量衆生を利益せん。如是の人を、汝等四王よ、常に當に擁護すべし。如是の四衆、他縁をして共い相に侵擾せしむるなかれ。彼をして身心寂靜安樂ならしめ、此の經王を廣宣流布して斷絶せざらしめ、有情を利益して盡未來際ならしめよ。」

爾時、多聞天王は座より起ちて佛にもうして言さく、
「世尊、我に如意寶珠陀羅尼法あり、若し衆生ありて受持を樂う者は功徳無量ならん。我れ常に擁護して彼の衆生をして離苦得樂せしめ能く福智二種の資糧を成ぜしめん。受持せんと欲する者は先ず當に此の護身の呪を誦すべし。即ち呪を説て曰く、
「なもべいしらまぬや。まかあらじゃや。たにゃた 。らららら。くぬくぬ 。くぬくぬ 。るぬるぬ 。さばさば。きゃらきゃら。まかびきゃらま 。まかびきゃらま。まかあらじゃ 。あらきしゃとまん(自己の称名)さばさったなんそわか」

「世尊よ、此呪を誦する者は當に白線を以てこれを呪すること七遍すべし。一遍
に一結してこれを肘後に繋ぐべし。其事必ず成らん。應に諸香をとるべし。所謂
安息・栴檀・龍腦・蘇合・多掲羅(たがら)・薫陸(くんろく)なり。皆な須らく等分
して一處に和合すべし。手に香爐を執り燒香供養し、清淨に澡浴し鮮潔衣を著し、一靜室において神呪を誦して我が薜室囉末拏天王(べしらまぬてんおう)を請ずべし。

即ち呪を説いて曰く
「なもべいしらまぬや。なもだんなだや 。だんにせつらや。あかやしゃ
。あはりみた。だんにせつら。はらま。かるにか 。さつばたしたしんた 。まま (自已名)だな。まどはりえいしゃさいあんぎゃしゃ。  そわか。」
此呪を誦すること一七遍を満じ已りて次に本呪を誦せよ。誦を呪せんと欲する時は、先當に三寶及び薜室羅末拏大王べいしらまぬだいおうを稱名敬禮すべし.


能く財物を施し諸の衆生の所求の願をして悉く能く成就せしめて
其の安樂を與えしめん。如是に禮し已って、次に薜室羅末拏天王如意末尼寶心神呪(べいしらまぬおうにょいまぬほうしんしんじゅ)を誦せよ。能く衆生の意に随いて安樂を施さん。
爾時多聞天王、即ち佛前において如意末尼寶心呪を説いて曰く、
「なもあらたんのうとらやや。なもべいしらまぬや。まからじゃ。たにゃた。しみしみそもせんだせんだ。しゃらしゃらさらさらきゃらきゃらきりきりくろくろもろもろしゅろしゅろさだいや、ちんとん(我が名前)にてん。あんた、ただと、そわか。なもべいしらまぬやそわか。だんあだやそわか。まんどらたはりほりきゃや、そわか。」

呪を受持するとき時、先ず千遍誦せよ。然後ち、淨室中において瞿摩(くま、牛糞)を塗地して小壇場をつくり時にしたがいて飮食し、一心供養し常に妙香を然して烟を不絶ならしめ、前の心呪を誦し晝夜心に繋け、惟だ自耳にのみ聞て他をして解せしむなかれ。

時に薜室囉末拏王子べいしらまぬおうじ有。名ずけて禪膩師ぜんにしという。童子形を現じ來りて其所に至り、問いて言はく「何故に我父を喚ぶことを須いるや」と。即ち報えて言うべし、「我れ供養三寶の事のために財物を須う。願はくは當に施與すべし。時に禪膩師(ぜんにし)是の語を聞き已り、即ち父所に還えり、其父に白して言さく、「今善人ありて、至誠心を發し、供養三寶するも財物少乏なるをもて斯の請召をなす」と。其父報えて曰く、「汝じ、速やかに去りて日日に彼に一百の迦利沙波拏(かりしゃばね、インドの銅貨)をあたうべし」と。
其の持呪の者は是の相を見已りて事の成るを知り、當に須らく淨室に獨處し、燒香して臥し、床邊に一香篋を置くべし。天曉に至るごとに其篋中を観て所求の物を得よ。物を得る時毎に當に日に即ち須らく三寶に香花飮食を供養し、兼ねて貧乏に施し、皆な罄盡(けいじん)せしむべし。停留することをえざれ。諸の有情において慈悲の念を起こし、瞋誑諂害の心を興すことなかれ。若し瞋を興せば即ち神驗を失せん。常に心を護り瞋恚せしむることなかれ。

又た此呪を持する者は、毎日中において、我が多聞天王及び男女の眷屬を憶い、稱揚讃
歎し、恒に十善をもって共に相い資助し、彼の天等をして福力増明し、衆善普く臻(いた)り、菩提處を證せしめん。彼の諸天衆は是の事を見おわって皆な大歡喜し、共に來りて持呪の人を擁衞せん。又持呪の者は、壽命長遠にして無量歳を經、永く三塗を離れて常に無災厄ならん。亦た如意寶珠及び伏藏を得せしめ、神通自在にして所願皆な成ぜん。若し官榮を求めば意に称はざるなし。亦た一切禽獸の語を解せん
世尊よ、若し持呪の時、我自身の現ずるを見るを得んと欲する者は、月の八日或は十五日、白疊の上に佛形像を畫き、當に木膠を用いて雜彩莊飾すべし。其の像を画かん人は爲に八戒を受けよ。佛の左邊において、吉祥天女像を作り、佛の右邊において我が多聞天像を作り、并びに男女眷屬之類を畫き、座處に安置し、咸く如法ならしめ、花彩を布列し、衆名香を燒き、燈を然して明を續けること晝夜無歇なれ。上妙の飮食と種種の珍奇と、殷重心を發して、隨時供養せよ。神呪を受持して、輕心なるを得ざれ。
我を請召せんときは時に應じて此呪を誦せよ。

「なもしりけんなや。ぼだや。なもべいしらまぬや。やくしゃじゃらじゃ。もからじゃ・あじらじゃや。なもしりやえい。もかでいべいえい。たにゃた。たらたら。とろとろ。ばらばら。そすとそすと。かんなかんな。まにかなか。ばざらべいるりや。こくちかりょうきりた。せつりらえいぶ。さつばさったひたかま。べいしらまぬ。しりやでいび。ばらばや。えいしえいし。まびらんば。ぐりぬぐりぬ。まらさまらさ。たばひまま。あまくかなましゃ。(自己名)。だりしゃなかましゃ。だりしゃなん。まままな。はらからだいや。そわか。」

世尊よ。我れ若し此の誦呪の人を見、復た如是に盛んに供養を興すを見ば、即ち慈愛歡喜の心を生じ我即ち變身して小兒形となり、或は老人・苾芻の像となり、手に如意末尼寶珠を持ち并びに金嚢を持ちて道場内に入り、身に恭敬を現じ、口に佛名を称え、持呪者に語りて曰く、『汝の所求は皆な願のごとくならしめん』と。
或は林藪に隠れ、或は寶珠を造り、或は衆人の愛寵を欲し、或は金銀等の物を求め、諸呪を持せんと欲するに、皆な驗あらしめん。或は神通・壽命長遠、及び勝妙樂を欲せんに心に称わざるなからしめん。我今且く如是の事を説くも、若し更に餘を求めば皆な所願に随いて悉く成就し、寶藏無盡功徳無窮ならしめん。假使え日月は地に墜墮し、或は大地時ありて移轉すべきも、我が此の實語は終に虚然ならず。常に安隱を得て隨心快樂ならん。世尊よ、若し人ありて能く是の經王を受持讀誦する者は、此呪を誦する時、疲勞を假らず、法は速かに成就せん。世尊よ、我れ今、彼の貧窮困厄苦惱の衆生の為に、此神呪を説き、大利を獲て皆富樂自在無患ならしめんとす。乃至、盡形、我れ當に
是人を擁護隨逐して災厄をのぞかん。亦復た此の持金光明最勝王經を持して流通する者及び持呪の人は、百歩の内において光明照燭し、我が所有る千藥叉神亦た常に侍衞し、隨い、驅使せんと欲せば心に遂げざるなけん。我れ實言を説く、虚誑あることなし。
惟だ佛のみ證知したまう。」

時に多聞天王が此呪を説き已るや、佛言はく、
「善哉、天王よ。汝能く一切衆生貧窮苦網を破裂し、富樂を得しめ、是の神呪を説き、復た此經をして廣く世におこなわしむ。」

時に四天王倶に座より起ちて、偏袒一肩し、頂禮雙足し、右膝著地、合掌恭敬し妙伽他をもって佛の功徳を讃ず。
「佛面は猶ほ淨滿月のごとし、 亦た千日の光明を放つがごとし。
目は淨く脩廣なる青蓮のごとし。 齒は白く齊密にして猶ほ珂雪のごとし。
佛徳無邊にして大海のごとく、 無限の妙寶は其中に積む。
智慧の徳水は鎭まりて恒盈、 百千の勝定は咸く充滿す。
足下の輪相は皆な嚴飾し、 轂輞千輻悉く、齊平。 手足の鞔網(まんもう)遍く莊嚴、 猶鵝王の相を具足するがごとし。
佛身の光曜は金山に等しく 清淨殊特にして倫匹なし。
亦た妙高の功徳みつるがごとし。 故に我れ佛山王を稽首す。
相好は如空にして不可測なり、 千月の光明を放つに逾え、
皆な焔幻のごとく不思議なり、 故に我れ心無稽を首著したてまつる」

爾時、四天王佛を讃歎し已るや、世尊は伽他を以って之に答えていわく、
「此金光明最勝經は 無上十力の所説なり。
汝等四王常に擁護して 應に勇猛不退心を生ずべし。
此妙經寶は極めて甚深 なり、能く一切有情に樂を與う。
彼の有情安樂なる故 に、常に贍部洲に流通することを得る。
此大千世界中の 所有一切の有情の類、餓鬼・傍生及び地獄と、 如是の苦趣は悉く皆  な除き、
此の南洲に住むところの諸國王 及び餘の一切の有情類は、
經の威力によりて常に歡喜し、 皆な擁護を蒙りて安寧を得ん。
亦た此の中の諸有情をして 衆の病苦を除き賊盜無からしめん。
此の國土は經を弘めるによる故に 安隱・豐樂・無違惱ならしめん。
若し人、此經王を聽受して、 尊貴及び財利を求めんと欲せば、
國土豐樂にして無違諍、 隨心に所願悉く皆な從い、
能く他方の賊をして退散せしめ、 自國界は常に安隱ならん。
此の最勝經王力 によりて、諸苦惱を離れ無憂怖ならん。
寶樹王の宅内にあるがごとく、 能く一切諸樂具を生ず。
最勝經王も亦復た然り、 能く人王に勝功徳を與う。
譬えば澄潔清冷水の 能く飢渇諸熱惱を除くがごとし。
最勝經王も亦復た然り、 樂福者をして心滿足せしむ。
人室に妙寶篋あれば 隨所受用して悉く心に従うごとし。
最勝經王も亦復た然り、 福徳隨心して乏ける所なし。
汝等天主及び天衆よ、 應當に此經王を供養すべし、
若し能く教に依りて經を奉持せば、 智慧威神皆な具足せん。
現法十方一切佛は 咸く共に此經王を護念し、
讀誦及び受持するものあるを見たまいて、善哉、甚だ希有なりと稱歎せん。
若し人ありて、能く此經を聽き、 身心踊躍して歡喜を生ぜば、
常に百千藥叉衆ありて 住處の所に随いて斯の人を護らん。
此世界の諸天衆は 其數無量不思議なり。
悉く共に此經王を聽受して、 歡喜護持して無退轉ならん。
若し人、此經王を聽受せば、 威徳勇猛常に自在にして
一切人天衆を増益して 衰惱を離れ光明を益さん。」

爾時、四天王是の頌を聞き已りて、歡喜踊躍して佛にもうして言さく、
「世尊よ、我昔より來た、未だ曾って是のごとくの甚深微妙の法を聴くことを得ず」と。。心に悲喜を生じ、涕涙交流・擧身戰動して
不思議希有の事を証し、天の曼陀羅花・摩訶曼陀羅花をもって佛の上に散ず。
仏に是の殊勝の供養をなしおわり、佛に白してもうさく、「世尊よ、我等四王に各の五百藥叉眷屬あり。常に處處に是經及説法師を擁護し、智光明を以て助衞となすべし。若し此經の所有の句義において忘失の處あらば、我れ皆な彼をして憶念して忘れざらしめ、并びに陀羅尼殊勝法門をあたえて具足することをえしめん。復た此の最勝經王所在
の處をして諸衆生のために廣宣流布して速かに隱沒せざらしめん。」

爾時世尊、大衆中において、是の法を説きたまいし時、無量衆生は皆な大智聰叡辯才を得、無量福徳之聚を攝受し、諸憂惱を離れ、喜樂心を發し、善く衆論を明らかにし、出離道に登り、復た退轉せず、速に菩提を證せり。

金光明最勝王經卷第六



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