シルバーウイークはすでに過去。
シルバーウイークと言ったってどこへ行くあてもなし、でしたが、かねてから散策すべし、と自らに課していた下町界隈をガイドブック片手に女友だちと出かけました。
(注:ちょうど1週間ほど前から寝る前に「文人荷風抄」を読んでいて、気分は“下町”だったので)
まずは千駄木の森鴎外記念館、これもオープンしてから、行かなきゃ行かなきゃで行きそびれていた巡礼地。
鴎外の娘・森茉莉の文体論で、いちおう修士論文書いてますから、鴎外はわたしのアイドルのお父様ということになります。
あまりにもモダンな建物でびっくりしましたが、ゆったりと鑑賞できるので、まあ良しとします。
それから、休日客であふれかえる谷中銀座、夕焼けだんだん、という具合にガイドブックどおりに歩くわけですが、どこの食べ物屋さんも満員。とうとう食べそびれてしまい、女友だちがわずかに持参していたちびちゃいお味噌クッキーを2人でかじりながらの道中・・・。
突然、現れた上野桜木のKayaba Bakery で、焼きたてのバジル&ベーコンパンを入手し、自動販売機で調達した水を片手に、むさぼりながら南下。でもこれが大当たり。ものすごく美味しかったです。バゲットパンが。
これだけ買いに行ってもいいくらいです。
その後・・・上野の寛永寺で友だちは立派なご朱印帳を購入し、第壱頁にこれまた立派なご朱印をもらって喜んでいましたので、この勢いで山手線を越えて鶯谷駅の向こう側へ。エロス&タナトスの世界です。
喫茶店デンで、ソフトクリームが逆さに突き刺さったアイスコーヒーをお腹におさめて、さらに子規庵あたりをうろうろ。夕暮れ時になると・・・ああ、鶯谷の蚊が私を刺すんです。
不覚にもストッキング越しに二箇所ほど刺されました(関西風に言うと、蚊に嚙まれた、です)。
悔しい。 寛永寺では難を逃れたと思っていたのに、鶯谷で蚊にやられるとは・・。甘かった。
そうなんです、ちょっと、湿っぽいんですね、空気が。蚊が棲息していそうな雰囲気です。
そんなわけで妙齢をとうに過ぎてしまった女2人が上野の暗い夜道を駅に向かう姿は、なんともわびしいと世間は思うのでしょうが、当の本人たちは、また来ようね、きょうのはロケハン、などと達成感に充ち満ちて、上野駅の地下道前で別れました。
この夏の戦後70年ドキュメンタリーで、上野駅地下道の戦争孤児たちの悲しくもたくましいサバイバル人生を初めて知った関西女(注:現在80代、90代の元戦争孤児の証言に胸打たれました。病床のおじいさんなどは、あの頃を良い思い出として回想されていて、衝撃的でした)は、ああ、ここがそうか・・、谷中散策とはなんと呑気な私たちよ、と、あらためて平和な今を思いながら、家路に着きました。