英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

こんなことって…あるんだ

2008-11-30 23:06:36 | スポーツ
 唐突ですが、私は不動裕理のファンです。

 2000年から2005年まで6年連続日本女子ゴルフツアーの賞金女王。ここ2年、トップは譲ってはいて、今年も最終戦を前にして5位で、今年の賞金女王の可能性はない。とは言え、今期4勝を上げ、全英女子オープンでは3位にはいるなど。日本女子ゴルフ界を牽引する存在であることに変わりはない。今期最多勝利数にもかかわらず、賞金ランクが5位に留まっているのは、大会の参加数が少ないため。
 私が彼女のファンなのは、ゴルフに対する彼女の真摯な姿勢と、どんなプレーをしてもその表情を崩さないクールさ。クールと言うより、真面目さゆえのポーカーフェイスだ。


 今日がツアーの最終戦の最終日。この大詰めで、劇的な幕切れが待っていた。

「こんなことって…あるんだ」
そんな感想を持ったが、そういえば、将棋界では3度あったっけ。
 昨年の名人戦第六局 森内名人×郷田九段
 昨年のNHK杯戦  羽生二冠×中川七段
 今期の名人戦    森内名人×羽生二冠(称号、段位は当時のもの)


 さて、最終戦を前にして、賞金女王争いは
1位 李知姫   117,862,786
2位 横峯さくら 101,702,169
3位 古閑美保   95,854,137
4位 福嶋晃子  89,710,696
5位 不動裕理  79,607,367
 で、賞金女王争いは上位3人に絞られていた。
 李知姫が優勝すれば、もちろん賞金女王。横峯は優勝しても李知姫が3位以上なら、古閑は優勝しても李知姫が8位以上なら、李知姫を逆転できない。

 3日目を終えた時点での成績は
1位 宋・ボベ  -5
2位 上田桃子  -4
3位 全 美貞  -3
3位 福嶋晃子  -3
3位 不動裕理  -3
6位 古閑美保  -3
6位 三塚優子  -3
 李知姫は +1で11位、横峯は 0で8位タイだった。横峯は逆転女王は厳しい状態だが、古閑が優勝して李知姫が9位以下というケースで逆転という可能性は少しある。

 テレビ中継が始まる。その時点では、
1位 全 美貞  -6  12H終了
2位 不動裕理  -5  12H
3位 三塚優子  -4  13H
4位 古閑美保  -3  13H
 李知姫と横峯はー1で10位タイ。最終組の宋と上田は伸びず、優勝争いから後退している。横峯の賞金女王は絶望的だ。
 最終組の1組前でプレーする全と不動はこの日ここまでノーボギー、特に、全はロングパットをバンバン沈め、14Hを終えて5つのバーディを奪い、-8までスコアを伸ばしていた。不動は-6。古閑は15番を終えて-4と3位タイに浮上していたが、トップとは4打差で逆転優勝には厳しい状況。

 プレーは進み、全・不動組は15H。全が5mのパットを沈めパーをセーブ(-8)。対する不動は、3m半のパーパットをはずしー5に後退、3打差となる。この時点で、完璧なプレーをする全の優勝は揺るがないとほとんどのものが思っていたはずだ。
 李は最終ホールボギーとし8位タイから10位に後退してホールアウト(通算-1)。

 全・不動組の16H(パー3)。このホールも全は完璧なショットでバーディチャンス。不動はグリーンに乗らず、ややピンチ。17Hの古閑は、4m半のバーディパットを沈め、気持ちを鼓舞するようにガッツポーズ(-5)。
 不動は見事なアプローチショットで寄せて、パーをセーブ(-5)。全は3m強のバーディパットを決められなかったものの、-8(8アンダー)。残り2ホールでの、3打差は大きい。

 全・不動組の17H(パー4)。全のティーショットが大きく左に曲がり、林の中へ。さすがに優勝を意識したのだろうか。全の第2打は、林から出しただけ。3打目もピンに寄らない。対する不動は、第2打をピンそば20センチにつけ、バーディ(-6)。全は8mのパーパットをはずし、ボギー(-7)。古閑は最終ホール、2m強のバーディーパットを沈め、再びガッツポーズ。
 完璧なプレーをしていた全が、17Hで初めてのボギー。不動、古閑のバーディによって、一気に1打差となり、勝負は分からなくなった。

 全・不動組、ティショット、ともにフェアウエーをキープ。第2打、先に売った不動がピンそば1mのスーパーショット。これで、全はグリーンに乗せればいいという状況ではなくなり、グッとプレッシャーが掛かった。
 全のセカンドショット。バンカーに入る。解説者によると、このバンカーショットは易しくないそうだ。全の第3打、まともに当たりすぎ、ホームラン。グリーンを大きく越える。全の第4打、これを入れないとボギーとなり、不動、古閑と並んでしまう。しかも、不動は絶好のバーディチャンス。非常に苦しい状況に追い込まれてしまった。
 全の第4打、ダフリ気味でショート。5mを残す。この時点で、-6となる。第5打、これもはずし、完全に優勝の可能性はなくなった。まったくラインが違い、全の動揺や落胆が窺えるパットだった。第6打をようやく沈め、ダブルボギー。5アンダー。一気に奈落の底に落ちてしまった。
 この後、不動のバーディパット。1mだ。これを沈めれば、優勝。しかし、これが右にスライス。バーディならず。これで、不動と古閑が並び、プレーオフ………と、誰もが思ったはず。と言うより、あのパットを不動がはずしたことが、信じられない。ざわめきが起こる。
 《不動が1mの優勝パットをはずした》→《信じられない》→《ということは、古閑とのプレーオフ?》
 全の信じられない乱れ、不動のまさかのミス、と、信じられない展開に、ギャラリーの思考がついていかない。
 そのざわめきの中、不動は表情を変えず、ラインを読み、パーパットに臨む。1m弱、真っ直ぐなライン。コン……不動のボールはカップの左ふちをなめただけに留まる。
 痛恨のボギー!不動も5アンダーとなり、この瞬間、古閑の逆転優勝。と同時に、逆転賞金女王が決まる。不動がはずしても、一瞬、何が起こったかわからなかった古閑。ようやく、事態を理解して、歓喜の表情に。

 『急転直下』という言葉が、ぴったり。まさに、大逆転の優勝。それが、賞金女王に直結するなんて、「こんなことってあるんだな」と。

 ただ、今回は、応援していた不動が、ああいう結末。最終日、快調なプレーを続ける全に、消沈することなくプレーをし続け、プレッシャーをかけ、ついに逆転優勝と思ったところから、奈落の底へ。さすがの不動も、はずした瞬間、「あ~あ」という表情を浮かべた。今年最後のツアーのプレーが痛恨のパット。悪い感触が、来年まで残るという最悪の結末だ(実際は、日韓対抗戦があるが)。トラウマにならないだろうか。
 不動にとって、不運だったことは、ピンそば1mに寄せてから、全の第2打から5打連続、全がプレーすることとなった事。しかも、ミス続きなので、時間もかかった。その間、全の転落ぶりを間近で見ることとなってしまった。優勝パットを控える不動にとっては、身体も硬くなり、気持ちも揺れていたのではないだろうか。
 不動の気持ちを思うと、今夜は寝れそうもない(うそです)。切ない。

 不動にとって、古閑は深い因縁がある。昨年の最終戦、つまり、この大会、不動は3日目を終えて、5打差のトップ独走状態だった。ところが、古閑が最終日、大爆発、5打差をもろともせず、一気に逆転してしまったのだ。
 私にとって、古閑はにっくき天敵となってしまった。でも、最後まであきらめず、不屈の闘志が今回の大逆転を呼んだ。天晴れだ。

 さて、実は、もうひとり、悲劇のヒロインがいた。
 李知姫。
 そう、最終ホール、全が崩れなかったら、不動がパットを決めていたら、賞金女王の称号は、彼女に輝いていたはずなのだ。しかも、彼女自身、最終ホール、ボギーにしさえしなければ7位タイとなっていたので、古河が優勝しても李の賞金女王だったのだ。悔やんでも悔やみきれない。


 古閑が歓喜するその脇で、不動と全が残念そうに、そして、仕方ないねという表情で、スコアカードに記入している姿が印象的だった。

 悔しいけれど、古閑さん、おめでとう!
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2 コメント

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山口に戻る新幹線の車中で… (Dancho)
2008-12-04 19:54:01
この結果を知りました。

思わずひっくり返りそうになりました…。

小生…不動さんも好きですが、古閑さん…結構ストライクなんです。勝手に「ミホミホ」なんて呼んじゃったりするほど…。

しかし、将棋もドラマなら、ゴルフもドラマですね…。

今シーズンは、最初も「ミホミホ」のお騒がせで始まり、最後も締めましたね…。

来シーズンこそ頑張れ、不動さん。
エール、ありがとうございます (英)
2008-12-04 20:15:13
 エール、ありがとうございます。

 そうですか、古閑さんのファンですか。
 私にとって、古閑さんはにっくき天敵ですが、最終日のあのプレー、特にホールアウト間際のプレーは、気迫あふれるプレーで素敵でした。
 来シーズンも、両選手の競い合いが見られるといいですね。

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