崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

南大門(崇礼門)復元

2013年05月06日 05時32分59秒 | エッセイ
 2008年火災で消失した南大門(崇礼門)が復元された。私は小学校時代にその近く住み、日常的に見上げたものと対照的に復元された映像がより美しく感じる。その「国宝1号」の下に地下鉄を作る時、文化財保護法を犯すということで当時政府(ソウル市)と文化財委員会と対置したが、朴正熙軍事政権が安全対策をするということで押し切ったことを覚えている。後に私は文化財委員会の専門委員を長く務めたが、当時は常に何を指定すべきかを考えていたが、時が経ち、その場を離れて朝鮮総督府庁舎を破壊撤去するなど乱暴な文化政策には驚くばかりだった。復元物や復製、レプリカを文化財として指定するなら別の意味で考えた方が良い。
 国宝1号の南大門はほぼ全焼し、文化財の指定は解除された。それは当然である。しかし今火災で焼失した木材と瓦、丹青(色)を新しく復元し、文化財庁はほとんど原形のとおり復旧をしたという。それを再び国宝1号として指定すべきだという世論があるようである。完璧な復旧や復元とは何だろう。中には日帝時代で指定したものであるから改めて指定しようという「親日反日論的」意見もある。日本でアメリカが作った憲法だから改正しようという意見に似ている。それは戦争を挑発したことからの大きい教訓であることを考えるべきであろう。
 そもそも文化財指定の目的は保護が第一である。国家が指定して国家が保護出来なかったことをいくら華麗な式典をしても済まされるものではない。歴史建造物は「歴史」の価値、また「本物」の価値が重要である。今立派に建造したものは「新品」としての価値であり、それが歴史的に認められるためにはまた歳月と人の生活が刻まれることが必要である。再指定することはないとは思うが、老婆心ながらレプリカを指定するような恥をかいたりしないかと心配である。