大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第51回

2013年11月26日 18時29分36秒 | 小説
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『みち』 ~未知~  第51回



運転をしている間も段々と背中が重く感じ、前のめりになっていく。

「重い・・・早く着いて」 耐えながら運転して行くとやっと見覚えのある風景が目に映った。 

「もうナビはいらない」 ナビを消してそのまま車を走らせた。
 
駐車場に着き車を停めると一目散に乙訓寺の門に向かった。 重い背中で門前で一礼をし、そのまま本殿へ向かい前に立ち手を合わせたが

「あ・・・なんて言えばいいのかしら・・・」 どう言っていいのか分からなかった。

「どう説明すれば・・・それにどうにかしてもらおうなんてそんな事が出来るわけないじゃ・・・う、重い・・・」 何かと考えている間に余計重さを感じる。
重さに負け思いつくままに言ってみた。

「・・・私の背中に誰かが乗っています・・・あ、じゃなくて 私の背中にどなたかがいらっしゃるのなら どうかその方のお導きをお願いいたします」 長い間そのまま手を合わせていると背中がふっと軽くなるのを感じた。

願っておいてその事に驚きグッと息をのんだ。 そして息を吐き

「有難うございました」 礼を言い、合わせていた手を下ろした。

「はぁー、焦ったー」 全身の力が抜けていく。 膝に手を置きうなだれ

「こんな事ってあるの・・・?」 独り言をいいそのまま動けない。 いや、動こうという気がしない。 暫くそのままでいたが

「だめ・・・座りたい」 ベンチに座り考える。

「確かに病院って色々聞くわよね。 それも地下で薄暗くて・・・ああ、こっちの方は考えるのはよしましょう」 大きく息をし、空を見上げた。

「あの感覚・・・確かに背中が軽くなったわ・・・。 ご本尊様が導いて下さった? ・・・そんな畏れ多いことはないわよね。 どなたかが導いて下さったのかしら・・・どなたって、誰よ? あー、分からない。 ・・・もしかしたら文香の言うように本当にここは私にとって何かがあるのかしら・・・」 色々と考えるねぇ。 でも昔の琴音ならそんな風に考えなかっただろうね。 ただ何もかもが怖いだけだったんじゃないかい? ましてやお寺に助けを求めに来るなんて有り得なかっただろう? 仏教の本を読み漁って随分と変わったね。 まっ、そんなことに気付いている様子はないみたいだけどね。

正面を見て
「遅くなるわ。 帰りましょう」 ベンチを立ちもう一度本堂の前で手を合わせ感謝を述べ一礼をし駐車場に戻り車を出した。

マンションに帰るとすぐに実家に電話を入れた。

「もしもし お母さん? うん、今帰ってきたところ。 伯母さんが倒れた原因は分からないんだけど検査をしても何ともなかったみたい。 様子を見て退院できるらしいわ。 元気そうにしてたわよ」 電話の向こうで安堵する母親の声が聞こえる。

「それとね・・・」 お金をもらった事を母親に告げた。

電話を切ってやっと一息だ。 コーヒーを入れ乙訓寺のことを振り返るが何の解決の糸口も見当たらない。

「考えても無駄ね」 ゆっくりと夜を過ごした。


その2日後、無事に退院したと 伯母から電話があった。


会社では考えなくてはならない決算処理。

決算処理を始めておおよそ1ヶ月かかってようやく終わる事ができた。

「伝票処理が間違えていませんように」 祈る事しか出来ない琴音であった。

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