大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第96回

2014年05月02日 14時21分46秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第50回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~未知~  第96回



和尚が話し始めるとザワつきも収まり

「みなさん少しは体の具合が良くなりましたか? 今日一日したからと言って根本的に体の具合が良くなったわけではありませんよ。 日頃から流れを滞らせない。 それは精神的にも肉体的にもですよ。 地球も流れが滞ると雨が降らなくなって川も澱みますね。 そのうちに川はドロドロになって流れが止まってしまう。 人間で言う所の血管につまりが生じたようなものですね。 不服はいけませんですよ。 今の全てがあるから自分が有難くも今こうして居ることが出来るんですよ。 周りの方々に感謝をし、お日様に地球に大地に川に感謝ですよ。 感謝するところは数え切れないほどありますよ。 お日様は洗濯物を乾かして下さったからと請求書を送ってきますか? 川の美味しいお水を頂くと 「こら! なに勝手に飲んでいるんだ!」 って川が怒ってきますか? 大地があるお陰で沢山の美味しいものをいただけていますよねぇ。 そうそう、山があるお陰でお水をいただけていますよね。 砂漠に山はないですもんね。 山が雨を貯蔵してくれているんですね。 その上、ろ過までしてくれて美しい、命の源となる水となる。 有難い事です。 その山に木が生り根を張り山を硬くしてくれている。 植物にも感謝ですね。 そして皆さんの体の大半はお水で出来ています。 いいお水を飲みましょうね。 いいお水と言うのは・・・そうですねぇ 生きているお水とでも言いましょうか? おっと、誤解のないようにね、お水の生成器を買えと言ってるのではありませんですよ」 所々でクスッと笑い声が漏れる。

「あれやこれやと思うと気付きませんか? この地球」 辺りを見渡して

「この地球は偉大ですね。 海の水が蒸発して雲になり雨になり山に降り川となって海に辿り着く。 その循環を繰り返してくださっているお陰で私達の肉体が成り立っているんですね。 感謝こそすれ、海や山や川を汚すなんてとんでもない事ですよね。 地球の大半は海ですよね。 さっき言いましたように人間の大半も水ですよね。 マクロとミクロですね。 地球と同じように私達の体も循環させましょうね。 戴いたこの肉体、大切に致しましょうね。 それとですね・・・あれ? 何を言うんだったっけかな?」 雄弁に話している和尚が急にとぼけたように言ったので それまで真剣に聞いていた全員がクスクスと笑った。

「えっと・・・何だったけかな、話しているときに思いついたんですが 話している間に忘れちゃったな」 丸坊主の頭を掻いている姿を見て今度は全員大笑いだ。

「忘れるという事はそんなに大切な事ではなかったのかな?」 まだ笑いは続いている。

「歳をとると物忘れが酷くなって困ってしまいますね」 またまた大爆笑だ。

「ま、そうだな。 それとこれも言っておきましょうか」 周りが静かになった。

「自分はこうであらねばならない。 皆さん思っていませんか?」 何の事かと言わんばかりに みんなキョロキョロしだした。

「何々であらねばならない。 そんな事はないんですよ。 確かにあまりにも外れすぎると困ったものですが 例えば『子であらなければならない』 少なくとも皆さんその立場にあるはずです。 親が産んでくれたことで今存在しているんですからね。 皆さんは少なくともその親の子であるはずです。 <私は親の顔を知りません。 生き別れました> とか <すぐに施設に入れられました> <それは養父母の事?産んだ親の事?> 色々言いたい事はあるでしょうが そうですね、えっとまさか <自分は泡から生まれたヴィーナスです> って方はいらっしゃいませんよね?」 ワザと大きく周りを見渡すともうみんな大笑いだ。

「今は育てて下さった親なり施設の方々のお話しとしましょうか。 あ、泡が親としてもいいですよ」 止まりかけた笑いが止まらない。

「その育てて下さった方々に『私はこうして子供らしくいなければならない』 そう思ったことのある方はいらっしゃいませんか?」 一息おき 

「そんな事は必要ないんですよ。 貴方は貴方なのですから。 貴方の思うように生きればいいんです。 自分でヘンな枠を作る必要は無いんです。 いいですか、ヘンな枠ですよ。 あ、せっかく貴方が作った枠にヘンって言うのもよろしくありませんが ニュアンスで受け取ってくださいね。 いいですか、貴方が作った枠は貴方の世界だけの枠なのですよ。 他の皆さんとは違う価値観の枠なのですよ。 それなのにその枠にがんじがらめになって 貴方は息を吸うこともままならなくなってくるのですよ。 貴方を愛してくださる方は素のままのあなたを愛して下さっているのですよ。 そんな貴方が息を吸うこともままならなく暮らしているなんて あなたを愛してくださっている方々は見ているだけで辛くなってしまうんですよ」 部屋の隅ですすり泣く声がした。 

それに琴音自身は気付いていないが若い子達と話していた時、琴音の箍が外れていたのだ。 『人と話すときはこうでなければならない』 いつもそう思っていたそれもそうなのだ。 余計な枠なのだ。 さして大きなことではないが、それでもあの時の琴音は今まで人と話していたときに比べ自由に話せていた筈だ。 

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