大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第85回

2014年03月25日 15時23分42秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第50回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

  『みち』リンクページ



『みち』 第51回からは以下からになります。

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『みち』 ~未知~  第85回



「気持ちいいー」 対岸まで歩いて行きまだ火照っている身体を冷やすように 川の端に座って足だけを川につけ、暫くは子供達の遊ぶ姿を眺めていた。

「何て贅沢な一日だったんだろう」 思っていたように滝で遊べなかったという不服も持たず 今日一日に感謝が出来たようだ。
視線を空に移し

「でも・・・」 なんだい、何か文句を言うのかい?

「あれは誰だったのかしら・・・」 ああ、文句じゃなかったんだね。 そうだね。 ちゃんと意識しなかったからね。 

「すごく安心できた・・・温かかった・・・。 それに着物と思ったけどそうじゃなかったような・・・」 思い出そうと記憶を辿る。

「ああ よく分からないわ。 お寺のご住職のような感じだったかしら。 それとも唐の時代くらいの男の人の服? あ、もしかしたらあの石像が記憶に残っていて 石像が着ていた着物のように思っちゃったのかしら? っていう事はあの出来事は気のせいなの?」 あの石像と言うのは役小角のことだ。
おいおい。 あれだけの温かさが伝わってきたのに気のせいで終わらせる気かい・・・。

「うううん。 そんな事ないわ温かかったんだもの」 そうだよ、あれほどの温かい御心を忘れちゃいけないよ。 あーあ、この調子じゃまだまだ僕のことも思い出してもらえないんだろうな。

「・・・カップは無理にしてもあの吸殻・・・やっぱり拾って来ればよかったわ」 ほらね。 後悔しただろう? これからも拾うまで繰り返されるよ。 今の気持ちを忘れるんじゃないよ。

「お姉さん、何ブツブツいってるの?」 琴音の様子をずっと見ていた小学生の姉弟。 弟の方が話しかけてきた。

「え? あ、聞こえちゃった?」 恥ずかしそうに聞き返すと今度は姉の方が

「なんか・・・難しい顔をしたと思ったら今度は違う顔とかって・・・そしたらブツブツ言い出したり。 大丈夫?」

「あ、あら・・・恥ずかしいわ。 ずっと見てたのね。 大丈夫よ、ちょっと考え事をしていただけ」

「失恋?」

「え!?」 まだ背の低い低学年の弟に比べて、姉のほうは小学生高学年であろうか。 突然の言葉にビックリしていると

「隆、ほらあれ」 姉がそう言って弟を促し、背負っていたリュックを弟の方に向けると 弟が慌ててリュックの中のポケットからお菓子の入った袋を出し姉に渡した。 その袋の中に手を入れたと思ったら

「お姉さん、コレあげる」 その手には丸い形をした飴があった。 姉の言葉に続いて弟が

「コレ元気玉だよ。 コレを食べると元気になるんだ。 こけても泣かなくなるよ」

「え?」 子供慣れをしていない故、突拍子もない話に思え何と答えていいのか分からない。
すると姉の方が琴音にそっと小さい声で話し出した。

「隆は泣き虫だからお母さんがそう言っていつも持たせてるの。 でも、美味しいからお姉さんにも上げる。 だからお姉さんも元気出して。 男なんてごまんといるんだから、ねっ」 子供達が自分を心配してくれた。 それに話も微笑ましく思え

「ありがとう」 姉の手から飴を受け取ると

「隆! ほら、今度はアッチで遊ぼう。 お姉さんバイバイ」 姉につられて弟も琴音に手を振り少し離れた所で水遊びをしだした。

「元気玉か・・・ふふ」 飴を空に向けて持ち上げ

「可愛い元気玉」 包み紙から飴を出し口に頬張り、離れた所で姉弟が遊ぶ姿に目をやると

「お姉さん、美味しいでしょ?」 姉が大きな声で琴音に話しかけた。

「うん、とっても美味しいわ。 有難う、元気になりそうよ」 その返事を聞いた姉弟は満足そうに笑顔を返してきた。

可愛いらしい直会(なおらい) になったね。


この連休も筋肉痛の嵐であったが5月に比べるといくらかましなようであった。 通勤の自転車、悠森製作所での階段の昇り降りが体力強化になって効いたようだが やはり全く動けない連休に終わった。
今回、暦の助けはなかった。

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