『みち』 目次
『みち』 第1回から第50回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。
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『みち』 第51回からは以下からになります。
第51回・第52回・第53回・第54回・第55回・第56回・第57回・第58回・第59回・第60回
第61回・第62回・第63回・第64回・第65回・第66回・第67回・第68回・第69回・第70回
第71回・第72回・第73回・第74回・第75回・第76回・第77回・第78回・第79回・第80回
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『みち』 ~未知~ 第84回
(どうして虫の声がこんな風に聞こえるのかしら。 何かあるの? ・・・もう帰ったほうがいいのかしら) そう思いながらもまだ足の疲れが取れない。 息も上がったままだ。
すると虫の声を無視して座っているとより一層、虫の声が大きくなった。
「早く帰りなさい」 「早く、早く」
(嘘でしょう。 分かった、分かったわよ。 帰るからそんなに大きな声を出さないで)
まだ息が上がっているまま重い足を手を添えて曲げ、腰を上げその場からもう一度瀧に向かい手を合わせ、そして目に見える限りの石像や塔にも手を合わせ来た道を帰り始めた。
上ってきたときには気付かなかったが途中吸殻が捨ててあった。
(あ、こんな所に吸殻なんて・・・) 拾って帰ろうかと一瞬迷った琴音。
(ずっと持って歩くのは疲れるわ。 指さえ疲れてるんだもの) 拾わず歩き出したがその後も川を見ていると、カップ麺のカップが川に流れて岩で止まっているのを見た。
(どうしてこんな所に・・・川の中に入ってまで取るのもね・・・) また言い訳をして見て見ぬ振りだ。 後で後悔するぞ。
やっと下山した所と空也滝との分かれ道に来た。 ここまで来ると全く空気感が違って下界へ降りてきたという感じだ。
(ここまで来たらもう安心ね。 虫ももう囁かないわよね) 座りやすい岩を見つけて腰を下ろした。
ハァハァと喘ぐような息。 足にはもう疲れや痛みを超越して感覚が無いほどだ。 自分の足ではないようにさえ思える。
そんな時、ふと横に気配を感じた。 顔を上げて見てみればいいのだがそんな事をする余裕も無いほどの疲れ、それにそんな事をしても誰も居ないのは分かっている。
ただ下を向いている琴音の視界には 琴音が座っている岩の上に立つ誰かの膝下が見えた。 いや、感じた。
(誰? 着物を着ているの?) 丁度 背を丸くして下を向いている琴音の座高が膝下の高さくらいであろうか。
もっと落ち着いて意識をすれば全体が分かったであろうがその余裕がない。 今の琴音に分かるのは膝下だけだ。
息を上げながらもただ無言で一緒に居てくれているその存在に安堵を覚えた。 が、その存在に意識を向けることがなかったせいかいつしか居なくなっていた。 そしてその事にさえ気付かなかった琴音であった。
暫くして息も整いアスファルトの道を歩き出した。 長い距離ではあるが平坦であったり緩い下り坂。 楽に歩ける。
バス停に着きアスファルト道を楽に下山できたとは言え、身体中が熱くてなかなか熱が抜けない。
(そうだわ、嵐山で一度降りて・・・) バスに乗り込み今回も上手く座れた。 そして嵐山バス停で降り、桂川を見てみると大人も子供もみんな渡月橋を渡らずズボンをたくし上げて桂川を渡っている。
「お爺さんの言ってたとおりだわ」 琴音も川へ降りて行きGパンを膝までたくし上げ子供に混じって川を渡りだした
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すると虫の声を無視して座っているとより一層、虫の声が大きくなった。
「早く帰りなさい」 「早く、早く」
(嘘でしょう。 分かった、分かったわよ。 帰るからそんなに大きな声を出さないで)
まだ息が上がっているまま重い足を手を添えて曲げ、腰を上げその場からもう一度瀧に向かい手を合わせ、そして目に見える限りの石像や塔にも手を合わせ来た道を帰り始めた。
上ってきたときには気付かなかったが途中吸殻が捨ててあった。
(あ、こんな所に吸殻なんて・・・) 拾って帰ろうかと一瞬迷った琴音。
(ずっと持って歩くのは疲れるわ。 指さえ疲れてるんだもの) 拾わず歩き出したがその後も川を見ていると、カップ麺のカップが川に流れて岩で止まっているのを見た。
(どうしてこんな所に・・・川の中に入ってまで取るのもね・・・) また言い訳をして見て見ぬ振りだ。 後で後悔するぞ。
やっと下山した所と空也滝との分かれ道に来た。 ここまで来ると全く空気感が違って下界へ降りてきたという感じだ。
(ここまで来たらもう安心ね。 虫ももう囁かないわよね) 座りやすい岩を見つけて腰を下ろした。
ハァハァと喘ぐような息。 足にはもう疲れや痛みを超越して感覚が無いほどだ。 自分の足ではないようにさえ思える。
そんな時、ふと横に気配を感じた。 顔を上げて見てみればいいのだがそんな事をする余裕も無いほどの疲れ、それにそんな事をしても誰も居ないのは分かっている。
ただ下を向いている琴音の視界には 琴音が座っている岩の上に立つ誰かの膝下が見えた。 いや、感じた。
(誰? 着物を着ているの?) 丁度 背を丸くして下を向いている琴音の座高が膝下の高さくらいであろうか。
もっと落ち着いて意識をすれば全体が分かったであろうがその余裕がない。 今の琴音に分かるのは膝下だけだ。
息を上げながらもただ無言で一緒に居てくれているその存在に安堵を覚えた。 が、その存在に意識を向けることがなかったせいかいつしか居なくなっていた。 そしてその事にさえ気付かなかった琴音であった。
暫くして息も整いアスファルトの道を歩き出した。 長い距離ではあるが平坦であったり緩い下り坂。 楽に歩ける。
バス停に着きアスファルト道を楽に下山できたとは言え、身体中が熱くてなかなか熱が抜けない。
(そうだわ、嵐山で一度降りて・・・) バスに乗り込み今回も上手く座れた。 そして嵐山バス停で降り、桂川を見てみると大人も子供もみんな渡月橋を渡らずズボンをたくし上げて桂川を渡っている。
「お爺さんの言ってたとおりだわ」 琴音も川へ降りて行きGパンを膝までたくし上げ子供に混じって川を渡りだした