『みち』 目次
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『みち』 ~未知~ 第97回
「よくこんな話をすると「自分の思うように生きればいい? それじゃあ何をしてもいいんだな、自由にしたい事をしていいんだな、あれが欲しいからと泥棒してもいいんだな」 と考える方がいらっしゃいますが それは違うでしょ。
時代や国が変わればまた違うでしょうが 今のこの時代の日本にいる以上はそうじゃないでしょう。
この国にはこの国の法律があるでしょう。 まぁ、全てが良い法律かどうかは置いておいても その法律の下に暮らしているんですからね。
それに大切な事は何かが欲しいからと言ってそれを盗って本当に自分の魂が喜んでいますか? この3次元の物質欲に操られているだけではないのですか?
「貴方の思うように」 と言うのは「貴方らしく」 と言うことです。
もっと正確に言うと 「貴方の魂らしく」 という事ですよ。 貴方の作ったヘンな枠らしくという事ではありませんよ」 また別の場所ですすり泣く声がしている。
「何でもない音楽を聴いたら意味が分からずに涙が出てきた。 絵を見たら心の中に温かいものが広がった。
魂に触れるとはそういう事じゃないんですか? 魂で感じる喜びや感謝はずっと心に残ります。
でも盗ってきた物が自分の物になったからといって尽きることなく嬉しく幸せでいられるでしょうか? 今度はもっと大きいものを、いや、もっと値段の高いものを上手く盗ってやる。 なんて思って、終わる事はないんじゃないですか?」 その時にスタッフの男の子が
「和尚、そろそろ時間です」 小声で和尚に言ってきた。 和尚が腕時計を見て
「あらあら、もうこんな時間になっちゃってましたか」 会場からはエー、という声がこぼれる。
「とにかくですね 自分をヘンな枠に当て込んでがんじがらめになっちゃいけませんよ。
良い上司になろう、良い親になろう、良い兄弟・姉妹になろう、後輩らしく、先輩らしく・・・必要な事は必要ですよ。 言葉使いや挨拶、他にもありますね。 それらを棚の上に上げちゃいけませんよ。
もう一度振り返ってみてください。
そう思うことはもしかしたら 人から見ていい人に思われようとしていませんか? 又それと反対もあります。 私は悲劇のヒロインなの。 だから可哀想でしょ? って。 それってね、どっちも自分を見て欲しいだけなんですよ。
確かにね、人間誰しも人に見て欲しいんです。 貴方だけじゃないですよ。 人は一人では生きていけないというところですね。 でもね、あえてそんな風に思うことも注目を集めようと何かをする事も必要ないんですよ。 貴方が貴方らしく生きていればみんな貴方を見ています。
極端な話、注目を集めようと物質や金銭で人を振り向かそうとするから その金銭や物質にしか人が寄らないんです。 貴方を見ているわけではないんですよ。 金銭や物質しか見ていないんですよ。
それとキツイ言い方ですけど姑息なことをするのもそうです。 振り向いてもらおうと白々しく何かを企んでも相手にはお見通しですよ。 「私はこれだけ親の事を面倒みているの」 「子供のために、友達のためにこれだけやっているの」ってアチコチに吹聴して回って 「あらそうなの、介護してるの? 大変なのに偉いわねぇ」 とか「まぁ、そんな事までしてるの? 子供を甘やかせすぎじゃない? 親として出来すぎよ。 貴方が身体を壊すわよ」 そんな返事をしてもらいたいだけですか?
相手は単に相槌を打っているだけなんじゃないですか? 本当に貴方がそうしていればそんな事を言わなくても皆さんちゃんと見ていらっしゃいますよ。
咄嗟に人を助ける時、無意識に手が出ませんか? この人を助けたら報道されて有名になるだろうな。 なんてことを考えて助けないでしょう?」 スタッフの男の子が腕時計とにらめっこをしている。
「それに貴方の知らないところで見守って下さっている存在がいますよ。 何処にいても貴方は一人じゃないんですよ。 ずっとずっと見ていらっしゃるんですよ。
貴方らしく生きていればその方々の声がきっと聞こえますよ。 その時にその方々に恥じることが無いよう貴方らしく生きていきませんか?」 そう言った和尚が急に空(くう)を見た。
「ボランティア・・・そうですねぇ、ボランティアに行かれて・・・」 何か独り言のように呟きだした。 そして
「ボランティアに行かれたことがある方がいらっしゃいますかね。 その時に相手様が「ありがとう」 と言ってくれなかった事がありますかね・・・」 その時、琴音の斜め前に座っていた男性が頷いた。
「そうですよね。 せっかくお手伝いをしたのに 「有難う」 の一言が無いってどういうわけ? って思っちゃいますよね。 それって当たり前ですよね」 斜め前の男性が何度も頷いている。
「でもねよく考えてくださいね。 ボランティアで出かけたんでしょう? お手伝いをしたかったんでしょう? 「有難う」 と言ってもらいたくて出かけたわけじゃないんでしょう?」 斜め前の男性の頷きが止まった。
「それより、その「有難う」 と言わなかったお相手様は、貴方がしたかったお手伝いのきっかけをくださったんですよ。 それなのに 貴方のお手伝いをしたいという想いを叶えて下さったお相手様に「ありがとう」 って言えないのか? っておかしくないですか?」 斜め前の男性がうつむいた。
「いやいや、分かりますよ。 何かをしたら当たり前に「有難う」 と言ってもらえると思いますよね。 それもボランティアです。 とても尊いことです。
でもね、「有難う」 と言ってもらいたくてしているわけじゃないでしょ? ま、言わない方もどうかと思いますけどね。
そんな時はちょっと意地悪く 「お手伝いさせていただいて有難うございました。 貴方がいてくださったお陰で私はお手伝いをすることが出来ました」 なんて言ってみてはどうですか?
あ、すごくイヤミですね。 私もまだまだ根性が悪いみたいです」 みんな笑っているが斜め前の男性は物深げに何か考えているようだ。
そこにスタッフの男の子が
「和尚、時間が・・・」
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時代や国が変わればまた違うでしょうが 今のこの時代の日本にいる以上はそうじゃないでしょう。
この国にはこの国の法律があるでしょう。 まぁ、全てが良い法律かどうかは置いておいても その法律の下に暮らしているんですからね。
それに大切な事は何かが欲しいからと言ってそれを盗って本当に自分の魂が喜んでいますか? この3次元の物質欲に操られているだけではないのですか?
「貴方の思うように」 と言うのは「貴方らしく」 と言うことです。
もっと正確に言うと 「貴方の魂らしく」 という事ですよ。 貴方の作ったヘンな枠らしくという事ではありませんよ」 また別の場所ですすり泣く声がしている。
「何でもない音楽を聴いたら意味が分からずに涙が出てきた。 絵を見たら心の中に温かいものが広がった。
魂に触れるとはそういう事じゃないんですか? 魂で感じる喜びや感謝はずっと心に残ります。
でも盗ってきた物が自分の物になったからといって尽きることなく嬉しく幸せでいられるでしょうか? 今度はもっと大きいものを、いや、もっと値段の高いものを上手く盗ってやる。 なんて思って、終わる事はないんじゃないですか?」 その時にスタッフの男の子が
「和尚、そろそろ時間です」 小声で和尚に言ってきた。 和尚が腕時計を見て
「あらあら、もうこんな時間になっちゃってましたか」 会場からはエー、という声がこぼれる。
「とにかくですね 自分をヘンな枠に当て込んでがんじがらめになっちゃいけませんよ。
良い上司になろう、良い親になろう、良い兄弟・姉妹になろう、後輩らしく、先輩らしく・・・必要な事は必要ですよ。 言葉使いや挨拶、他にもありますね。 それらを棚の上に上げちゃいけませんよ。
もう一度振り返ってみてください。
そう思うことはもしかしたら 人から見ていい人に思われようとしていませんか? 又それと反対もあります。 私は悲劇のヒロインなの。 だから可哀想でしょ? って。 それってね、どっちも自分を見て欲しいだけなんですよ。
確かにね、人間誰しも人に見て欲しいんです。 貴方だけじゃないですよ。 人は一人では生きていけないというところですね。 でもね、あえてそんな風に思うことも注目を集めようと何かをする事も必要ないんですよ。 貴方が貴方らしく生きていればみんな貴方を見ています。
極端な話、注目を集めようと物質や金銭で人を振り向かそうとするから その金銭や物質にしか人が寄らないんです。 貴方を見ているわけではないんですよ。 金銭や物質しか見ていないんですよ。
それとキツイ言い方ですけど姑息なことをするのもそうです。 振り向いてもらおうと白々しく何かを企んでも相手にはお見通しですよ。 「私はこれだけ親の事を面倒みているの」 「子供のために、友達のためにこれだけやっているの」ってアチコチに吹聴して回って 「あらそうなの、介護してるの? 大変なのに偉いわねぇ」 とか「まぁ、そんな事までしてるの? 子供を甘やかせすぎじゃない? 親として出来すぎよ。 貴方が身体を壊すわよ」 そんな返事をしてもらいたいだけですか?
相手は単に相槌を打っているだけなんじゃないですか? 本当に貴方がそうしていればそんな事を言わなくても皆さんちゃんと見ていらっしゃいますよ。
咄嗟に人を助ける時、無意識に手が出ませんか? この人を助けたら報道されて有名になるだろうな。 なんてことを考えて助けないでしょう?」 スタッフの男の子が腕時計とにらめっこをしている。
「それに貴方の知らないところで見守って下さっている存在がいますよ。 何処にいても貴方は一人じゃないんですよ。 ずっとずっと見ていらっしゃるんですよ。
貴方らしく生きていればその方々の声がきっと聞こえますよ。 その時にその方々に恥じることが無いよう貴方らしく生きていきませんか?」 そう言った和尚が急に空(くう)を見た。
「ボランティア・・・そうですねぇ、ボランティアに行かれて・・・」 何か独り言のように呟きだした。 そして
「ボランティアに行かれたことがある方がいらっしゃいますかね。 その時に相手様が「ありがとう」 と言ってくれなかった事がありますかね・・・」 その時、琴音の斜め前に座っていた男性が頷いた。
「そうですよね。 せっかくお手伝いをしたのに 「有難う」 の一言が無いってどういうわけ? って思っちゃいますよね。 それって当たり前ですよね」 斜め前の男性が何度も頷いている。
「でもねよく考えてくださいね。 ボランティアで出かけたんでしょう? お手伝いをしたかったんでしょう? 「有難う」 と言ってもらいたくて出かけたわけじゃないんでしょう?」 斜め前の男性の頷きが止まった。
「それより、その「有難う」 と言わなかったお相手様は、貴方がしたかったお手伝いのきっかけをくださったんですよ。 それなのに 貴方のお手伝いをしたいという想いを叶えて下さったお相手様に「ありがとう」 って言えないのか? っておかしくないですか?」 斜め前の男性がうつむいた。
「いやいや、分かりますよ。 何かをしたら当たり前に「有難う」 と言ってもらえると思いますよね。 それもボランティアです。 とても尊いことです。
でもね、「有難う」 と言ってもらいたくてしているわけじゃないでしょ? ま、言わない方もどうかと思いますけどね。
そんな時はちょっと意地悪く 「お手伝いさせていただいて有難うございました。 貴方がいてくださったお陰で私はお手伝いをすることが出来ました」 なんて言ってみてはどうですか?
あ、すごくイヤミですね。 私もまだまだ根性が悪いみたいです」 みんな笑っているが斜め前の男性は物深げに何か考えているようだ。
そこにスタッフの男の子が
「和尚、時間が・・・」