大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第82回

2014年03月14日 15時49分27秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第50回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

  『みち』リンクページ



『みち』 第51回からは以下からになります。

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『みち』 ~未知~  第82回



そこでは数人が休憩をとっていた。

(この人たちと下山したら安心だわ) だがなかなか腰を上げそうにない。 
痺れを切らした琴音は先に下り始めた。 

(それにしても何処にも滝がないわ」 歩いていくと前を歩く人を見つけた。

(あ、あの人たちについて行こう) 中年の夫婦連れのようだ。 一定の距離を開けて歩く。
だが 女性のほうが疲れだしたのか丸太に座り込んだ。 

(わっ、どうしよう。 同じようにして変な目で見られるのもいやだし) そう思いそのまま抜かして歩き続けたが

(やっぱり一人は怖い・・・) 足が疲れて休憩を取っている時でも 少しの音にも敏感になってしまう。

(夏だもんね。 熊も活動時期よね・・・) 葉が揺れたりなどしたら飛び上がってしまいそうだ。
登ってきた時とは大違いで周りに耳をそばだてながらの下山だ。

そんな時、琴音の左側の頭上で何かが落ちてくるような音がした。 琴音の左は山側、右は谷だ。 道幅は1メートルくらいしかない。

「わっ!」 っと思ったのと同時に目の前に鹿が現れた。 立派な角を持っている。

立ち止まった琴音はどうしていいか分からない。 鹿はじっと琴音を見ている。 その距離3メートル余り。

(飛び掛ってきたら・・・) 動く勇気も無ければ疲れきった足はガクガクと揺れじっとしていることは容易い事ではない。 これが熊なら死んだ振りだろうけどね。

琴音にしてみれば長く感じた時間だったが鹿は数秒間琴音を見、踵を返すように走って行った。 その道は琴音がこれから歩いていく道だ。 まだ気が張っている琴音は鹿の行く手を見ていたが 鹿はすぐに道を外れ山の絶壁を走って下り出した。 鹿が見えなくなってようやく動く事ができた琴音。

(すごい、鹿ってあんなふうに走るのね。 私の前に現れたときもああやってここの絶壁を下ってきたんだわ) 右側の山の絶壁を見た。

(きっと私が驚いたよりも鹿のほうがビックリしたでしょうね。 駆け下りてきたら人間が立ってたんだものね) そうかな? 鹿が琴音の事をどんな目で見ていたかよく思い出してごらん。

歩き始めるとすぐに鹿の足跡があった。

(こんなに蹴り上げて走っているのね) 足跡を踏まないように歩き出した。
琴音は無意識に踏まないようにしたんだろうけど覚えていたんだね。 足跡さえ大切にしたかったんだね。

その後も後ろから数人に抜かされてはいるが 登りほど遅く歩いているわけではない。 息も上がり休憩を取るがそれは登りと違って殆どは足を休ませるためだけだ。 登りの時のように足の休憩もあるが息を整えるためではない。 順調に歩は進んでいる。

ふと今までにない音に気づいた。

(何の音かしら?) 耳を澄ませながら歩く。

(・・・水の音だわ。 川? 川の音? それとも滝? 違うかしら) 音は段々と大きくなってくる。

(きっと滝の音だわ) 歩のスピードを上げたいが疲れきった足は痛みが走っている。 これ以上早く歩く事ができない。
歩き進めると山を下りたようだ。 

(山を下りてきちゃったみたい・・・ああ、上ってきたときの反対側になるってこういうことだったのね) 目の前には平坦なアスファルトの道があり、その道を歩いて行くと元来た場所に戻れるという事だ。

(でも、滝はどこに・・・) アスファルトの道へ行こうとしたときに 『←空也の滝』 と書かれている板があった。 

(あった! こっち側へ行けばいいのね。 やっと滝で遊べる。 冷たい水で足も冷やしたいわ)

そして矢印のほうを見ると

(えー! また階段を上るの!?) 目の前には滝から流れてきた川沿いに石段があった。

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