大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第61回

2013年12月30日 23時35分28秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第50回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

  『みち』リンクページ



『みち』 第51回からは以下からになります。

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『みち』 ~未知~  第61回



「作りに来たのよ。 色々持ってきたけど他に食べたいものがあったらそれを作るわよ。 何か食べたいものはある?」

「ご飯って言うよりパンがいいな」

「じゃあ フレンチトーストも胃に重たそうだし・・・具が軽めのサンドイッチでいい?」

「買ってきてくれたの?」

「今から作るの。 琴音はパン全般が好きでしょ、クリームドッサリ系のパンも買ってきたけど それじゃあ今の琴音の胃には重いだろうし食パンも持ってきてたからそれで作るわ」 5枚切りの食パンを薄く切りなおして サンドイッチ用のパンにするようだ。 すると琴音が

「あ、急にお腹がすいてきた」 そうなんだよね。 どうしてか食べ物の話をするとそうなるよね。

「まるで子供ね」 器用に食パンを切り出した暦。

「子供で思い出したわ。 家の方はどうなってるの? 子供達や旦那さんは? こんな時間に家を開けて旦那さんに怒られないの?」 矢継ぎ早に聞いてきた。

「大きな声こそ出せないみたいだけど 口には筋肉痛がないみたいね」 あまりの質問の早さに暦が言った。

「そう言われればそうね・・・ってそんな事に感心したくないわよ。 料理なんてしてていいの? 時間大丈夫なの?」

「心配しなくていいわよ。 夕ご飯も作ってきたし、お風呂の準備もしてきた。 それに旦那が行ってきてあげればって言ったくらいなんだから」 さすがは主婦。

「マヨネーズとか勝手に使うわよ」 なにをするにも手際がいい。

「うん。 何でも使って。 相変わらず旦那さん優しいわね」 琴音は何度か暦の旦那と逢ったことがある。

「え? 待ってよ、どうして旦那さんがそんなこと言うの?」

「あ、そうだったわね。 説明しなきゃ、いつまでたっても琴音の頭の中にクエッションマークがつくわよね」 卵を割りながら暦が話し出した。

「今朝、実家に電話したのね。 そしたらお婆さん山菜を取りに行ってて留守だったんだけど3時ごろだったかな? お婆さんから電話があったのよ。 私としては旦那が今日から連休に入るから明日帰るってそれだけを言おうと思ってたんだけどね、お婆さんが山菜取りの帰りに偶然琴音のおばさんと会ったっていうのよ」 お婆さんと言うのは暦の母親の事だ。 暦は子供を産んでからはお母さんといわずお婆さんと呼んでいる。

「私のお母さんと会ったの? まぁ、家がそんなに遠くないんだから会う事もあるわよね」

「その時にね、おばさんが昨日の琴音の話をお婆さんに言ったわけよ」

「あー、それで」

「おばさんかなり心配してたそうよ。 だからお婆さんも見てきてあげればって言ってたんだけどね、ロボットになってましたなんて報告できないなー」 

「意地悪ね。 私だって思いもしなかったわよ」

「何を考えて 山なんかに登ったわけ?」

「なんだろう、自分でも分からないのよ。 急に登りたくなって・・・でもあんなに大変だなんて思いもしなかったのよ。 知ってたら登らなかったわ。 それでもちゃんと山頂の神社にお参りしてから帰ったのよ」

「急に登りたくねぇー ・・・え? 今、神社って言った?」 思わず具を挟んだサンドイッチを切ろうとしていた包丁を持ったまま琴音の方を振り返った。 よそ見をすると手を切るよ。

「うん。 山頂に神社があったの。 でもこれがまた上りの階段が長くて・・・」 ここまで言うと 呆気にとられていた暦が

「琴音が神社に行ったの? それもお参り? 信じられない」 暦も琴音の社寺仏閣嫌いをよく知っている。

「そう言えば 暦にはまだ話してなかったわよね。 乙訓寺のこと」

「お寺?」

「うん お寺」

「何なのよ 琴音どうしちゃったわけ?」 向き直りサンドイッチを切る続きを始めた。 琴音が乙訓寺であったことを暦に話しだした。 その途中にサンドイッチが出来上がり 温かいミルクと一緒に暦が琴音の座っている和室の机に置いた。

「今の琴音の胃にはコーヒーは良くないからね」 さすがは主婦、家族の健康をいつも考えているだけあって 缶コーヒーをがぶ飲みした琴音とはエライ違いだ。

「うん、ミルクでいい。 サンドイッチ美味しそう。 いただきまーす」 

「からしもバターも使ってなくて味も薄くしてあるけど、どう? それでいい?」 琴音の胃を気遣っての事、主婦の鏡だね。

「うん、美味しいわ」

「よく噛むのよ」

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