散 歩 B L O G

歩くことが唯一の趣味ですから。

松山ふたたび

2023-09-17 | Weblog

時間が余ったので松山を少し観光した。いつだったか四国を香川→徳島→高知→愛媛と巡ったとき最後に泊まったのが松山だった。自然豊かなところを経て市街地にきたせいか煌びやかに見えた。九州の博多、北海道の札幌に匹敵する四国の松山として、珠玉のように感じた。

それから十数年のあいだ日本全国津々浦々をいよいよ不況が襲ったせいか、それとも今回は東京から直行直帰したせいか、再訪した松山はどこか寂しさを感じる地方都市のひとつで、大街道なども往年のギラギラした雰囲気を失い果て、どちらかといえばシャッター街に近づいた印象。

急いで帰りたい。しかし時間が余ってる。そこで前回まだ松山になかった、坂の上の雲ミュージアムにきてみた。平成19年に誕生したということは、おそらく前回の松山にまだなかったはず。司馬遼太郎の『坂の上の雲』は昭和の終わりに読んだから前回あれば存在ぐらいは意識したと思われる。

三角形の狭小地に合わせた三角形のビル内部が三角形の螺旋スロープになっていて、大回りにぐるぐる歩かされる割にあまり展示物が目を引かず、三角形の一片にあたる窓から見える萬翠荘の眺めがいいことが取り柄だった。旧松山藩藩主の子孫の久松某伯爵が大正11年(1922年)に別邸として建てた館。

それ以前に明治の文豪、夏目漱石が松山中学に英語教師として赴任したとき下宿した小料理屋の愛松亭(あいしょうてい)が、萬翠荘の傍に復元されて「漱石珈琲店」として営業中だという。ちょうどコーヒーが飲みたくなったところなので、坂の上の雲ミュージアムのカフェではなくそっちで憩うことにした。

「小生下宿は眺望絶佳の別天地」と漱石が子規に手紙でかつて自慢したと、漱石珈琲店がいま自慢している。後に旧藩主の子孫が自慢げにフランス風洋館を建てるほどの場所だから眺望はいい。というより、この上に松山城があり、中腹に漱石の下宿とか子孫の洋館があるわけで、坂の上の雲ミュージアムはそのまた端っこ。

マドンナ珈琲と称するブレンドコーヒーをブラックでいただく。すごくおいしいのかと期待したら、それほどでもなかった。思えば漱石の『坊ちゃん』に出てくるマドンナは俗物の典型みたいなところがあり、あまりイメージがよくない。うらなりと交際してたのに赤シャツと結婚するような不確かなお嬢さん。

漱石は『吾輩は猫である』の作家でもあり、ここに下宿していた当時はまだ英語教師のはしくれで『猫』は1行たりとも執筆してないはずだけど、店にはこれ見よがしに猫の置き物があった。よくできた置き物だから、剥製かなと思ってよく見たら、目玉が動くし息をしている。生きた本物の猫だった。

萬翠荘に寄るつもりはなかったんだけど、せっかくすぐそばまで登ってきたんだし、ついでに中を見物していく。101年前の洋館……こういうところにはコスプレイヤーが大勢あつまって耽美なポートレイト撮影をしているのではないかと懸念されたが、そんなことはなかった。

『バスカヴィル家の犬』という2022年公開の映画(見てない)のロケ地になったと自慢してあった。シャーロック・ホームズはイギリスで活躍した私立探偵なのだからフランス風の洋館じゃ何かとマズいのではないかと思ったけど、この映画はおそらく原作通りではないから洋館ならフランス風でもよかったんだろう。

天皇家っぽい人の肖像画が2点、父子のような感じで飾ってあるから、昭和と平成の天皇かなと思ったらそうではなく、皇太子だったころの昭和天皇と即位してかなり後の昭和天皇だった。ということは大正と昭和にこの館へ立ち寄ったに違いない。ちなみに左が皇太子時代で、右が天皇に即位した後の肖像。

もう帰ろうかと思ったが、時間があるので松山城下を何百mか回り込み、お山の上の松山城へと敷設されたロープウェイ乗り場まで歩く。この日も9月とはいえ残暑が厳しく、蒸し暑い猛暑日だった。萬翠荘からロープウェイ乗り場まで歩いただけでも、頭がだんだんボーッとしてくる。

ロープウェイでアクセスできる城というのも珍しい。おまけにリフトまである。どっちに乗ってもいいのだが、リフトのほうが1人でのんびりできるからリフトにした。歩いて登ることも可能なんだけど、そんなことしたら熱中症で倒れてしまう。しかし強者がタオルを頭に巻いて本丸まで駆け上がり、駆け降りるのを見た。

松山城は日本に12しかない現存天守閣(できた当時のまま失われていない天守閣)の1つ。たしか現存天守閣は12か所すべて訪ねたことがあり、松山城は2度目だ。標高200mかそこらなので、せいぜい1℃くらいしか松山市街と気温が変わらないはずなのに、風の通りがいいせいか少し涼しく感じる。たわいない観光これで終了。

関連記事:  うどん県

Comment    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 石鎚山炎上 | TOP | 白樺湖から車山をへて霧ヶ峰へ »
最新の画像もっと見る

post a comment

Recent Entries | Weblog