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歩くことが唯一の趣味ですから。

白樺湖から車山をへて霧ヶ峰へ

2023-09-22 | Weblog

1日に数本のバスで茅野から上がってくると、白樺湖でアナウンスが流れた。標高約1400m、1周約4kmの人造湖だという……人造湖? そうだったのか。下車して畔を歩いてみる。遊歩道(というよりランニングコース)が敷いてあり、1時間とかからず散策できる。ボートで釣りをしてる人や、木陰にイスを置いてお茶など沸かして飲んでいる人がいて、のどかなものだ。

白樺湖は農業用の溜池として1940年、戦時中に着工した。敗戦が近い1944年、資金難を理由に工事が中断され、戦後の1946年に再開、数年かけて人造湖ができた当時は「蓼科大池」と名づけられたが住民に不評で、1953年に白樺湖と改称。そのころから観光開発が行われ、1980年代に観光のピークを迎えたが、1991年から観光客が減り続けて30年あまり。

湖畔を歩くとバブルの残骸が至るところで野ざらしになり、日本の発展と衰退を手に取るように見物できるテーマパークのよう。向こうに車山が見える。肉眼だと山頂に気象観測台が確認できて、それとわかる。タイミングが合えば茅野からくる1日数本のバスに乗って10分ほどで車山高原に到着し、そこからリフトで山頂まで上がれる。湖畔からリフトまで歩いても1時間かそこら。

1925mの山頂に上がると、気象観測台に寄り添うように車山神社が鎮座している。四隅におっ立つ御柱は、ふもとの諏訪大社の影響だろう。諏訪の神社や祠には御柱がつきものだ。諏訪湖の花火の会場にも御柱がおっ立つ。男性の陽物をかたどる石棒もあちこちにおっ立つ。長野の人は……少なくとも諏訪湖のあたりの人は、棒状のものをおっ立てるのが好きなんだな。

山頂からは八ヶ岳の連峰が望める。反対側に目を向けると、霧ヶ峰に至る高原の小径が続く。写真では分かりにくいが肉眼ならば一目瞭然。ここから先は、上り道もあるが基本的には霧ヶ峰まで下りだから割合に楽な気分で歩き通せる。日本の四季は失われ、5月から9月まで真夏日・猛暑日のオンパレードだから、今年は霧ヶ峰に2回もきたし、来年以降も手軽な山歩きにくるだろう。

車山から下りてくる途中にある湿原がまた、高山植物が豊かで歩きがいのあるところだ。白樺湖も人造湖になる前は湿原だったそうだから、こういう感じだったんだろうか。観光目的なら湿原のままのほうが案外よかったかもしれないが、戦前の人たちにその発想はなかった。農業用の溜池を作るので精一杯だった。湖畔が観光開発された後も、用水は農業に使われてるという。

蓼科湖もほぼ同じころ農業用の溜池として設けられた人造湖だというから湿原だったのかもしれない。蓼科湖と白樺湖の水は茅野や諏訪などふもとの田んぼで米作りの役に立っているそうだが、水量の確保というよりも、溜池でいったん温めることで冷水の害からイネを守るのが目的らしい。人造湖ができる前は、雪解け水が冷たすぎて、田んぼのイネが生育せずに人が飢えがちだったとか。

霧ヶ峰まで下りてくると、あとは路線バスが1日に何本か、上諏訪まで送り届けてくれるのでソフトクリームを食べるもよし、うどんかそばでも啜るもよし、時間調整にそこらへんを歩き回るもよし。上諏訪と霧ヶ峰を結ぶバスは先ほどの湿原や車山高原のリフト乗り場まで延びているから、茅野ではなく上諏訪を起点にしてもこの界隈は散策することができる。

霧ヶ峰ではグライダーの離陸を間近に見物できる。どうやら自動車で引っ張って凧のように宙に上げたあと、凧糸がわりのケーブルをグライダー側でリリースして気流を生かし飛ぶようだ。切り離されたケーブルがパラシュートで降りてくるのが、のどかでなかなかいい。あのグライダー、観光用に営業してるのかと思えばそうではなく、クラブの会員にならないと乗ることができない。なんだそうか。

 

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