電脳筆写『 心超臨界 』

自分の人生を変えられるのは自分だけ
代わりにできる人など誰もいない
( キャロル・バーネット )

山の神さん、川や海の神さんが、赤須賀にちょっとごほうびをくれたんやね――秋田清音さん

2009-10-07 | 03-自己・信念・努力
【 このブログはメルマガ「こころは超臨界」の資料編として機能しています 】

「人間発見」
赤須賀漁業協同組合組合長・秋田清音(あきたすずね)さん

 甦る海、ハマグリ復活 (1)
 甦る海、ハマグリ復活 (2)
 甦る海、ハマグリ復活 (3)
 甦る海、ハマグリ復活 (4)
 甦る海、ハマグリ復活 (5)


甦る海、ハマグリ復活 (1)
【「人間発見」09.10.05日経新聞(夕刊)】

桑名の名産を絶やすまいと1970年代から取り組み
  年1㌧まで激減した水揚げ、やっと目標超える
    豊かさ・営みを次世代にどう伝えるか

◆中原中也の「桑名の駅」という詩に、駅長に焼きハマグリの桑名
とはここか、と尋ねる一節がある。その桑名駅から東に約2㌔。揖
斐川河口に面した赤須賀漁業協同組合を率いる秋田清音組合長(68)
は、1970年代半ばからハマグリの種苗生産と栽培、干潟再生に
取り組んできた。消滅の危機にあった。ハマグリ漁を甦(よみがえ)
らせ、新たな地域漁業の復活を目指している。

赤須賀の漁業は約450年の歴史があるんです。戦国時代に三河からやってきた武士たちが、ここで漁師を始めたといわれ、その子孫がいまも漁業をしています。

伊勢湾は実に豊かな海で、私の小さいころは様々な漁がありました。中でもこの木曽、長良、揖斐川の河口一帯は、ハマグリ、アサリ、シジミ、ノリ、シラウオ漁が盛んでした。しかし、60年代以降、干拓や治水工事、コンビナート建設や公害などで、湾岸の漁業は急速に衰退していきます。

貝はかつては「船が沈む」ほど獲(と)れたのですが、特産のハマグリは70年代後半から急減。赤須賀で最盛時に年3千㌧あった水揚げは、95年には1㌧弱に落ち込みます。70年代半ばから、生き残りを賭けてハマグリのふ化・放流、栽培、そして干潟再生に取り組み始めました。

ハマグリは2008年、目標だった100㌧を超え、今年は140㌧程度です。昔、年寄りたちに、「ハマグリをなくすようなことはするなよ」と言われましたが、なんとか約束は守れたかもしれません。

◆港から南に約5㌔。揖斐川河口の東西に2つの人口干潟が広がる。
この日はハマグリ、アサリ漁のほか、ノリ養殖の準備、イワシやボ
ラを獲る船が出ている。

この辺りの水深は2、3㍍、干潮時には1㍍以下になります。干潟、漁場は順調に形成、回復しています。干潟は完成して約15年、1つが約20㌶ですが、いまは30㌶ほどになっています。春の大潮の時などは干上がって、大きな砂浜が出現します。子供たちを連れてくると大喜びです。

自然の干潟に比べ、遜色(そんしょく)ないかと思います。一般的には絶滅危惧種といわれる生物も生息、15年前はこの辺りでは獲れなかった貝もいます。

ハマグリでいえば、ここで育った稚貝が一帯の海に広がり、密度も昭和40年代くらいの状態です。これから稚貝放流の時期ですが、もう自然環境のなかで再生産できるほどです。いまハマグリは1人1日20㌔、アサリは170㌔に制限しています。私の同級生もまだ5人が現役で漁に出ています。

◆衰退が続く日本の漁業だが、赤須賀ではまだ100軒以上が専業
で漁をしている。それでも高齢化は進み、後継者問題も抱えている。

確かに干潟が再生、ハマグリが再び獲れ、それなりの収入も確保できるようになりました。来春には観光などの拠点となる施設もできる。でもそれで終わりではない。あくまで、生きとし生きるものが棲(す)み続けられる生態系を回復することで、ここまでたどりついたんです。

この豊かさ、営みを次の世代にどう伝え、後継者対策などにどう生かせるか。口はばったいようやけど、「漁業・漁村が持つ社会的使命」のようなことを考えなくては。例えば一般の人と一緒に浜や沿岸の海を大事にする取り組みをするとか。我々の意識改革もまだまだ必要です。

赤須賀の歴史を見ると、先人たちはその時々の最善を目指して四苦八苦してきた。そして、ジイさん、バアさんたちは毎朝、海に恵みをもたらす山に向って手を合わせ、よく「メシを食う以上に魚を獲るな」と言っていました。

私もベストに向け挑戦してきたつもりですが、足らんことがいっぱいです。ただ、なんとか1つの事が成就したというのは、人間としてありがたいこと。応援団もたくさんあって、人に助けられた。人のご縁やね。それと山の神さん、川や海の神さんが、赤須賀にちょっとごほうびをくれたんやね。

(聞き手は解説委員・山形健介)

【 これらの記事を発想の起点にしてメルマガを発行しています 】
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アルバロファサウルスは鳥脚... | トップ | 「スープも飲めるし、ツルツ... »
最新の画像もっと見る

03-自己・信念・努力」カテゴリの最新記事