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「人間発見」
りそなホールディングス会長・細谷英二さん
他流試合で勝つ (1)
他流試合で勝つ (2)
他流試合で勝つ (3)
他流試合で勝つ (4)
他流試合で勝つ (5)
他流試合で勝つ (5)
【「人間発見」09.09.04日経新聞(夕刊)】
1兆7000億円超す赤字計上、一気に不良債権処理
社員と直接対話重ね、仕事の自信取り戻させる
公的資金返済のメドつけたら次の世代に交代
◆りそなホールディングス(HD)の会長となり、外部の
「応援団」から助言を受けながら経営再建に取り組んでき
たが、就任前には知らされていない事実もあった。
りそなグループが抱える不良債権は公表されている数字よりはるかに多いはずだと忠告を受けました。就任前にりそな銀行の幹部らには「とにかく正直にグループが抱えているリスクを明らかにしてくれ」と指示すると同時に、資産内容の厳格な洗い直しを監査法人に依頼しました。金融庁は銀行への検査を終えていたので、本音では反対であるといううわさが伝わってきました。でも、ここで妥協したら経営再建はできないと腹をくくり、押し切りました。
就任直後に予期しなかった難題にぶつかりました。グループの地方銀行、近畿大阪銀行の資産内容が悪く経営支援が必要だったのです。驚きでした。社外取締役の一部からは「事前に知らされていないことなら経営破綻を検討すればよい」といった過激な意見も出ましたが、りそなHDによる増資引き受けを決断しました。近畿大阪銀行への増資分も含め、2003年9月中間決算では1兆7700億円の巨額赤字を計上し、不良債権を一気に処理する方針を決定したのです。
バランスシートの改革以上に意を注いだのは「心の改革」です。銀行界で当たり前の頭取、行員という呼び方を社長、社員に改め、お互いに肩書でなく「さん」づけで呼び合うようにしました。そして、自信を失った社員に「普通の会社になろう」「サービス業としての自覚を持とう」と呼びかけました。内部の論理が先行しがちな従来の発想や仕事のやり方を変える気持ちになってほしかったのです。ボーナス返上を含めて報酬の3割カットと激しい環境に置かれた社員の意識を前向きにするのは大変でしたが、社員との直接対話を重ね、みんなで創意工夫をしようと繰り返すうちに少しずつ雰囲気が明るくなってきました。社員の間にもこのままではいけないという問題意識はあった。実現する手だてがなかっただけなのです。
1年ぐらいすると、これまで遠い存在だったトップとは異なり、直接、話ができるとわかってくれました。金融庁と激論を交わす私の姿勢を見て、ある支店長は「最初は金融庁の回し者だと思っていたが、違うんですね」と語りかけてきました。不良債権の処理、赤字に陥った関連会社の清算、店舗での待ち時間ゼロ運動、営業時間の延長、帳票の大幅な削減など様々な計画に取り組むうちに顧客からの評判も高まりました。
就任2年目の夏に社員の家族を招き本店の見学会を開きました。自信を取り戻した社員や明るい表情の家族の皆さんの姿を見ると大いに勇気づけられます。03年の後半から景気が本格的に回復軌道に乗り、再生への追い風となりました。JR誕生のときもそうでしたが、必死で努力を続けていると運も味方してくれるのでしょう。
◆05年3月期に黒字転換を果たし、収益構造は大幅に
改善したが、公的資金の返済はなお途上にある。
返済は最大の課題です。メガバンクでもなく地銀でもない独自の銀行グループとして存在感が高まり、成長シナリオを示し続けることができれば返済原資となる剰余金を積み立てられるし、国が保有する普通株の市場売却も可能になるでしょう。公的資金の資本注入を機にりそなトップに就任した以上、私には返済の進展を見届ける義務があります。今後2~3年でヤマ場を迎えると思います。そこを乗り越えたら次の世代にバトンタッチするつもりです。
その後は名声とか権力とかお金などから一線を画し、人を育てる仕事をしたいですね。人材育成で大切なのは自己啓発のきっかけづくりです。私は日本の会社員の中では修羅場の経験が多い方だと思いますが。意図して修羅場を歩むのは難しいでしょう。修羅場の体験談を伝え、若い人たちの成長を手助けするつもりです。
=おわり
(聞き手は解説委員・前田裕之)
【 これらの記事を発想の起点にしてメルマガを発行しています 】
「人間発見」
りそなホールディングス会長・細谷英二さん
他流試合で勝つ (1)
他流試合で勝つ (2)
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他流試合で勝つ (5)
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【「人間発見」09.09.04日経新聞(夕刊)】
1兆7000億円超す赤字計上、一気に不良債権処理
社員と直接対話重ね、仕事の自信取り戻させる
公的資金返済のメドつけたら次の世代に交代
◆りそなホールディングス(HD)の会長となり、外部の
「応援団」から助言を受けながら経営再建に取り組んでき
たが、就任前には知らされていない事実もあった。
りそなグループが抱える不良債権は公表されている数字よりはるかに多いはずだと忠告を受けました。就任前にりそな銀行の幹部らには「とにかく正直にグループが抱えているリスクを明らかにしてくれ」と指示すると同時に、資産内容の厳格な洗い直しを監査法人に依頼しました。金融庁は銀行への検査を終えていたので、本音では反対であるといううわさが伝わってきました。でも、ここで妥協したら経営再建はできないと腹をくくり、押し切りました。
就任直後に予期しなかった難題にぶつかりました。グループの地方銀行、近畿大阪銀行の資産内容が悪く経営支援が必要だったのです。驚きでした。社外取締役の一部からは「事前に知らされていないことなら経営破綻を検討すればよい」といった過激な意見も出ましたが、りそなHDによる増資引き受けを決断しました。近畿大阪銀行への増資分も含め、2003年9月中間決算では1兆7700億円の巨額赤字を計上し、不良債権を一気に処理する方針を決定したのです。
バランスシートの改革以上に意を注いだのは「心の改革」です。銀行界で当たり前の頭取、行員という呼び方を社長、社員に改め、お互いに肩書でなく「さん」づけで呼び合うようにしました。そして、自信を失った社員に「普通の会社になろう」「サービス業としての自覚を持とう」と呼びかけました。内部の論理が先行しがちな従来の発想や仕事のやり方を変える気持ちになってほしかったのです。ボーナス返上を含めて報酬の3割カットと激しい環境に置かれた社員の意識を前向きにするのは大変でしたが、社員との直接対話を重ね、みんなで創意工夫をしようと繰り返すうちに少しずつ雰囲気が明るくなってきました。社員の間にもこのままではいけないという問題意識はあった。実現する手だてがなかっただけなのです。
1年ぐらいすると、これまで遠い存在だったトップとは異なり、直接、話ができるとわかってくれました。金融庁と激論を交わす私の姿勢を見て、ある支店長は「最初は金融庁の回し者だと思っていたが、違うんですね」と語りかけてきました。不良債権の処理、赤字に陥った関連会社の清算、店舗での待ち時間ゼロ運動、営業時間の延長、帳票の大幅な削減など様々な計画に取り組むうちに顧客からの評判も高まりました。
就任2年目の夏に社員の家族を招き本店の見学会を開きました。自信を取り戻した社員や明るい表情の家族の皆さんの姿を見ると大いに勇気づけられます。03年の後半から景気が本格的に回復軌道に乗り、再生への追い風となりました。JR誕生のときもそうでしたが、必死で努力を続けていると運も味方してくれるのでしょう。
◆05年3月期に黒字転換を果たし、収益構造は大幅に
改善したが、公的資金の返済はなお途上にある。
返済は最大の課題です。メガバンクでもなく地銀でもない独自の銀行グループとして存在感が高まり、成長シナリオを示し続けることができれば返済原資となる剰余金を積み立てられるし、国が保有する普通株の市場売却も可能になるでしょう。公的資金の資本注入を機にりそなトップに就任した以上、私には返済の進展を見届ける義務があります。今後2~3年でヤマ場を迎えると思います。そこを乗り越えたら次の世代にバトンタッチするつもりです。
その後は名声とか権力とかお金などから一線を画し、人を育てる仕事をしたいですね。人材育成で大切なのは自己啓発のきっかけづくりです。私は日本の会社員の中では修羅場の経験が多い方だと思いますが。意図して修羅場を歩むのは難しいでしょう。修羅場の体験談を伝え、若い人たちの成長を手助けするつもりです。
=おわり
(聞き手は解説委員・前田裕之)
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