仕事は苦役ではなく道楽になる――本多清六

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経済が安定すると、仕事は苦役ではなく道楽になる。仕事をすることが純粋な喜びになり、その仕事がさらに収入をもたらしてくれる。その結果、生活はさらに安定し、ますます仕事が愉しくなっていく――まさしく仕事と経済の良循環が起こるというわけである。


◆仕事は苦役ではなく道楽になる

『財運はこうしてつかめ』
（ 渡部昇一、致知出版社 (2000/3/1)、p30 ）

経済が安定すると、仕事は苦役ではなく道楽になる。仕事をすることが純粋な喜びになり、その仕事がさらに収入をもたらしてくれる。その結果、生活はさらに安定し、ますます仕事が愉しくなっていく――まさしく仕事と経済の良循環が起こるというわけである。

（本多清六）博士が４分の１貯金とともに、若いころからずっと実行してこられたことに、毎日１ページ分以上の原稿を書くというものがある。３２字詰め１４行で１ページというから、およそ４５０字。しかも単なる日記ではなく「著述原稿として印刷価値のあるもの」を毎日書くというのである。博士はこれを自分の「行（ぎょう）」であると考え、とりあえずは２５年間、つまり５０歳になるまで続けようと決めた。そして、それをとうとう完遂してしまった。

１日１ページといっても、いろいろな実務もあり、また林学者としてのフィールド・ワークもある。また博士は日本一の旅行家なので、そうしたときには当然、原稿は書けない。だが、１週間分原稿執筆をしなければ、その後の１週間にはかならず１日２ページ以上を書いて、遅れを取り返した。年末に仕事が立て込んで、原稿が思うように書けなければ元日から学校にでて、１０枚、２０枚と書いた。

だが、こうした「行」も最初はつらいが、慣れてくると苦ではなくなるし、かえって面白くなってきた。旅行に行くときなどは、前もってその分の原稿を書くという習慣さえできた。まさに「職業の道楽化」である。

いや、それどころではない。博士は４２歳のときには腸チフスになり、３８日間も入院した。このとき退院の翌日から１日３ページずつ書いたところ、いつしかこれが習慣になり、１日３ページ、つまり１年間千ページを書くことになった。それは８０歳を過ぎても続いていると記しておられる。博士が生涯で３７０冊以上の本を書けたというのも、原稿を書くという作業を自分にとっての娯楽に変えてしまったからに他ならない。