80年代Cafe

80年代を中心に、70年代後半~90年代位の懐かしいもの置いてます。
あなたにとって80年代はどんな時代でしたか。

バタアシ金魚・ビクターJVC/講談社

2015-07-27 18:08:25 | 映画・DVD・CD

 バタアシ金魚は、80年代後半にヤングマガジン誌に連載されていた望月峯太郎原作の同名の漫画を原作とする、1990年に公開された青春映画。監督は、トイレの花子さん、東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜、深夜食堂などの松岡錠司監督。


 2001年にウォーターボーイズが登場するまでは、プールや水泳部を主題とした夏を題材とする青春映画の筆頭だったといってよい一本。以前一度紹介していますが、DVD版を入手したので、夏に見たいお約束映画として再度紹介。物語は、高校の水泳部が舞台。主人公カオル(筒井道隆)は水泳部のソノコ(高岡早紀)に一目ぼれをする。そこで彼女の気を惹くために水泳部に入部する。思い込みの激しいカオルは、断られてもめげず、ソノコを追いかけていくが…。


 70年代には、巨人の星やあしたのジョー、エースをねらえ、ドカベンなどスポーツ根性漫画がブームとなりましたが、80年代に入ると時代の変化とともにうる星やつら、タッチなどのラブコメ全盛期になります。スポーツ漫画も、根性で勝つことを目的としたものから、タッチ、ラフ、キャプテン翼、スラムダンクなどのように、恋愛、友情まで含めて学園生活の全般を描くスマートなものになっていきます。ブームとなったタッチの終了と前後して、85年に連載を開始したバタアシ金魚の時代ともなると、もう一ひねりあってラブコメといっても単純な恋愛ものではないし、スポーツを題材にしているといっても単純に勝利を目的としたものでもないといった具合に変化していきます。


 原作の方は、ほとんど忘れているのため、どれくらい原作のエピソードが再現されているかわかりませんが、映画のほうも原作を反映してか、水泳競技の場面は出てくるのだけれども、特にそれに執着するわけではなく、恋愛ものといっても(今だったらストーカー扱いされそうな)カオルがソノコに一方的に付きまとう展開になっており、しかも情熱的にソノコを追いかけつつも、カオルにはプーという彼女がいたりするなど、この時代らしくちょっとひねった物語になっている。対するソノコの側も嫌がりつつもライバルの永井(東幹久)を当て馬にしたり、過食症のようにドカ食いをしてストレス激太りをしたりと、単なるアイドル映画としては片付けられない、ある種のリアルさを持っています。このような流れの中で、カメラはこの年代特有の微妙な心の動きと駆け引きを丹念になぞっていきます。


 当時の書籍の映画評に青の映画という評価がありましたが、とにかく空の青、水の青、プールの青と、青が作品世界を表現するキーワードになっているかのよう。ちょっとシュールなくらいに、常に自信満々で自意識過剰なくせに口ばかりの主人公を描いており、誰しも経験のある思い通りにはならない青春の不条理を描いた作品でもあるのですが、この不条理で不合理なストーリ展開がラスト前のプール内での格闘シーンへと繋がり、それぞれの想いは吐き出され表現されて、そこにラストシーンのカタルシスが生まれている。


 今では中堅俳優となった筒井道隆さんのデビュー作。この後、あすなろ白書などトレンディ俳優として人気を博した。他にも浅野忠信さんのデビュー作でもあり、若き日のかわいらしい浅野氏の姿が見れる。また、売れる前の若き日の東幹久さんも出演している。


 原作のソノコは、スリムに描かれているためイメージとしては少し異なる高岡早紀さん。ミスマガジンということで、ヤングマガジン繋がりで選ばれたよう。ビクターJVCのCMなどにも登場していた。とはいっても、この映画の魅力は8割方この人にあると言ってよい。


 こちらは、当時もののVHS版。だいたい同年代で、当時リアルタイムにこの作品を見たけれど、その時には随分と共感できた。さすがに、今となっては共感しづらいわからない部分も増えたのだが、今回再視聴して感じたのは、バイクで疾走するシーンなど時代の空気感がよく出ているということ。この頃はバイクブームだったので、原作にもバイクは登場しており、高校生などがバイクに憧れたり、バイクの話題で盛り上がることも普通だった。また、(カオルや永井など主人公周辺は異なるが)学生服などのシルエットもこの時代らしく、ちょっと太めのものが見られる。それから、空や夏の雲、プールの水面、虹、新興住宅地の風景、都市モノレールなど、印象的な映像が多い。松岡監督のインタビューを読んでいたら、これはハッとした瞬間を見つけたら、その場ですぐに撮影をするという手法によって撮られており、監督が来る前にカメラマンが勝手に風景を撮っていたものもあるのだとか。そのようにして、時代の空気(瞬間)を切り取ったものが収められ、封じ込められている。


 アマゾンや映画サイトでの評価は、星★★★★くらい。日本アカデミー賞、ブルーリボン賞、報知映画賞を受賞しており、邦画の青春映画としては、単純にアイドル映画として以上の評価がなされている作品だと思います。ウォーターボーイズは未視聴のためわかりませんが、個人的には、未だに夏の映画のベスト。80年代には、角川映画全盛期ということもあって翔んだカップル、セーラー服と機関銃、時をかける少女、転校生、さびしんぼう、アイコ十六歳、台風クラブ、家族ゲーム、パンツの穴など、名作といわれる青春映画がたくさん作られましたが、個人的にはこれが一番の夏の映画だと思います。


 ということで、夏の一瞬を切り取って封じ込めたような作品、バタアシ金魚でした。



参考:Wiki バタアシ金魚、松岡錠司さん、筒井道隆さん、浅野忠信さんの項、シネマジャーナル 松岡監督監督インタビュー

さんだる/たま・日本クラウン

2015-07-15 17:31:56 | 映画・DVD・CD

 さんだるは、1990年に日本クラウン(クラウンレコード)より発売された、たまのメジャーファーストアルバム。たまは、90年代に活躍した日本のバンド。


 たまは、4人組編成の日本のロックバンドで、フォークや童謡などを織り交ぜた幻想的な世界観を持ったバンド。テレビに出る前から、インディーズではすでにメジャーな存在になっており、89年に話題となった平成名物テレビ・三宅裕司のいかすバンド天国に出演したことをきっかけにして、メジャーデビューを果たした。スタイルは、ちゃんちゃんこに下駄履きでウクレレやマンダリンを弾き、ランニングシャツ姿で風呂桶などを叩くといった、当時一般的だったロックバンドからは一線を画した、あまり一般受けはしない個性的なものだった。デビュー曲のさよなら人類が、オリコン初登場1位、同年のオリコン年間シングルチャートでは4位を記録するヒットとなり、累計売上約60万枚を売り上げ、CMへの出演や日本レコード大賞新人賞、紅白歌合戦出場も果たす。92年頃からはバンドブームも下火になり、95年にボーカルやピアノなどを担当してきた柳原幼一郎氏が脱退、ちびまるこちゃんのエンディング曲を手がけたり、NHKみんなの歌に楽曲を提供したりと、その後も3人で活動を続けていたが2003年に解散した


 さんだるは、そのたまの(メジャー)ファーストアルバム。オリコンチャートでは、最高2位、年間アルバムチャートで35位を記録した。たまは、インディーズ自体も含め、何枚もアルバムを出しているのですが、やはり一般的に有名なのは、最も売れたこれでしょう。大ヒットとなったさよなら人類/カップリング曲のらんちゅう、CM曲としても使われたオゾンのダンス、方向音痴、イカ天の4週目で披露されたロシヤのパンなど有名どころが並んで収録されている。個性的なたまらしく、装丁も紙製のボックスジャケットと個性的なもの。表紙の昆虫のイラストは、ギターやボーカル担当の知久寿焼氏によるもの。


 ジャケット裏。売れまくっていた頃なので、すっかりアイドル。


 白黒のポートレートが付いており、裏が歌詞カードになっている。さよなら人類やオゾンのダンスなど、明るいポップな曲調のものが多かった柳原幼一郎氏、たまのランニングとして有名な石川浩司氏とトレードマークの風呂桶パーカッションセット、知久寿焼氏は今見ると美少年でまるでアイドルの様、たまの寡黙な2枚目担当で、所属事務所たま企画室の社長も勤めた滝本晃司氏。


 当時の思い出としては、イカ天初登場時に前知識も何もなく視聴していた。第1週目はシュールならんちゅうで、この頃のイカ天に数多くいたコミックバンドとしか認識しなかった。第2週目のさよなら人類で凄いバンドだと気付き、3週目オゾンのダンスで気に入ったバンドとなり、4週目ロシヤのパンのノスタルジックな世界観のとりことなり、5週目のまちあわせでマルコシアスバンプとの接戦に見入った。イカ天初登場時は、最初は変な人たち扱いであったが、週が進むに連れ審査員の評価も変わっていった。実際は、テレビ登場以前からすでにインディーズでは有名だったたまが、番組サイドから請われる形で出演したもので、その実力も最初から他の素人バンドとは比較にならないものだった。著名なルポライターの竹中労氏は、彼らをビートルズの再来とまで評価し、(癌に侵された)晩年の仕事としてたまの本を書いた。4人ともビートルズ好きは共通しており、この時期柳原氏が宮沢賢治の世界に傾倒していたそうで、あのシュールで独特なノスタルジー感溢れる音楽の源泉の一端がその辺りから来ていたのだと、最近になって知った。


 たまがメジャーデビューをしてブームとなってからの狂乱の日々は、たまのランニングこと石川氏の自叙伝「たま」という船に乗っていたで知ることが出来る。石川氏のHPでは、出版社の許諾を得て、この本を公開しているため無料で読むことが出来る。それにしても石川氏、現在では大林宣彦監督のこの空の花 -長岡花火物語に(放浪の画家)山下清役で出演されていたり、その縁で次作の野のなななのかの楽曲を担当(パスカルズとして)されていたり、パスカルズの一員として知久寿焼氏とともに海外公演をされていたり、西荻窪でニヒル牛というアートギャラリーを運営されていたりと、様々な活躍をされています(コレクターとしての顔もお持ち)。当時は、たまのランニングとかコミカルなイメージが強かったですが、実に多彩な才能の持ち主だったんですね。

参考:Wiki たま(バンド)、さんだる、柳原幼一郎、知久寿焼、石川浩司、滝本晃司、竹中労の項、石川浩司のひとりでアッハッハー

ピカデリーサーカス貯金箱・コナミデジタルエンタテインメント

2015-07-07 10:42:17 | 玩具・雑貨

 これは、2007年にコナミデジタルエンタテインメントより発売された、ピカデリーサーカス貯金箱。70年代にコナミ工業が製造して、レジャック株式会社が販売した、全国の駄菓子屋やデパートなどに置いてあったメダルゲームを貯金箱として復刻したもの。


 ピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)とは、イギリスのロンドンにある広場の名前のようです。劇場やネオンサインなど、観光やエンターテインメント施設で有名なところで、その華やかなイメージからとられたネーミングなのでしょうか。コナミの前身であるコナミ工業(販売は系列のレジャック株式会社)から、1976年に発売されました。ゲーム内容は、コイン(10円玉)を投入して、好きな数字にBETしスタートボタンを押すとルーレットが回って、当たりに応じてコインや景品が払い戻されるというおなじみのもの。駄菓子屋やデパートの屋上などに置いてあった10円ルーレットの代表格と言えるものでした。その懐かしいゲームが、コナミ自らの手によって貯金箱として甦った。


 パッケージ裏面。


 貯金箱なので、500円玉で最大10万円まで貯金が可能と書かれている。


 箱の側面には、元ネタとなったピカデリーサーカスの解説もしてある。


 当たりの払い出しは、硬貨と景品の選択ができる。


 取り扱い説明書。付属品は、これと盤面に貼るシールが付いている。


 こちらが本体。結構、大きくて本格的。元ネタとなったピカデリーサーカスのイメージをうまく再現している。模型ではないので、硬貨投入口や景品の払い出し口など、細部は異なる。部屋のディスプレイとしても見栄えがする。


 2007年発売当時の実売価格は、3,000円台でした。当時のエレメカのディティールを再現し、なおかつそのギミックまで再現された、これほど凝ったものが、この価格で買えたというのはなかなか凄いこと。数あるギミック付き貯金箱の中でも、突出した出来の良さではないでしょうか。今現在だと、アマゾンで1万円前後、オークションだと5~6,000円程度の相場で落札されている。販売当時は、クリアランスで1,000円くらいで売られてたりもしましたので、数は相当数出ていると思われます。


 背面に仕切り版を入れることによって、当たりの払い出しをお金かお菓子などの景品かの選択ができる。


 景品の投入口。飴とかキャンデーとかを入れられる。


 単三電池3本で動く。


 お金の投入口は上面に付いている。コインのセレクト機能はなく、サイズが合えばどのコインでもいける。投入口に白く見えるものが、コインの投入を感知するセンサー。これが、コインをBETする機構のスイッチになっている。


 コインを投入し、どの目に光のルーレットが止まるか予想し賭けていく。


 当たると一度に払い戻されるため、当たった枚数だけ払い戻すという複雑な機能は付いていない。よって、この辺りは雰囲気の再現ためのもの。それぞれ押した数だけランプが点滅するようになっているというだけでも凄い。


 入れた枚数分のBETが終了すると、ルーレットが回りだす。ちなみにルーレットが回るサウンドも、それらしいものが再現されている。


 ルーレットの目がBETしたところに止まると、下部の蓋がパカっと開いて、景品か硬貨が払い出される。景品が出たり硬貨が払いだされるのは、当たったか、当たらないかというだけの判定なので、元々のルーレットの持つギャンブル性は再現されていない。一応、モードが3つ設定でき、①当たった枚数と同じ数のランプが点灯して、回転盤に1周のランプが点灯すると扉が開くモード。②当たった枚数の半分のランプが点灯、回転盤1周分のランプが点灯すると扉が開くモード。③当たると必ず扉が開くモードがあり、この中から選べる。


 オリジナル版のピカデリーサーカスは、ヒット作となったため、長いこと作られていた。そのため数多くのバリエーションが存在する。おなじみのこのタイプ以外にも、ドックファイトファンタジーワールド、ライオン、スーパーマリオブラザーズ3など時代によって幾つかのバージョンが存在する。ちなみに最近のバージョンでは、ピカデリー2000というのもあった。イラストなどは時代に合わせてアレンジされているようですが、基本的な遊び方は不変のようです。ちなみに復刻なった貯金箱でも4種のシールが付属しており、購入者の思い出の中にあるバージョンを再現できるようになっている。(ピカデリーサーカスの「サーカス」は通りの合流点の円形地の意味のようですが)個人的には、ライオンのバージョンが印象深いでしょうか。


 ちなみに元ネタのピカデリーサーカスも、純粋に確率だけのルーレットではなく、払い出し用のコインが少なくなると当たらなくなるなどの、確率調整ができたそう。どうやったら当たるか、ルーレット盤の目の数を数えたり、対角線上の位置にかけたり、当時あれこれと必勝法が考えられた。


 2006年頃から貯金箱ブームというのが起こっていたそうで、この当時はザラスなどに貯金箱のコーナーが設置してあったりして、キャラクターものから電子ゲームを組み込んだものなど、様々なギミックをもった貯金箱が販売されていました。そのような流れと、この頃の復刻ブームにより企画されたものなのでしょう。コナミ自ら(コナミデジタルエンタテインメント)の手により復刻されていますので、ある意味コナミ純正品。ただ、非常に残念だったのは、同じくコナミのメダルゲームである国盗り合戦貯金箱も出る予定で、試作品までお披露目されていたのだが、ピカデリーサーカス貯金箱が思うように売れなかったのか発売中止になってしまった。


 こちらは、コインを弾いてゴールまで運ぶという新幹線ゲームを再現した、駄菓子屋ゲーム貯金箱。駄菓子屋博物館の館長、岸昭仁氏の監修でバンダイより発売された。同じ時期に、タカラトミーよりスペースインベーダーのテーブル筐体を再現した貯金箱も出ていた。いまはUFOキャッチャー(クレーンゲーム)の玩具なども売られていますし、ビデオゲームの筐体を再現したコレコの電子ゲームなどと並べたりすれば、結構楽しいかもしれません。


 ピカデリーサーカスの登場した昭和50年代というのは、駄菓子屋ブームだったのだそうです。80年頃からはビデオゲームが置かれはじめ、駄菓子屋ゲームセンターのようになっていました。個人的には、駄菓子屋のイメージはクレージーコングやフロッガー、駄菓子屋用の小さな筐体でのスクランブルやSNKのファンタジーだったりして、ピカデリーサーカスは寂れた観光地や、デパートの屋上(エレベーターの側など隅っこ)というイメージがある。それにしても、そういう味のある場所もだんだん少なくなってきて、玩具として記憶に残るのみというのも寂しいことですね。



※2008年の記事に写真などを追加して再構成。

参考:駄菓子屋ゲーム博物館、ASCII.jp 懐かしーい! 駄菓子屋'sギャンブル「ピカデリーサーカス」型の貯金箱が出た!

日本懐かし10円ゲーム大全/岸昭仁・辰巳出版

2015-07-04 16:06:38 | 書籍・漫画

こちらは、辰巳出版よりタツミムックとして2015年6月に発売された日本懐かし10円ゲーム大全


 著者は、駄菓子屋ゲーム博物館の館長である岸昭仁氏。この方、テレビやマスコミなどにもよく登場しますので、おなじみだと思います。駄菓子屋やデパートの屋上、寂れた観光施設などに置いてあった、10円玉やコインを使用して遊ぶエレメカ系のゲーム機を集めた一冊。帯の推薦文は、よゐこの有野氏。この本、出る前から、結構あちらこちらで話題になっていました。


 日本懐かし自販機大全が好評だったことから、タツミムックより続編的な位置付けで発売されたみたいです。この他にも、日本カセットテープ大全だとか、日本懐かしアイス大全だとか、シリーズ化する予定のよう。今はネットで情報が簡単に取れますから、雑誌が売れないといわれる時代になっていますが、このようなディープなネタは、ネットだけでは集められません。また、ネット上の情報は、いつかは消えてしまいますので、保管しておきたいというニーズにも合致しているのかもしれません。辰巳出版さん、良い所を突いてきます。


 駄菓子屋ゲームの代名詞といわれる新幹線ゲームの紹介から。貴重な内部の構造まで紹介されています。これ、景品の払い戻しのための機構を動かすために、実は電気使うんですね。岸昭仁氏は、探偵ナイトスクープで子供が新幹線ゲームを自作したいというネタの回にも出演されて、内部構造を解説されていました。


 こちらは、同じく岸昭仁氏が監修を務め、バンダイより2010年に発売された駄菓子屋ゲーム貯金箱。新幹線ゲームを遊べる貯金箱に仕立てています。販売中は2,980円くらいの玩具でしたが、生産中止になってからは10,000円近い値段で取引されている。


 メダルゲームの代名詞、コナミのピカデリーサーカス。こちらはコナミ工業の製造で、レジャック株式会社より販売された。ピカデリーサーカスにも、貯金箱は存在した。コナミ自らの手によって作られているため(株式会社コナミデジタルエンタテインメント 2007年発売)、えらく出来がよい。同じくコナミのメダルゲームである国盗り合戦貯金箱も出る予定で、試作品までお披露目されていたのだが、ピカデリーサーカス貯金箱が思うように売れなかったのか発売中止になってしまった。こちらも、今では10,000円近い値を付けている。


 書籍には、これらの有名なものだけでなく、一般的には見たことも無いようなマイナーなものまで網羅されている。読んだ感想としては、この本も立ち位置的には日本懐かし自動販売機大全と同じような匂いのする一冊だと思います。昔にぎやかだったけど、今は忘れ去れて寂しい場所という共通点がある。


 駄菓子屋ゲーム博物館の館長の手によるものなので、10円ゲームのハード本体や、業務用ゲーム機のカタログなどは、かなり見ごたえがある。これらは歴史(記録)には残らず、じきに埋もれて消えていくものなので、資料として残したいというのが、この本を書かれた動機のようです。考現学的な意味合いからは、時代の風俗資料のひとつとして残す価値があると思うのですが、10円ゲームに特化してまとまった形で残るというのが、特に大きいよう思います。メーカー自体も小さなところが多いので、このような本がなければ、これらの記憶は失われてしまう。


 またゲーム機だけではなく、駄菓子屋、デパートの屋上、行楽地の遊戯施設など、この種のゲームがおかれていた場所も紹介されていて、施設オーナーへのインタビューや著者との対談記事もある。これらの場所も、ゲーム機と同じく、静かに消えていこうとしている。これらの場所は、記憶には残るけれど記録には残らない。それを記録し、保存するための資料という意味でも、たいへん貴重な一冊だと思います。辰巳出版さんには、日本懐かしデパートの屋上大全とか、日本懐かしエレメカ大全とかを期待したい。


 ということで、駄菓子屋好き、デパートの屋上好きだった昔の自分に送りたい一冊、日本懐かし10円ゲーム大全でした。


 これも10円ゲームの代表格、こまやが1981年に発売した山登りゲーム。

参考:日本懐かし10円ゲーム大全/岸昭仁・辰巳出版