『名たんていカゲマン』は、70年代から80年代にかけて小学館の学習誌やコロコロコミックに連載されていたギャグ漫画です。作者は、山根あおおに氏。かっててんとう虫コミックスより全11巻が発売されており、2004年には復刊ドットコムのリクエストに応えて全3巻の復刻本もてんとう虫コミックスライブラリーとして発売されました。また内容はオリジナルとは異なっていますが、2001年には『探偵少年カゲマン』としてTVアニメ化もされています。この時代(70年代後半~80年代前半頃)に小学館の学習誌や、コロコロコミックを読んでいた世代にとっては、忘れられない作品のひとつといってよいかと思います。写真は、てんとう虫コミックスライブラリー版の名たんていカゲマン第一巻。
物語は、少年探偵カゲマン(影万太郎)が相棒である自分の影(シャドーマン)とともに、悪党や難事件に立ち向かうというものです。作品の一番の特徴としては、カゲマンのピンチ時には意思と実体を持った自分の影(シャドーマン)が、(本人に代わって)活躍をしてくれるというところで、トレードマークである懐中電灯と、“シャドー”の掛け声と共に印象に残っている方も多いのではないでしょうか。(あらためて読み直してみると、ジョジョのスタンドの元祖みたいな感じ?何か影響はあるのでしょうか)。また“怪人19面相”を始めとして、“ギャング団のボス”、“ハイドマン&ジキール探偵”、“オオカミ男”、“クモーラーマン”、“ゴキブリ小僧”、“ミスターX”、“つきゆび男”、“ポリスマン”など、多彩な悪役や、登場人物も魅力でした。それにドリフや当時のCMなど時事ネタやパロディが多いのも特徴で、わりと堅めだった当時の学習誌の漫画の中でも異色の作品だったように思います。(まあ当時は、子供向けとは思えないお色気漫画も多かったですが)。シャドーマンは影ということもあって、敵に攻撃されることもなく、車や飛行機などどんな形にも変形できる無敵の存在ですが、明かりがないと存在できないという影ならではの弱点もあって、そのピンチをどう切り抜けるかがこの作品の肝だったように思います。
名たんていカゲマンは、2007年に復刻された大人のコロコロ“熱血!コロコロ伝説”のVOL.2(1979-1980)にも収録されています。この頃はゲームセンターあらしが登場してきた頃で、時期的には同じような時期の作品だったのがわかります。他に有名どころとしては、あさりちゃん、おじゃまユーレイくんなど。また作者の山根あおおに氏とは別に、もうひとり山根あかおに氏という漫画家もいて、当時は謎だったのですが、あらためて調べてみると2人はともに田川水泡氏の弟子で実の兄弟だったようです(ペンネームも水泡氏によるもの)。この当時教科書などに『泣いた赤鬼』という児童文学が掲載されており、どこかそれを連想させる秀逸なペンネームだったと思います。
ということであらためて読み直してみると、カゲマン、シャドーマンというキャラ設定や多彩な敵役といい、非常によくできた作品だと思います。カゲマンには“新名たんていカゲマン”という続編もあるようで、平成9年(1997)には“平成名たんていカゲマン ”としてCOMIC GON!創刊号にも登場したようです。またてんとう虫コミックスライブラリー版には、書き下ろしの新作も収録されています。今でも通用する作品だと思いますので、ぜひオリジナルに忠実なアニメ化を希望したいものだと思います。
参考:Wiki名たんていカゲマン、山根あおおに、山根あかおにの項、てんとう虫コミックスライブラリー・名たんていカゲマン/小学館