これは、2002年に英知出版よりトラウママンガブックスとして出版された、とどろけ!一番 上巻 激闘!!模試裏技バトル篇。
とどろけ!一番は、1980年から1983年にかけてコロコロコミックスに連載された漫画。原作は、つるピカハゲ丸ののむらしんぼ氏。ジャンルは、後にも先にも類を見ない空前絶後の受験バトル漫画。物語は、進学塾の名門である大日本進学塾に入学した小学5年生の轟 一番(とどろけ いちばん)が、常仁財閥の御曹司であるライバルの常仁 勝(つねに まさる)や数々の受験戦士たちと、テストの勝敗をかけてバトルを繰り広げるというもの。
復刻された大人のコロコロコミック、熱血!コロコロ伝説VOL.3では、藤子不二夫A氏の怪物くんや忍者ハットリ君とともに、この時期の看板作品として登場。
のむらしんぼ氏の作品としては、アニメ化までされたつるピカハゲ丸と比べると知名度こそ劣るものの、作品の持つパワー、熱さでは優っていた。
元々は、ゲームセンターあらしのヒットを受けて、格闘技ではないジャンルのバトル漫画+必殺技というフォーマット(表現方法)を使って、全く新しいものをということで生み出された作品だったらしい。ゲームセンターあらしは、コロコロ誌で79年より連載が開始され83年まで掲載された。最初は、ゲームセンターでの勝負だったが、だんだんスケールがでかくなり、特設スクリーンを張った野外ステージ、球場や競技場から、果ては宇宙や異次元空間までを使ってゲームのバトルをするという漫画だった。
あらしの売りは、出っ歯の小学生石野 あらしが、数々の超人的な必殺技を持っていたこと。手をマイコンの処理速度より早く動かすことで自機をワープさせる炎のコマ、逆立ちや宙返りをしながらプレイをするムーンサルト、腕を擦り合わせて電気を起こしマイコンを狂わせるエレクトロニックサンダーなど、原理は一応説明されているものの効果のほどはよくわからない派手な技を駆使して、超人的なゲーム戦士たちをバトルを繰り広げた。
ゲームに続いて選ばれた題材は、テスト、受験。先行する受験作品としては、受験をギャグにした東大一直線があったが、漫画にしにくい題材をバトル漫画としたことが画期的だった。コロコロコミックは、この後もチョロQやミニ四駆、ファミコンなど、旬のホビー+バトル漫画の路線を確立していった。
最も基本的な技として、最初に披露した答案二枚返し。左右の目で設問と問題文を同時に読み、左右両方の手でに解答を記入していく。
手を高速に動かすことで見えないほどのスピードで解答を記入してゆく、ゴッドハンド。左右の手を使うダブルゴッドハンドという応用技もある。ゲームセンターあらしの炎のコマに相当する基本の技。
ジャンピングダブルゴッドハンド。ムーンサルトに相当する大技。必殺技の特徴として、受験勉強の内容そのものではなく、解答を早くこなすということに特化している。そのため、特訓も体を鍛えるものが多い。学力そのものは、授業中の火を噴くような集中力に拠っている。
四菱ハイユニマグナムショット。ライバルの不正を見抜いたり、妨害をかわす時などに使用する。一番は、書いても磨り減らない四菱ハイユ二というまぼろしの鉛筆を使っており、その芯は鋼鉄よりも強かった。
上記の応用。四菱ハイユニ時間差ミサイル。背景が宇宙になっているが、一番はあらしのように実際の宇宙や四次元に行くことはなかったので、実際は教室や試験会場で鉛筆を投げている。
見えない魔球(鉛筆)を投げて試験を妨害してくるライバルに対し、四菱ハイユニで受けることで対抗した、四菱ハイユニ真芯受け。いや、こんなことが出来るなら手で払うか避けろよ。ライバルはプロレス技を使ったり、カンニングしたり、幻覚を起こさせる香水を使ったりとなんでもあり。
結局のところ、一番は暗記や受験のノウハウなど学力ではなく、高速に答案を記入したり、鉛筆を高速で投げるという身体的な必殺技で勝敗を決する。冷静に考えれば試験会場で逆立ちをしたり、鉛筆を投げあったりと、そんな落ち着きのない子供は普通は試験会場を追い出されるだろうが、そう読者に考えさせないところが熱い。ということで、今ではネタ漫画扱いされていることも多い作品ですが、漫画としてはその熱さと馬鹿馬鹿しさが実に楽しい作品だったよう思います。ちなみに、連載の後半ではこのままの熱さでボクシング漫画へと突入してしまった。
参考:Wiki とどろけ!一番、のむらしんぼ、ゲームセンターあらしの項