『フロントライン』(FRONT LINE)は、1983年にタイトーより発表された(アクション)シューティングゲームです。MSX版は翌84年、ある意味アーケード版より有名かもしれないFC版は85年に登場しています。PCへの移植版は、当時PCの周辺機器などを開発、販売していたニデコより、ニデコムのブランドで発売されていました。(このMSX版フロントラインに関しては、開発/製造元タイトー、販売二デコ)。ゲームは、この時期としてはかなり珍しい、歩兵を主人公とした
縦スクロールのシューティングゲーム。この後の戦場もの“戦場の狼”(カプコン)や、“怒 IKARI”(SNK)の原型となった作品と言ってよいと思います。(リンク先youtube)
プレイヤーは歩兵となって、同年のヒット作“ゼビウス”でも採用された2ボタンで機銃と手榴弾を使い分けながらジャングルを抜け、単身敵地へ乗り込むことになります。操作系が少し変わっていて、ダイヤル式のスイッチで方向を決め、(進行方向とは関係なく)攻撃が出来るようになっています。これは、同社“
ワイルドウェスタン”(82)に続いての採用ということです。また、任天堂“
シェリフ”(79)でも採用されていました。“怒 IKAR”(SNK)でも似たシステムが使われていましたが、これらの共通点として自機が宇宙船でなく人間ということで、(プレイヤーの)自由度を増すという意味合いがあったのかもしれません。もう1つ『フロントライン』の最大の特徴(発明)として、戦場においてある装甲車※や、戦車に乗り込めるということがあります。ジャングルでは歩兵同士の戦いなのですが、荒野に出ると敵の装甲車や戦車との戦いとなります。歩兵として心細い状態から、戦車に乗り込むと反撃できるようになり、爽快感が生まれるというのが、このゲームの肝だったわけです。このシステムは、“戦場の狼2”、“
ラッシュ&クラッシュ”(カプコン)や、“怒 IKARI”(SNK)でも踏襲されていました。※パッケージではJeep
80年代には映画『ランボー』シリーズのヒットなどがあって、ゲームでも戦場を舞台としたものがたくさん出ましたが、このゲームの特徴として“コミカルさ”が挙げられるかと思います。この当時のハードの限界もあるのでしょうが、キャラ絵もこのようにゆるいです。ほとんどノートの片隅に書いてある、小学生のイラストのようです(でもいい味出してます)。ナムコなどは、80年代のものはキャラも音楽もゲーム性も完成されたものが多かったですが、タイトーのこの時期の特色として、アイデア重視でキャラなどはわりとゆるいものが多かったように思います。一作ごとに作風が変わる多彩さが、タイトーの魅力だった気もします。このMSX版『フロントライン』ですが、初期のものということもあり
かなりシンプルです。移植も成功しているとは言い難いですが、MSX初期のソフトが少ない時期にアーケードからの移植をしてくれたというだけでも、あの時点では意味(価値)があったように思います。
なんと、これスケルトンカセットを使用しています。FCでスケルトンカセットを使用して印象的だった“沙羅曼蛇”が87年の登場(アーケード86年)ですから、3年程先駆けていることになります。よくわかりませんが、他のタイトー/ニデコのラインナップにも使用されていたのでしょうか?こちらが話題になったというのは聞きませんので、ひっそりと歴史に埋もれてしまったのでしょうね。このゲーム、特殊なレバーがわざわいしてかあまり駄菓子やなどには置いてなく、ゲームセンターでの可動も短かったような気がします。その割には、強い印象が残っている思い出深い一作だったと思います。