BSでやっていた。懐かしいなーと思って録画。
確か、よく理由はわからないけどいい映画だと思った記憶がある。
映画館で見たんだ。
あれは大学生の頃だからザッと、二十年以上前だ。
ゾッとする。
見てみたら、
あの頃にはまったく窺い知れなかった
人生の機微の宝庫映画だった。
主役のジャック・ニコルソンの変人っぷりを
ただの嫌なやつ
としか覚えていなかった(というかほぼ覚えていなんだが)
けれど、
要するにクセ持ちの子どもがただ大人になり、
さらに初老にさしかかった人で、
しかも才能だけはあるので、
それなりにいいアパートに住んで
孤独ながらにもそれなりに生きている
というものだった。
その彼が自分の持ちうる状況で少しでも
すべてを良くしていこうという映画だった。
原題が
AS GOOD AS IT GETS
これ以上にない最善
で、中年に刺さった刺さった。
自分の才能、性格、状況は死ぬまでにもうそんなに変わらないってわかっている。
けど、とにかく最善つくそうぜ、って思えた。
大学生には無理だ。雰囲気だけで良い映画と思っていたけど、めちゃくちゃ良い映画だった。
役名メルヴィンの
キャラ作りが完璧すぎる。
その場で一番いうとイヤなことを口に出してしまうクセが常に発動していて、
言っちゃいけないこと大喜利で優勝しそう。それがハマりまくっている。
私も性格悪いからよぎるよ。ああいうこと。
ただ大人だから言わない。
若い頃は口から出ちゃって人が離れていったこともあったっけ、なんてことも思い出す。
言わなくなったのは、周りによく思われたいからだ。
でもメルヴィンは違う。
人からどう思われてもいいと思っている。
行きつけのダイナーから追い出されて、そこにいる全員が拍手喝采する場面があるんだけど、メルヴィンはそのことにあまりリアクションしない。
そんなことよりその場にいつもいるはずの店員のキャロルがいない、ということに心がいっている。
彼にとっては秩序よく全てが毎日同じじゃないといけない。潔癖症で強迫症だから。
あの様子じゃ、またあのダイナー行くな、と思ったら、全然普通にまたダイナーで朝食取る場面があった。
また来ている。あんな目にあったのに。って、たぶん拍手喝采した常連は思っただろう。でもメルヴィンにはどうだっていいことだ。
完璧。かなり奇抜なキャラなのになんの違和感もない。役作りさえ感じさせない。
なんども「くたばれ、メルヴィン」って思いながら楽しく見た。
この映画は主人公だけがかなりのやな奴で
それを取り巻く人々が好感が持てるように描かれている。
なかでもキャロル役のヘレン・ハントが
すっごく素敵。
街にいる、こういう人。
私の街にもあなたの街にも。
美人の店員さんで、
愛想がよくて、機転が効いて、仕事さばきが素晴らしく、その人に会うためにその店選ぶような人だ。
私で言ったら、
駅近くのローソンの店員さんだ。
いつ行ってもマジで感じがいい。
あと常連のことを覚えていて、
当時ローソンカフェ専用レジの人だったんだけど、
どのひとが砂糖いくつとか
袋に入れるのか、スリーブだけとか覚えていて、
別にドヤ顔もせずサッと用意して渡しているのを何度も目撃した。
パートさんだからおそらくいつかはやめるのだろうし、その人のプライベートなんて永遠にわからないんだろうけど。
そんなあなたの街にもいるキャロルは
シングルマザーで病気の息子がおり、
保険が適用できないことで息子に満足いく治療ができずに苦労している。
大好き、絶対に応援する。
って思っちゃう。
キャロルをリアルに演じるヘレン・ハントが大好きになる。
この映画のもう一人の主役、メルヴィンのアパートの隣人で冒頭から飼っている犬をメルヴィンに捨てられる不運なゲイのアーティスト、サイモンと三人で旅に出るところまで、最高なんだけど、
帰った時に破産したサイモンをメルヴィンが家に招き入れるところが
まったく繋がらないのが
気になる。
なんでそれをしたの?
きっと1エピソード、時間の関係で入んなかったのかもしれん。
それくらピースが欠けている気がする。
なにか見逃したのかな。
主役の二人がアカデミー賞をとっているし
ヘレン・ハントの出世作だし、
めちゃくちゃ有名な作品なので、
今更、だれにも言えなかったので、
ここで書いてみた。
あと劇中でメルヴィンがチョイスする音楽が素敵。
実際に映画のバックミュージックとして流れるやつは、有名な人らしいんですけど、かかるタイミングがちょっと昔の演出っぽい。
感動の場面が来る前に、
感動っぽい音楽入るんだもん。
すっと冷めるよね。
そう、こういうやな事を最後に言うところが、
私もメルヴィンだな、
って思う。