遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中露が天然ガス網強化 露は日本にもパイプライン供給提案

2014-10-15 23:16:03 | ロシア全般
 李克強首相が訪露し、メドベージェフ首相とモスクワ市内で会談し(13日)、エネルギーや金融など経済分野を中心に約40の協力文書に署名したのだそうですね。
 中国の、歴史問題での共闘思惑、スワップ協定、衛星測位システムの協力等での合意があった様ですが、今日はロシアの天然ガスの輸出について触れてみます。

 欧州でエネルギー安全保障のため脱露が進む中、主力ガス田の枯渇も迫り、北極圏や極東での開発が必要となったロシアは、開発支援パートナーの模索と、中国や日本、韓国への新たな販路開拓とが必要となっていました。
 また、中国の台頭で極東への人口流入の危機や北極海航路開発、安全保障上の防衛が必要とされる中での、ウクライナの領土争いで孤立した経済の立て直しと多くの課題に直面したロシアの苦しい状況から、中国に接近せざるをえない状況に追い込まれるといった、自分が招いた苦境にも直面してしまったのですね。
 そこで、苦しいながらも、藁をもつかまざるをえない状況で、価格を値切られながらも妥協した、中国への天然ガス販売に踏み切ったのでしたね。
 

中露、天然ガス網強化…両首脳、経済40項目協力合意 (10/15 読売朝刊)

 
【モスクワ=田村雄、北京=五十嵐文】ロシアを訪問した中国の李克強(リークォーチャン)首相は13日、メドベージェフ首相とモスクワ市内で会談し、エネルギーや金融など経済分野を中心に約40の協力文書に署名した。第2次大戦終結から70年となる来年に両国でそれぞれ開く記念行事に、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平(シージンピン)国家主席がそろって出席することでも合意した。
 
ウクライナ情勢を巡り欧米の経済制裁を受けるロシアは、中国との経済協力強化で制裁の影響を緩和したい考えだ。一方、中国は、歴史問題での共闘で日本をけん制する狙い
に加え、中国の経済発展に欠かせない天然ガスなどの資源の確保を重視している。今回の会談で、両国が接近をさらに強め、協力を具体化させていることが鮮明になった。
 メドベージェフ首相は会談の冒頭、「両国関係は戦略的パートナーとして非常に高いレベルにある」と発言。中国外務省によると、李首相は、中露協力には「戦略性、安定性、長期性」があると述べたという。
 インターファクス通信によると、李首相は14日には、
プーチン大統領とも会談。大統領は「我々は同盟国であり隣人だ
」と語り、11月に北京で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、習氏と会談することに期待を示した。
 同通信などによると、両首相は
衛星測位システムの協力などで合意し、中露の貿易総額を2013年の890億ドル(約9兆4340億円)から来年1000億ドル(約10兆6000億円)に拡大する方針も確認
した。
 ロシア中央銀行と中国人民銀行(中央銀行)は自国の通貨危機の際、互いの通貨を融通し合う
通貨交換(スワップ)協定も締結米ドル依存度を下げる狙い
があるとみられる。
 
9月にロシアの極東と東シベリア産の天然ガスを中国に供給するパイプライン建設が始まったが、中露両国は西シベリアからのガス供給の実現に向けた協議を進めることでも一致した

 一方、李首相は会談後の記者会見で、第2次大戦終結70年の記念行事に加え、同大戦に関する共同学術会議を、両国が加盟する上海協力機構や国連の場を活用して開く考えを示した。


 この両国は、たまたま国益の利害が一致したもので、孤立したロシアの弱みにつけ込んで強かに貸しをつくりながら自国ペースでしっかり利益を獲得する中国外交が奏功しているだけで、ロシアは悔しい思いを押し殺して耐えているだけとの評論が多いですね。遊爺も賛成です。対欧米や、対日関係の状況に応じ離合を繰り返してきている両国の歴史の流れの一局面なのですね。
 そこで狡猾外交を展開するロシアは、日本を揺さぶろうと、中国へのガス販売を優先し、日本向けを無視する姿勢を示そうと、これまで進めていた、日本の財界が期待していたウラジオストクでのLNG事業開発撤回を検討しているとアドバルンを打ち上げています。
 

ウラジオストクLNG事業 撤回も (10/15 読売朝刊)

 【モスクワ=緒方賢一】タス通信によると、ロシア国営企業ガスプロムのアレクセイ・ミレル社長は13日、極東ウラジオストクで計画する液化天然ガス(LNG)事業について「撤回の可能性を検討する」と語った。この事業には日本企業が参加を目指し、2012年にミレル社長と経済産業省資源エネルギー庁の長官が覚書を結んだ

 ウラジオストクは日本に近く中東やオーストラリアなどより輸送コストが安いため、日本はLNG供給源の多様化につながると期待している。ロシアは中国へのガス供給を強化する方針のため、今回の発言には、
中国向け輸出を優先させる狙いがあるとの見方もある。

 また始まったロシアの約束反古です。終戦のドサクサで米英と通じて平和条約を一方的に破棄して北方領土を奪取したり満州で多くの捕虜を連れ帰ったソ連。サハリン1, 2のガス田開発では、リスクのある開発をメジャーや日本企業にすすめさせておいて、完成のめどが立つや難癖をつけて資本比率を大幅逆転させ横取りした過去の実績にたがうことなく、約束の破棄です。
 遊爺が、ロシアとの共同開発や資源の購入に慎重姿勢を採れと唱えている所以です。

 狡猾と言う由縁のもう一つが、一方では何食わぬ顔をして、日本向けのガス販売に、パイプラインの設置を、今更逆提案してきていることです。
 元々は日本側の一部の発案で話があったものを、ロシア側が、工事の難しさや地震のリスクなどから採算が採れないと反対していた案件なのでした。
 サハリン1, 2で開発していた時も検討され、見送られたと記憶していますが、日本側からの提案の近況を下記リンクの「サファイアのブログ」さんがまとめておれます。
 
ロシア に提案 日本から海底ガスパイプライン引く|サファイアのブログ

 今回のロシアからの逆提案についての日経記事が以下。
 

ロシアのパイプライン提案、対ロ制裁網にくさび狙う  :日本経済新聞

 【モスクワ=田中孝幸】ロシアによるサハリンと北海道をつなぐ天然ガスパイプラインの建設提案には日本や欧米諸国による対ロ制裁網にくさびを打つ狙いがある。極東で急速に進む中国への経済依存への警戒感も透けて見える

 原発を再稼働できずに電気料金の上昇に苦しむ日本に安い火力発電用ガスの供給を提案することで、
日本の対ロ感情を改善し、制裁の早期解除
につなげる思惑がある。ガス火力発電は日本の総発電量の4割超を占めるが、燃料はタンカーで運ぶ割高な液化天然ガス(LNG)に全面的に依存する。加工せずに直接送るためガス価格を3~4割安くできるとされるパイプラインができれば、日本の電気料金の引き下げにもつながる。
 日本は北方領土問題の進展のためロシアには先進7カ国(G7)中で最も緩い制裁内容にとどめてきた。日本外務省幹部は「
ロシアは日本を一気に取り込む道具としてパイプラインを使おうとしている」と語る。ロシアとの関係を悪化させている同盟国・米国のオバマ政権は日ロ間の新規のエネルギー協力に反対する可能性
もある。
 ロシア国営天然ガス会社ガスプロムのミレル社長は13日、サハリン沖のガス資源を使った極東ウラジオストクのLNG基地計画の撤回を示唆した。日本政府内ではパイプライン建設の話も絡み「
サハリンから日本への供給分を確保する動き
」との見方も出ている。
 ロシアは一方で今年5月、中国に30年間にわたって年間最大380億立方メートルのロシア産天然ガスを輸出することで合意した。
東シベリアでの大規模ガス開発計画のガス供給先も中国だけに限ることが内定したが、プーチン政権内では過度な対中依存への懸念もあった。ロシアは従来、LNG輸出を重視する立場から日本とのパイプライン構想には否定的だったが、極東開発に日本を関与させてバランスを取るための呼び水に使えるとの判断
が働いたとみられる。
 日本でも燃料調達コストの引き下げに向けたパイプラインへの関心は高い。2月には安倍晋三首相に近い河村建夫元官房長官が会長を務める議員連盟が、サハリンから茨城県日立市までのパイプライン敷設を求める提言をまとめた。
 首相は16~17日のアジア欧州会議(ASEM)と11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議の際にそれぞれプーチン大統領と会談する予定だ。対ロ外交は米国や中国との関係にも大きな影響を及ぼすだけに、事業を進めるかは「首脳レベルの総合判断に委ねられる」(首相周辺)見通しだ。


  ここで先ず抑えておかねばならないのが、ロシアの揺さぶり外交のベースに、日本がロシアの天然ガスを欲しがっていると、上から目線で居るということです。
 それは、ロシアの極東開発に群がる日本企業や、日本政府の外交姿勢に問題があるからです。あるいは、既に入れ替えられたはずですが、メドベージェフの北方領土上陸を読み間違えた外務省のロシア組の無能さがまだ残っているのかもしれません。
 繰り返しになりますが、主力ガス田の枯渇が迫り、北極圏や極東での困難な新規開発に迫られる一方で、欧州でのエネルギー安全保障上の脱露指向が進み、シェールガスの出現が追い打ちをかけ販路が細まっていて台所が苦しく、日本や中国、韓国、さらには東南アジア諸国への販路開拓にせまられ、困窮しているのはロシアなのです。
 それなのに、ロシアの極東開発事業にものほしそうに目先の売上欲しさで群がる日本の財界が、交渉の立場を逆転させているのです。

 話が横道にそれました。
 約束を守らないロシアに、エネルギーを依存してはいけません。欧州の国々が、エネルギー安全保障の為に、脱露を進めている所以です。
 台所が苦しいロシアが、北方領土 4島 + 千島列島と樺太の南半分を返すので助けてくれと言って来たら、安全な範囲内で買ってあげてもいいという姿勢でいいのです。中国は、ロシアの内情につけこんで、平行線だった安値での購入を勝ち取っていますね。

 軍備を増強し、覇権拡大を続ける中国を牽制するには、ロシアは日本との連携が必要で、日本は米豪印との連携に、露との繋がりでの牽制が加われば盤石となりますね。
 北方領土を不法占拠し、平和条約も結んでいないロシアが、リスクの高いパイプラインへの投資が出来るだけの信頼がおける国なのか。約束を平気で反故にする実績を繰りかえしているロシアからそんなに多量の定期購入を依存していいのか。

 前のめりになりすぎている政府も、開発事業投資の目の前の売上に目が眩んでいる財界も、中長期の国益を念頭に対露姿勢を改める必要がありますね。



 # 冒頭の画像は、サハリンエナジーのガス田開発の海上プラットフォーム




  この花の名前は、ヘロニカ・オックスフォードブルー


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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)




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