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遊爺雑記帳

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電撃訪問でプーチンと会談した習近平、仲裁案提案の裏にはやはり秘めた狙いが

2023-03-29 01:33:55 | ウクライナ全般
 3月21日、ロシアの首都モスクワで中国の習近平国家主席がプーチン大統領と会談。中国は、ロシアのウクライナ侵攻から1年の節目となる2月24日に、「停戦」と「直接対話」を呼びかける仲裁案を発表していて、共同声明ではロシア側がこの仲裁案を積極的に評価。
 この会談に先立ち、中国は3月上旬にイランとサウジアラビアの外交関係の正常化を仲介。
 米国の勢力圏であるはずの中東でも影響力を強め、ウクライナ侵攻にも仲介することで、米国を凌ぐ国際秩序の支配を高める狙いがあると見られると、青沼氏。
 
「ウクライナ戦争、そろそろ停戦してほしい」と中国がジリジリしだした理由 電撃訪問でプーチンと会談した習近平、仲裁案提案の裏にはやはり秘めた狙いが | JBpress (ジェイビープレス) 2023.3.27(月) 青沼 陽一郎 (作家・ジャーナリスト)

 岸田文雄首相がウクライナの首都キーウを訪れてゼレンスキー大統領と会談した3月21日、ロシアの首都モスクワでは中国の習近平国家主席がプーチン大統領と会談していた。

 
中国は、ロシアのウクライナ侵攻から1年の節目となる2月24日に、「停戦」と「直接対話」を呼びかける仲裁案を発表していて、共同声明ではロシア側がこの仲裁案を積極的に評価していることからも、習主席の訪問は仲裁の役回りを果たしたと受け止められている

なぜこのタイミングで中国は仲裁に乗り出したか
 
この会談に先立ち、中国は3月上旬にイランとサウジアラビアの外交関係の正常化を仲介している。米国の勢力圏であるはずの中東でも影響力を強め、ウクライナ侵攻にも仲介することで、米国を凌ぐ国際秩序の支配を高める狙いがあると見られる。

 
だが、ウクライナ侵攻から1年が過ぎて、中国が仲裁に乗り出した理由はそれだけだろうか

ウクライナを「穀物輸出大国」にした中国
 
ロシアがウクライナに侵攻を開始して世界がまず直面したのが、食料危機の懸念だった。ウクライナは世界第5位、ロシアは第1位の小麦の輸出国で、両国で世界の小麦輸出量の約3割を占めた。この小麦の供給が不足する恐れから価格が上昇したばかりでなく、黒海の港が閉鎖されたことで倉庫に保管されている小麦が運び出せなくなった

 それに
トウモロコシもウクライナは生産量で世界第5位、輸出量は第4位で、ロシアと合わせて世界の輸出の約2割を占めていた。

 
それも国連とトルコが仲介して黒海海上に「回廊」を開くことで、ようやく輸送が可能になったが、ロシアが揺さぶりの道具にするなど、侵攻以前のように円滑とは言い難い

 
実は、世界に影響を及ぼすほどにウクライナを穀物の輸出大国にしたのは中国だ

 
2012年から中国がウクライナと農業開発プロジェクトをはじめたことがきっかけだ。中国が30億ドルを融資して、肥料工場の建設などウクライナの農業関連インフラを整備する。その返済手段として、ウクライナは中国にトウモロコシを輸出した。ここからウクライナの穀物生産と輸出が拡大していく。

習近平が大転換させた中国の食料政策
 
2012年といえば、11月に習近平が中国共産党の総書記に、翌年の3月には国家主席に就任したタイミングだった。そして、その直後に習近平は中国の食料政策を転換している。

 それまでの
中国は、1996年11月にローマで開かれた世界食糧サミットで当時の李鵬首相が「中国は95%の食料自給率を維持する」と宣言したことが、そのまま食料政策となっていた

 その前々年の94年には、米国の思想家レスター・R・ブラウンが『誰が中国を養うのか』と題する論文を発表。
95年には中国を凶作が襲い、コメ、小麦、トウモロコシを純輸入量で1800万トンも輸入したところ、途上国を中心に「穀物価格が上がって食料が買えなくなる」とする食料危機への懸念と批判が集中した。そこで途上国の盟主を自任していた中国は、食料自給の維持を世界に約束したのだ。

 
ところが、習近平が国家主席に就くと穀類を、人が直接食べるコメや小麦の「主食用穀物」と、トウモロコシや大豆などの「飼料用穀物」「油量種子」の2つに分け前者の「絶対的自給」と後者の「基本的自給」という方針を打ち出した。人の命を支える主食は絶対的に自給で確保するが、飼料や油になる穀物なら輸入に依存しても構わないと切り替えたのだ。しかも、“基本的に”自給だから輸入はどこまでも増やせる。

 
その先鞭をつけたのが、ウクライナの肥沃な黒土だったことになる。

 その効果はすぐに現れる。
プロジェクト開始から2年後の2014/15年度のウクライナ産トウモロコシの輸入は、それまでの米国を抜いて第1位となり、中国の輸入量の約8割を占めた

 さらに
中国は、ウクライナ侵攻の直前までトウモロコシの輸入量を急拡大させている。中国のトウモロコシの輸入は2019年まで500万トン以下で推移していたが、20年になると1000万トンを超えて2倍に膨れ上がり、21年は2800万トンを上回って、世界第1位の輸入大国にのしあがった

 しかも、
米中関係の悪化が現実化しつつも、緊張緩和を目論んでか、21年の中国のトウモロコシの輸入相手国の第1位は米国で、総輸入量2836万トンのうち、69.9%の1983万トンを占める。それに次ぐのが、ウクライナの29.1%の824万トンだった。この両国で中国のトウモロコシ輸入の99%になる。

豚肉価格の安定は中国共産党の重要課題
 
中国の対ウクライナの貿易収支を見ても、中国からの工業製品などの輸出が堅調で、2012年から19年まではほぼ黒字で推移してきた。それが20年からはトウモロコシと、それに鉄鉱石の輸入を増加したことで赤字にまでなっている。鉄鉱石は中国の輸入量の1.6%にすぎない。

 
ウクライナにとって中国は最大の貿易相手国だ。中国と農業開発プロジェクトをはじめた2012年当時の最大の貿易相手国はロシアで、貿易額の29.4%を占めていた。それが減少していくと、16年からは対中貿易が急増。19年に中国がロシアを抜いて最大の貿易相手国となり21年の貿易額はロシアが6.8%にまで低下したのに対し、中国は13.5%を占めた

 
中国は世界の約4割に及ぶ最大の豚肉の生産国で、世界の豚肉のおよそ半分を消費している。トウモロコシはその飼料となる

 中国政府、というより中国共産党がもっとも恐れるのは、国民の間に不満が募って暴動にまで発展することだ。ゼロコロナ政策の転換も各地で発生した抗議デモがきっかけだったことからも、中国共産党が気を揉むことはよくわかる。

 経済が順調であれば、国民もある程度のことは我慢できる。だが、
大衆がもっとも不満を抱えて暴徒化しやすいのは腹を空かすことだ。だから、中国共産党は食料価格の高騰には神経を尖らせる。それも豚肉価格の高騰はひとつの指標となる。飼料トウモロコシの不足と値上がりが豚肉に波及することは、国体の維持にも影響する

習近平の「キーウ電撃訪問」もあるか
 
中国の誤算は、戦闘が長期化したことのはずだ。侵攻の直前には米国の情報機関の分析として、ロシア軍は最大17万5000人を動員して、首都キーウは2日内に陥落、最大で5万人の市民が死傷、最大で500万人が難民になる、と報道されていた。早期にロシアの傀儡政権が樹立されていれば、中国にとっては何の問題もなかった

 
それがいまだに収拾がつかず、中国にしてみれば、中国が切り拓いた中国のための農地を戦闘で荒らされ、中国のための穀物庫を自由にできない状況は、面白いはずがない

 
ウクライナにしてみれば、最大の貿易相手国である中国が、仲裁案で「建設的役割」と「戦後復興の推進」を提案している。戦後復興に膨大な資金援助を得られるのであれば、決して悪い話ではないG7の出方と秤にかけたくもなる。それでウクライナが乗ってくるようであれば、中国は国際秩序の支配者にまた一歩近づくことができる

 そうなると、
習近平国家主席の首都キーウへの「電撃訪問」もあり得るかも知れない。ただ、それでは中ロ首脳会談と同じ日にキーウ訪問を成し遂げたG7議長国の面目も丸潰れだ。

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青沼 陽一郎のプロフィール
1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。

 ロシアがウクライナに侵攻を開始して世界がまず直面したのが、食料危機の懸念だった。
 小麦の供給が不足する恐れから価格が上昇したばかりでなく、黒海の港が閉鎖されたことで倉庫に保管されている小麦が運び出せなくなった。
 それにトウモロコシもウクライナは生産量で世界第5位、輸出量は第4位で、ロシアと合わせて世界の輸出の約2割を占めていた。

 それも国連とトルコが仲介して黒海海上に「回廊」を開くことで、ようやく輸送が可能になったが、ロシアが揺さぶりの道具にするなど、侵攻以前のように円滑とは言い難い。

 実は、世界に影響を及ぼすほどにウクライナを穀物の輸出大国にしたのは中国だと、青沼氏。

 2012年から中国がウクライナと農業開発プロジェクトをはじめたことがきっかけ。
 2012年の11月に習近平が中国共産党の総書記に、翌年の3月には国家主席に就任した。そして、その直後に習近平は中国の食料政策を転換。

 それまでの中国は、1996年11月にローマで開かれた世界食糧サミットで当時の李鵬首相が「中国は95%の食料自給率を維持する」と宣言したことが、そのまま食料政策となっていた。
 95年には中国を凶作が襲い、コメ、小麦、トウモロコシを純輸入量で1800万トンも輸入したところ、途上国を中心に「穀物価格が上がって食料が買えなくなる」とする食料危機への懸念と批判が集中した。そこで途上国の盟主を自任していた中国は、食料自給の維持を世界に約束した。

 ところが、習近平が国家主席に就くと穀類を、人が直接食べるコメや小麦の「主食用穀物」と、トウモロコシや大豆などの「飼料用穀物」「油量種子」の2つに分け、前者の「絶対的自給」と後者の「基本的自給」という方針を打ち出した。人の命を支える主食は絶対的に自給で確保するが、飼料や油になる穀物なら輸入に依存しても構わないと切り替えた。

 その先鞭をつけたのが、ウクライナの肥沃な黒土だったと、青沼氏。
 プロジェクト開始から2年後の2014/15年度のウクライナ産トウモロコシの輸入は、それまでの米国を抜いて第1位となり、中国の輸入量の約8割を占めたのだそうです。
 さらに中国は、ウクライナ侵攻の直前までトウモロコシの輸入量を急拡大させている。

 21年は2800万トンを上回って、世界第1位の輸入大国にのしあがった。
 輸入相手国の第1位は米国で、総輸入量2836万トンのうち、69.9%の1983万トンを占める。それに次ぐのが、ウクライナの29.1%の824万トンだった。この両国で中国のトウモロコシ輸入の99%になる。

 ウクライナにとって中国は最大の貿易相手国。
 19年に中国がロシアを抜いて最大の貿易相手国となり、21年の貿易額はロシアが6.8%にまで低下したのに対し、中国は13.5%を占めたのだそうです。
 
 中国は世界の約4割に及ぶ最大の豚肉の生産国で、世界の豚肉のおよそ半分を消費している。トウモロコシはその飼料となる。

 中国政府、というより中国共産党がもっとも恐れるのは、国民の間に不満が募って暴動にまで発展することだ。ゼロコロナ政策の転換も各地で発生した抗議デモがきっかけだったことからも、中国共産党が気を揉むことはよくわかると、青沼氏。

 大衆がもっとも不満を抱えて暴徒化しやすいのは腹を空かすことだ。だから、中国共産党は食料価格の高騰には神経を尖らせる。それも豚肉価格の高騰はひとつの指標となる。飼料トウモロコシの不足と値上がりが豚肉に波及することは、国体の維持にも影響すると。

 中国の誤算は、戦闘が長期化したことのはずだと、青沼氏。
 早期にロシアの傀儡政権が樹立されていれば、中国にとっては何の問題もなかった。
 それがいまだに収拾がつかず、中国にしてみれば、中国が切り拓いた中国のための農地を戦闘で荒らされ、中国のための穀物庫を自由にできない状況は、面白いはずがないと。

 ウクライナにしてみれば、最大の貿易相手国である中国が、仲裁案で「建設的役割」と「戦後復興の推進」を提案している。戦後復興に膨大な資金援助を得られるのであれば、決して悪い話ではない。
 G7の出方と秤にかけたくもなる。それでウクライナが乗ってくるようであれば、中国は国際秩序の支配者にまた一歩近づくことができる。

 しかし、中国の仲裁案の内容は、ロシア寄りとの評価が多数ですね。
 G7議長国の岸田首相が、同時期にウクライナ訪問、ゼレンスキー大統領と面談したのは、偶然の一致とはいえ、習近平とプーチンとの専制国家首脳会談と、ゼレンスキー大統領と岸田首相の自由主義国家首脳の対談という構図が世界に広く示されました。
 G7の国々の中で、バイデン大統領がウクライナ緊急訪問を実現したことで、議長国でありながら、重要課題のウクライナ訪問を、事前の欧米歴訪しながらもウクライナをスルーする外交音痴を指摘されていた岸田氏。
 偶然とはいえ、自由主義国のG7の存在を主張し、習近平とプーチンの会談の影響の独走をけん制出来た事は、幸甚でした。

 中国の空母第一号は、ウクライナが保有していた空母を、用途を偽りそのまま空母として使用したものとは、諸兄がご承知の通り。
 ロシア等主要国から、所有していた原爆を放棄しても護ってあげるとの約束で手放したら、原爆使用をほのめかし侵略をしてきたのはプーチン。
 プーチンと習近平には騙されっぱなしのウクライナ。習近平の和平仲介案に、どのように対応するのでしょう?


 # 冒頭の画像は、モスクワを訪問した習近平主席を歓迎するレセプションの一コマ



  この花の名前は、ヤブサンザシ


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