遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

八田與一技師

2007-07-14 23:45:21 | my notice
 台湾で、農業近代化と水利事業に尽くした日本人技師、故八田與一(はったよいち)氏に、陳水扁総統は、2007年5月21日に褒章令を出していました。
 7月12日、東京都港区の台北駐日経済文化代表処で、授与式が行われ、褒章は代表処の許世楷代表から、八田技師の長男の妻、愛知県春日井市、八田綾子さん(74)らに贈られたそうです。(7/12 産経朝刊)
台 湾 週 報


嘉南平原の水利の父、故八田與一氏に陳総統より褒揚令(褒章)が追贈

 陳水扁・総統は、5月21日、嘉南平原の水利の父と呼ばれた日本人技師の八田與一氏に対し、褒章令を出した。以下はその全文である。

 嘉南平原の水利の父である日本人技師、八田與一氏はこころざしに燃え、人徳に富み、才気に満ちた人物であった。東京大学の土木科を卒業し、はるばる海を渡って台湾総督府土木部に迎えられ、力をつくしてさまざまな功績を残された。とりわけ嘉南大圳と烏山頭ダムの建設を計画、先進国家のダム工法を視察し、技術設備の不足を克服して新機軸を打ち出し、資金的困難と憂慮を乗りこえてついにアジア最大のダムを完成させた。また、灌漑、洪水防止システムを計画、大計画による三年輪作の給水を推し進め、農耕地の生産能力を大幅に拡大させるなど、嘉南平原の豊かで新しい一頁を開いた。大甲渓の電源開発計画にも協力され、土地改良の基本方案を研究、計画し、遠大なその計画は人々に恩恵をもたらした。厳しい時代に、新しく試みた水利建設で台湾に大きな業績を残し、こころざしの実現をはかるため仕事に専念、その名誉は全台湾に伝えられた。その大きな遺徳は模範となり、歴史書により語り継がれてきた。八田氏が世を去られ年月は過ぎたが、心よりの哀悼の意を示し、特に褒章し、政府により英明なる八田氏を懐かしむ意を表わすものである。

                    【総統府 2007年5月21日】


 私が、八田技師と台湾の人々との交流を知ったのは、tsubamerailstarさんの、私の「認識台湾」 嘉南大土川(たいしゅう)の父を守った農民たち」を拝見してからでした。
 現在烏山頭ダムにある八田技師の銅像は、蒋介石時代に日本の残した建築物や顕彰碑の破壊がなされた際に、地元の有志によって隠され、1981年に再びダムに設置されるようになったのだそうです。
  tsubamerailstarさんは、「八田技師の偉業も凄いが、この農民たちはあたたかい!」と大変心を打たれましたと書かれておられますが、まったく同感です。
 このように慕われるのは、土木作業員の労働環境を適切なものにするため尽力したことや、危険な現場にも進んで足を踏み入れたこと、事故の慰霊事業では日本人も台湾人も分け隔てなく行ったことなど、彼の人柄によるものと言われています。
 八田技師の採った、粘土・砂・礫を使用したセミ・ハイドロリック工法(コンクリートをほとんど使用しない)という手法は、ダム内に土砂が溜まりにくくなっているのだそうで、近年これと同時期に作られたダムが機能不全に陥っていく中で、烏山頭ダムは主要な役割は新しいダムに譲ったものの、しっかりと稼動しているのだそうです。(八田與一 - Wikipedia

 来年3月の台湾総統選を控え、与党・民主進歩党の謝長廷総統候補(元行政院長=首相)と、最大野党・中国国民党の馬英九総統候補(前同党主席)は台北市内で9日、初の公開討論を行ったのだそうです。
 日本統治下で台湾の主体化を目指した政治運動をめぐる歴史観が論点で、馬氏は、日本の統治政策に反発して民族団結を呼びかけた当時の抗日運動を評価。
 これに対し謝氏は、「日本も国民党も外来政権だ」と馬氏の「抗日史観」に反論し、民族や血縁を超えた新たなアイデンティティー構築を目指すべきだと訴えたのだそうです。

 新任の、呉台湾駐米代表は、中国の軍備拡大に対し米国製兵器の調達を進めると共に、「米国と日本、台湾は、市場経済、政治的価値観、中国台頭の挑戦を受ける点までも一致しており、緊密な関係を築きたい」としています。
 
呉台湾駐米代表インタビュー要旨 (7/12 産経朝刊)

 着任後3カ月だが、米台間で正式な国交がないための難しさは大きい。5月にもアジア基金が駐米大使を集めたレセプションに私を招待しておきながら、3日前になって「大使ではないから」と出席を拒否してきた。
 だが、米台関係は文化、経済のほか、安全保障の面できわめて深い。表面的な政治的立場の違いは、米台関係の重要性を覆い隠すに至らないのだ。米台間のポイントは中国問題ともいえ、対米関係の処理は同時に対中関係の処理でもある。

<中略>
 米国製兵器の調達については、ブッシュ政権が新型パトリオット・ミサイル(PAC3)、P3C対潜哨戒機、通常型潜水艦の売却を認めて以来、特別予算案の承認に努めてきたが、P3Cを含む一部予算が6月に可決された。米側では台湾側の自己防衛の意思を注視してきたが、この予算通過は十分ではないものの、台湾の決意を示した。

 F16C/D型の調達計画も台湾の防空に重要であり、次世代までのつなぎを果たす。殲(せん)10型など中国空軍の増強は盛んであり、もしF16の売却が得られなければ空軍力の台湾優位は揺らぐ。アパッチ対戦車ヘリの調達もさきに米側の承諾を得た。中国側は揚陸艦を多数建造しており、台湾への野心は高まっている。

 米国と日本、台湾は、市場経済、政治的価値観、中国台頭の挑戦を受ける点までも一致しており、緊密な関係を築きたい。米台、日米に比して日台の安保関係は中国という要素のため強化が難しいが、地道な努力を重ねるべきだろう。

 慰安婦問題を含めて、台湾にも第二次世界大戦が残した問題がある。釣魚台(尖閣諸島)など、往々にして台湾で感情的な反応を招く。しかし、60年あまり前の大戦の話を関係発展の足かせにすることは望ましくない。米国議会の決議案は尊重するとしても、歴史問題には未来志向の視点があるべきではないか。(ワシントン 山本秀也)

 野党の反対で議会(立法院)の承認が得られなかった米国兵器の調達は、ようやく一部が実現するようですが、先行きは総統選挙結果が左右することになります。
 野党が多数を占める議会ですが、国民のみなさんが、総統をどの様に選ばれるのかは、我々外国人は見守るしかありません。

 八田技師への嬉しい話から、余談となってしまいました。
 冒頭の写真は、嘉南平原水利の父、八田與一氏の偉業を描いた舞台劇が盛大に上演 / 台北駐日経済文化代表処からです。

 


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よいっつぁん夢は大きく―台湾の「ダムの父」・八田與一 (ふるさと偉人絵本館 4)

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