遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国不動産大手・恒大集団の創業者連行、習近平の経済失政のスケープゴートに

2023-10-07 01:33:55 | 中国 全般
 中国の民営不動産デベロッパー大手である恒大集団の創業者・許家印が9月27日、警察に連行された。その後の米ウォールストリート・ジャーナルの報道によれば、資産を海外に移動した容疑がかけられているようだと、福島香織さん。
 
 習近平の最大の政敵は、中国の経済発展の祖である鄧小平を継ぐ共青団派でしたが、先の党大会で一掃されたことは諸兄がご承知の通り。
 今度は、習近平vs曽慶紅ファミリーの権力闘争がいよいよ大詰めとなり、曽慶紅ファミリーの最大の弱点となる許家印の身柄を押さえる段階に入ったと、福島香織さん。
 
中国不動産大手・恒大集団の創業者連行、習近平の経済失政のスケープゴートに 海外への資金移動疑惑、政敵の排除に利用されたか | JBpress (ジェイビープレス) 023.10.6(金) 福島 香織:ジャーナリスト

 ・中国の不動産大手・恒大集団の創業者である許家印が9月27日、警察に連行された。これに前後して、幹部のほとんどが身柄を拘束されたという。

・金融システムに与える影響の大きさを懸念し「大きすぎて倒せない」と言われてきたが、創業者連行などの背景には海外への資金移動疑惑や、政敵の排除に利用されたとの説がある。

・だが、不動産バブルの崩壊をはじめ中国経済は失策続きで、習近平が自らの失敗のスケープゴートにしようとしているという見方が妥当だろう。

 中国の民営不動産デベロッパー大手である
恒大集団の創業者・許家印が9月27日、警察に連行された。その後の米ウォールストリート・ジャーナルの報道によれば、資産を海外に移動した容疑がかけられているようだ

 許家印はパスポートと身分証を警察に提出させられ、出国禁止措置のうえ誰とも面会や連絡ができない状況にあるという。中国のポータルサイト「捜狐」のニュースでは、許家印が手錠をかけられて連行されたという目撃証言もある。
許家印連行に前後して、恒大集団幹部のほとんどが相次いで身柄を拘束されている。国家主席の習近平はついに、恒大集団をつぶす決断をしたのだろうか

 
恒大集団は、習近平が2020年に開始した過激な「不動産バブル退治政策・3つの紅線」で、2021年にデフォルトに直面した。しかし、破産することも許されなかった

 同社には、顧客から前金を受け取りながら資金ショートし、工事が中断したままの野ざらし状態で引き渡しができない未完成物件「爛尾楼」が大量にあった。許家印ら幹部は、これらをなんとしても完成させて3年以内に顧客に引き渡す「保交楼」任務の責任を負わされていた。それが
今になって、ほぼ全員警察に身柄を拘束された理由は何だろうか

 かつてアジア第一の富豪とよばれた許家印が今陥っている真の苦境の背後について分析してみたい。

幹部の身柄拘束が相次ぐ
 許家印拘束の直前にあたる9月24日に財新ネットが、恒大のナンバー2、前最高経営責任者(CEO)の夏海鈞と最高財務責任者(CFO)の潘大栄が連行されたと報じていた。今年1月には、恒大集団元総裁の柯鵬が警察に連行された。

 また、許家印の金庫番とみなされていた、融資担当の恒大財富総経理の杜亮ら幹部も9月16日に深圳公安当局に連行された。恒大人寿元会長の朱加麟も同21日に連行された。許家印の二男で恒大財富元総経理の許騰鶴も身柄を拘束されているそうだ。

 このことから恒大の融資ルートに何らかの疑惑があると当局からみなされていると想像されていた。
恒大は約162万戸相当の未完成不動産を抱えていた。これを完成させて顧客に引き渡す「保交楼」の任務を全うするまで、習近平は恒大を倒産させないつもりであると言われていた

 
不動産引き渡しを行えず恒大が倒産すれば、未完不動産購入のために顧客が銀行で組んだ不動産ローンが返済されず、銀行システムの破綻に広がり、大きな社会不安を引き起こす可能性があるからだった。これが「恒大は大きすぎて倒せない(倒産させると社会不安が起きる)と言われた1つの背景だ。

 だが、
同時に恒大集団への融資については国内で依然として厳しい制限があり、資金調達ができないのにどうやって保交楼任務を完遂するのか、という点も注目されていた。

 
恒大は債務再編にむけて、負債を子会社の新株に転嫁し、中東の新エネ車企業に引き受けてもらう計画をたて、そのために8月には米国で破産保護申請を申し立てていた

 杜亮らが警察に連行されたので、9月22日に予定されていた債務再編会議が延期になり、恒大は同24日の公告で、新規の債券の発行資格を満たすことができなかったと発表。中国内外メディアはこの状況について「恒大の命脈が尽きたようだ」と分析していた。

 9月27日、香港市場の恒大株は19%暴落。同28日には香港市場での恒大集団の株式取引がいったん停止となり、10月3日に取引が再開されたときは、「ペニー株」となっていたので、投機筋が買いあさり一時株価は42%上昇という現象も起きた。

 疑問なのは、
今まで恒大をつぶさず、延命を許してきたのに、なぜ今のタイミングで、習近平政権は恒大の息の根を止める判断に動いているのだろうか。恒大の保交楼が完遂できなければ社会不安が起きるから、恒大を破産させず許家印の延命を許してきたのではなかったのか。

マネーロンダリングのスキームを活用したか
 ここで元経済記者で
在米華人中国問題研究者でもある何清漣の分析が興味深い

 恒大が習近平の要請する『保交楼』政策を完遂するためには、銀行からさらに2500億元から3000億元を借りなければならなかった。そのカネはどこから引っ張るのかと考えたとき、
許家印は海外で資金調達をする方法を、2014年から導入されている『内保外貸』(クロスボーダー保証外貨管理規定)を利用することで実現しようとしたのではないか、という。

 
内保外貸とは簡単にいえば、中国国内の不動産などを担保に、外国の金融機関から融資を受ける方法だ。中国の金融機関に不動産を担保にして、海外の銀行に対する担保保証を発行してもらう。外国の銀行が中国国内の不動産を抵当にして融資する場合、本来ならその融資が焦げ付いても、その担保清算の強制執行を行うことはできない。これを中国の銀行が責任をもってこの担保物件を清算することを保証し、中国の銀行が先に外国の金融機関に融資分の金額を返済し、あとで担保を強制差し押さえして清算する。

 だが、
この方法は実は、マネーロンダリングや資金移動の常套(じょうとう)手段に使われていた

 たとえばある人物が、上海の不動産3000万人民元相当を上海A銀行に抵当に入れ、その後上海A銀行が米国B銀行にクロスボーダー保証を発行する。A銀行はこの人物が抵当に入れた3000万人民元相当の不動産の7割の2100万人民元相当の外貨融資の保証を米国B銀行に対して行い、B銀行はその人物にドル建てで融資する。その人物が期日までに返済しなかった場合、上海A銀行が米国B銀行に2100万元相当ドルを支払うと同時に、担保の不動産清算の強制執行を求める訴訟を地元の裁判所に起こすことができる。

 その不動産を清算すると約3割分の金が上海A銀行に入る。米国B銀行は元金を保証してもらえる。そして、上海にあった不動産は、事実上換金されて米国に移動したことになる。

創業者個人が海外に資金移動?
 
本来は、中国企業の海外進出を後押しする制度だが、融資を受ける人物と上海A銀行が結託すれば、国内の不動産資産を換金して海外に移動する手口にも利用できた

 ちなみに融資を受けた人物が米国で破産保護申請をすれば、担保とされた上海の不動産を上海A銀行が強制的に清算することもできなくなる。

 
もし許家印が、保交楼完遂のためにこのやり方を使おうとしたのだとしても、習近平の目には、許家印が個人資産を米国に移動したのではないか、と映ったのかもしれない

 
折しも、許家印が秘密裏に離婚し、その妻・丁玉梅はすでに中国を脱出していると言われている。資産の海外移転をもくろんだと疑われる動きだ。

 恒大は2022年末、その負債総額は2.44兆元にのぼり、新中国の経済史上、最大規模の負債総額を記録した。ウォール街の人々は、恒大がプライベートエクイティファンドで集めた190億ドルのドル建て債券がデフォルトの危機に直面するも、恒大は世界の銀行から中国国内にもつ不動産を担保にカネを借り続けることができ、株主にも配当を続けることができたことを不思議に思っていた。こうしたことが許されてきたのは、恒大をつぶすと社会不安が起きるという言い訳のほかに、許家印の政治的パトロンの影響力の大きさだという人もいる。

習近平の政敵排除のため、との見方も
 
許家印や恒大集団を「ホワイトグローブ」(資金洗浄代行者)に利用してきたのが、太子党の権貴族(資本を持った権力者、あるいは権力と結びついた資本家の総称)らとされる。その代表格が曽慶紅ファミリー、つまり習近平にとっての最大の政敵だというわけだ。

 こう考えると、
許家印連行が今行われた理由は以下のように想像される

 (1)
許家印が表向き、習近平の指示に従って保交楼完遂を目指して努力しているふりをしていたが実はひそかに海外への資産移動をたくらんでいたことがばれた

 (2)長年続いていた
習近平vs曽慶紅ファミリーの権力闘争がいよいよ大詰めとなり、曽慶紅ファミリーの最大の弱点となる許家印の身柄を押さえる段階に入った

 だが、
さらになぜ今のタイミングなのか、ということに注目して考えると、やはり、今の中国の深刻な経済苦境が関与しているのではないか、と私は想像する

 
習近平は8月の秘密会議、北戴河会議の場で、曽慶紅や遅浩田ら長老たちから、その失策の責任を問われて、側近部下たちに逆切れしたという話が伝わっている。今の中国党内では、誰の目から見ても明らかな経済政策の失敗、不動産市場救済の失敗について、その責任の押し付け合いが起きていると想像される。

 
長老の間でも、官僚の間でも、そして民間社会の間でもじわじわと、習近平の失敗ではないかという空気が濃くなっている。なぜなら習近平は唯一無二の独裁者であり、すべての政策の最終決定権は習近平一人が握っているのだ。

習近平の責任転嫁か
 
習近平は自分に矛先が向きつつあることを知って、誰かにその責任を転嫁させたい。そのスケープゴートが、アジアの大富豪として名の知れ渡った許家印と恒大集団幹部だということかもしれない

 許家印の資産は、かつて最高453億ドルといわれたが、2022年末の段階で43億ドルに縮小している。それでも43億ドルの資産とは、庶民からみれば目の飛び出るものだ。

 許家印を経済犯罪で有罪にすれば、この資産は没収できる。さらには、長い拘束期間中に、脅し責めさいなみ、海外にすでに移転済みの資産の在りかを吐かせて国内に差し戻すこともできよう。うまくいけば、習近平の政敵の曽慶紅の海外資産やその移転プロセスの証拠を出させて、政敵を完全に潰すこともできるかもしれない。

 保交楼完遂で162万世帯ていどの人民を喜ばせるよりも、こちらの方が習近平にとっては政治的利益が大きいかもしれない。

 許家印は森林伐採従事の貧しい農民家庭に生まれ、早くに母を亡くし、孤独と極貧の中で苦学して大学に行き、国有鉄鋼企業に勤めたのち、改革開放の波に乗って起業。そこからアジア屈指の大富豪となり、全国政協委員を連続して務め、中国政商両界に幅広い人脈を持つようになった。

 最盛期のときは、省レベルの書記や省長クラスの官僚より許家印のほうが党内では上位にあり、習近平の秘書にも直接電話できたとか。許家印は習近平におもねり、「恒大は党の恒大だ」「私と恒大のすべては党にささげている」などと発言していた。

 そんな
チャイナドリームの体現者、党員の鑑のような許家印が、党中央の経済失政のスケープゴートにされたということは、それは鄧小平以降、胡錦濤時代まで続いた、党中央と民営企業の蜜月時代の終わりを告げる晩鐘ではなかろうか。

権貴政治の終わり?
 
習近平の中国は、党中央の権力と民営企業が結びつく権貴政治を完全に終え、共同富裕社会という名の社会主義経済の原則に立ち戻るということかもしれない

 
だが、その方向性は、中国が現在直面する経済低迷、地方財政問題、不動産市場の混乱を救済するものではなく、むしろ50年代、60年代、70年代の中国が味わった飢えによって人が死ぬレベルの貧しい時代への回帰を意味するものかもしれない。もし、そうなると思ったとき、多くの官僚、企業、人民はいくら恐怖政治下にあってもそれに黙って従うだろうか

 
恒大帝国の崩壊は、まわりまわって習近平王朝、あるいは共産党帝国の崩壊につながることになるかもしれない

--------------------------------------------------
福島香織
 大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。
 (中国入出国禁止となり)2009年に産経新聞を退社後フリーに。

 恒大集団は、習近平が2020年に開始した過激な「不動産バブル退治政策・3つの紅線」で、2021年にデフォルトに直面した。しかし、破産することも許されなかった。
 習近平はついに、恒大集団をつぶす決断をしたのだろうかと、福島さん。

 疑問なのは、今まで恒大をつぶさず、延命を許してきたのに、なぜ今のタイミングで、習近平政権は恒大の息の根を止める判断に動いているのだろうか。恒大の保交楼が完遂できなければ社会不安が起きるから、恒大を破産させず許家印の延命を許してきたのではなかったのかと。

 元経済記者で在米華人中国問題研究者でもある何清漣の分析が興味深いと、福島さん。
 許家印は海外で資金調達をする方法を、2014年から導入されている『内保外貸』(クロスボーダー保証外貨管理規定)を利用することで実現しようとしたのではないか、と。
 内保外貸とは簡単にいえば、中国国内の不動産などを担保に、外国の金融機関から融資を受ける方法なのだそうです。
 この方法は実は、マネーロンダリングや資金移動の常套(じょうとう)手段に使われていた。
 
 本来は、中国企業の海外進出を後押しする制度だが、融資を受ける人物と上海A銀行が結託すれば、国内の不動産資産を換金して海外に移動する手口にも利用できたのだそうです。

 折しも、許家印が秘密裏に離婚し、その妻・丁玉梅はすでに中国を脱出していると言われている。資産の海外移転をもくろんだと疑われる動きだと、福島さん。

 許家印や恒大集団を「ホワイトグローブ」(資金洗浄代行者)に利用してきたのが、太子党の権貴族らとされる。その代表格が曽慶紅ファミリー、つまり習近平にとっての最大の政敵だと。
 
 許家印連行が今行われた理由は以下のように想像される。
 (1)許家印が表向き、習近平の指示に従って保交楼完遂を目指して努力しているふりをしていたが実はひそかに海外への資産移動をたくらんでいたことがばれた。
 (2)長年続いていた習近平vs曽慶紅ファミリーの権力闘争がいよいよ大詰めとなり、曽慶紅ファミリーの最大の弱点となる許家印の身柄を押さえる段階に入った。

 さらになぜ今のタイミングなのか、ということに注目して考えると、やはり、今の中国の深刻な経済苦境が関与しているのではないかと想像すると福島さん。
 習近平は8月の秘密会議、北戴河会議の場で、曽慶紅や遅浩田ら長老たちから、その失策の責任を問われて、側近部下たちに逆切れしたという話が伝わっている。今の中国党内では、誰の目から見ても明らかな経済政策の失敗、不動産市場救済の失敗について、その責任の押し付け合いが起きていると。

 長老の間でも、官僚の間でも、そして民間社会の間でもじわじわと、習近平の失敗ではないかという空気が濃くなっているのだそうです。
 習近平は自分に矛先が向きつつあることを知って、誰かにその責任を転嫁させたい。そのスケープゴートが、アジアの大富豪として名の知れ渡った許家印と恒大集団幹部だということかもしれないと、福島さん。

 チャイナドリームの体現者、党員の鑑のような許家印が、党中央の経済失政のスケープゴートにされたということは、それは鄧小平以降、胡錦濤時代まで続いた、党中央と民営企業の蜜月時代の終わりを告げる晩鐘ではなかろうかとも。

 習近平の中国は、党中央の権力と民営企業が結びつく権貴政治を完全に終え、共同富裕社会という名の社会主義経済の原則に立ち戻るということかもしれない。

 だが、その方向性は、中国が現在直面する経済低迷、地方財政問題、不動産市場の混乱を救済するものではなく、むしろ50年代、60年代、70年代の中国が味わった飢えによって人が死ぬレベルの貧しい時代への回帰を意味するものかもしれない。
 もし、そうなると思ったとき、多くの官僚、企業、人民はいくら恐怖政治下にあってもそれに黙って従うだろうかと、福島さん。
 
 恒大帝国の崩壊は、まわりまわって習近平王朝、あるいは共産党帝国の崩壊につながることになるかもしれないと。

 国内経済の低迷、若者の失業他、国内に難問を抱える習近平。
 国内の難問が深刻になれば、国民の眼を海外に逸らすのは為政者の常套手段。
 国共内戦で、毛沢東が無しえなかった、国民党が逃げ込んだ台湾の併合を成し遂げ、毛沢東と並び称されたい習近平。
 台湾侵攻(≒尖閣=沖縄=日本侵攻)の現実味が増してきます。



 # 冒頭の画像は、恒大集団の創業者・許家印氏



  この花の名前は、キンモクセイ


↓よろしかったら、お願いします。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 辺野古移設工事 玉城知事が... | トップ | なおも進化する日本の石炭火... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

中国 全般」カテゴリの最新記事