ゆきさんのブログ

元お祭りオヤジの周辺・・・

鼓舞

2008年05月16日 08時21分57秒 | 祭人
鼓舞(こぶ)とは、気持ちを奮い立たせることを言う。
戦争などにおいて味方の士気を上げることに太鼓が使用されたり
したのが主な用法なのだ。
元は「舞いながら太鼓を打つこと」という意味らしい。

私の持論なのだが、太鼓を打つ速さという要素が、この鼓舞すると
いう意味で大切な部分を占めていると思っている。
昨年出版したライブ版「二本松提灯祭り祭り囃子集」の録音を聴き
比べてもらいたい。いわゆる「のれる囃子」と「のれない囃子」が
歴然としている。最後まで聴いてみたいと思う囃子はゆっくりだ。

超高速での早打ちでリズムが乱れない打ち手をあまり知らない。
(私が知る限りで、この40年くらいの間で2人くらいか)
小太鼓の速さを意識しつつ、笛を導きつつ、そして早く打つことは
至難の業なのだ。大体の大太鼓の打ち手は、自分の速さに狂いを生
じて曲にならなくなってしまう。例えば、最初の打ち出しは良くて
も持続できずに、自分の意図とは別に早さが落ちてしまうのだ。
結局、他の楽器がついて来れずに、あるいは、リードできずに、や
り直しで最初から打ち直すことになる。
それを本人は自分の腕が未熟であることに気づかないだけなのだ。

はっきり言って、早打ちは乗れない。
自己満足で決して「鼓舞すること」になっていない。
二本松提灯祭りのお囃子の場合、参加している若連、小若だけでは
なく、周囲の人たちをも興奮の渦に巻き込むことで祭りが盛り上が
って行くものなのだ。俗にいう「わっしょいギャルズ」たちの数も
単に格好のいい若連がいる町内に多いだけではなく、乗れるお囃子
を演奏している町内にその数が多いように思える。
彼女達が呼応する掛け声の盛り上がりは、あきらかに、正確で力強
くリズムを刻むことの出来る囃子において時にエネルギッシュだ。

何度か書いたことがあるが、化学的な裏づけをとったわけではない
けれど、私は母親の胎内の心音と太鼓の音は一緒なのではないかと
思っている。泣く子供に心音の録音を聞かせるたら泣き止んだとい
う実験があるけれど、その心音のスピードは決して速くはない。
毎分60から140位がその範囲だと思う。筆者も大太鼓の経験者
だが、この分を読まれた囃子方の人が居たら試してもらいたい。
太鼓の革に自分の打つ撥の感触を確かめながら、きっちり、ゆっくり
敲いてみてはどうだろう。

お囃子とは、正に「囃すこと」なのだから。