ゆきさんのブログ

元お祭りオヤジの周辺・・・

19年の取材を終えて1

2007年11月25日 14時19分44秒 | 祭人
お祭りの取材を始めて6年目になった。
無我夢中ではしって来たが、時間をかけるごとに見えてくるものが
ある。今回は、二本松提灯祭りで使用されている屋台(=太鼓台)
について書いてみようとおもう。

写真は、竹田町の車輪である。
竹田町は家具店と仏具店の多いまちだ。
そういう理由からではないだろうが、昔から職人が多い街、祭りにも
職人が多く参加する街という言われ方をしてきた。

今年、松岡の太鼓台を計量した。
一説に、2トンだの3トンという人が多かったので、明確にするため
に計ってみた。案の定、松岡太鼓台は1トン無かった。雨がふったせ
いで、箱棟の覆いと鬼板覆いを付け、シートがかかった状態での計量
だった。台はかりはくず鉄などを計量するものだが、はかりが大きい
ため、降った雨の重さも当然加わっていることになる。
結果は1010キロだった。
先の覆いやシートの分を除けば、あと50キロ以上は軽いはずだ。

さて、竹田町の太鼓台の話しにもどすが、松岡太鼓台よりもさらに軽
いはずである。部材は松岡のものに比べて、さらに細く、極限まで軽
量化されている。梁や桁、破風なども当然のように軽いとおもう。
彫刻にいたっては、他の6町のどれよりも透かし彫りが多用されてい
る。そして、それは計算しつくされているとしか言いようがない。
この梁の太さでもつか、かかる力に耐えられるかどうか、などなど。
後から作られた太鼓台は、部材の大きさに自信がもてなかったのか、
かなり太くなっているようだ。

七町の中で竹田町は一番動きがシャープだ。
残念なことに、太鼓台を動かすのに必要な人数、若連の数は限界に近
いくらい少ない。どんなに軽いといっても、太鼓台はそれなりに重い。
しかし、この太鼓台だから少人数でも動くのだと思う。
竹田町の太鼓台は軽いこともさながら、土台の高さに注目している。
人間が一番重いものを動かすのにいい高さというものがある。ある程
度低いところに手がかかる方が大きな力を出せるはずだ。
また、車軸と車軸の距離が一番短い。そして、写真の台八車形式の太
い矢をもつ車輪が回転しやすさを作っているのではないかと思う。

今年の七町合同出発式後に見せた見事な同心円3回転、さらにその後
の2度のそろばん曳きは、人数の少なさを全く感じさせかかった。
はっきり言って、踊りだしたい気持ちだった。
先人の仕事はスゴイ。今の職人が束にかってもかなわないのではない
だろうか・・・。

最後に、良い曳き回しをするために、苦言でないことを先に申し上げ
て、一言提案をさせてもらいたい。
四輪で回転する場合は、必ず内輪差が生まれる。
正確に回転させた場合、必ず二重の輪ができるのだ。
松岡の土台が平成14年に新調された。回転をしやすくするためだそ
うだが、土台の長さを後ろの柱から30センチも長くした。
これは、郭内太鼓台にも見られる形だが、回転のしやすさとは関係な
い、と思う。(後ろ切りなら効果はあると思うが・・・)

昔のビデオをみてもらうとわかるが、回転は前だけ押せばいいのだ。
で、前の高欄についている人は、単に太鼓台を持ち上げればいい。
前の鼻を作用点とするのはいいが、後ろの土台も作用させようとする
と、同心円になりにくい。内輪差を意識して、前の鼻と違う方向へ動
かすことなら別だが、前と後ろの二箇所を作用点として回すつもりな
ら、かえって力が相殺し合ってしまうだろう。まして、四箇所が作用
点であり、回転する同心円の中心が太鼓台の中にあると考えているよ
うなら、竹田町の太鼓台のようには回らないはずだ。

ビデオをみていて、四隅の柱を動かそうと思っている若連を多く見か
けたので昔の人たちの太鼓台の切り方を見習ってもらいたい。
方向変えも、回転も、前でしかやってないのだ。
例えば、松岡の太鼓台を回転しやくすするなら、心棒と土台との間に
ある部材を取り去ったらいいかも知れない。改修時には車軸の位置は
変更されず、依然と同じ位置に土台は制作された。土台の高さを低く
し、あと10センチ車軸と車軸の間隔を狭くするだけで相当に違うと
思う。また、度重なる改修や過度の追加部材で相当重くなってしまっ
ている。次回の改修が行われるなら、箱棟の欄間を取り外し可能な形
に変更し、夜間の曳き回しには倉庫にしまう形にすれば相当軽くなる
と思う。(鬼板覆いなどの保護のやり方も変更が必要だが)

最後に、車輪が壊れてしまうのではないかと心配だ。
竹田町の構造ならいざしらず、あれだけ細い車輪で夜の回転は無理あ
あるというものだ。昼なら軽いから何とか問題はおきないと思うが、
夜なら、相当な重量になっているはずである。
太鼓台本体の重さよりも夜は倍以上になっているはずだ。
人間が15人乗ったら、そちらの方が重い。
竹田坂上で屋根に乗っている人数を勘定したら、11人も上っていた
のを見たことがあった。
提灯枠を加えると、それこそ2トンをはるかに超えるだろう。

昔は回転や辻を曲がる時、必ず屋根係りは後方へ移動したものだった。
前で車輪などで方向を変えるのに、前枠に5人も上っていたら容易に
曲がらないのは当たりまえだろう。
太鼓台の組み立てて、屋根の垂木にひびが入っているのを見たことが
ある。柱に亀裂が入ったのも何度も見たことがある。
不用意な回転で相当な力が入っているのだ。

先人からの素晴らしい贈り物を大事に後世に伝えてもらいたい。

ひとつひとつ行こう

2007年11月04日 11時43分49秒 | 祭人
忙しかった10月が終わって、少々気が抜けたようになっている。
ウェブサイトの更新をしなくてはならないのでが、気合が入らない画面で
造っても熱い想いが伝わらないのでは駄目だ。

「ほらどっこい」の創刊号を5年前に作ったとき、文章を書いても、写真を
整理しても、ドキドキした感覚を覚えている。
「この本を読んだら、みんな喜んでくれるかな、喜んで欲しいな」という
ような思いで制作したものだ。

今年、読者からハガキをいただいた。
はっきり言うと「マンネリになっていないか?」という指摘だった。
私自身の意識にはそう思えなくても、そうみている人がいることはきちんと
受け止めなくてはならない、と思う。

おかげさまで、5号を出版できたのだが、いよいよ次なるステップへ行く時と
思っている。
理由は、安価で出版を継続するには限界があるということだ。
「ほらどっこい」は500円、CDは1200円で、DVDは編集費がかかり
4200円だった。販売をしてくださるお店や書店に手数料を払わなくては
ならないので卸値となるので手取りは少なくなる。
印刷やプレス代のほか、いろいろな経費がかかる。
スポンサーによる広告がたよりだ。
しかし、毎年継続してくださるパトロンには迷惑の掛け通しであり、あちらの
都合も考えないとならない。
昨年はカレンダーで失敗してしまい、印刷屋さんに待ってもらうなど迷惑を
かけてしまったので、今年は制作しなかった。
この地方の祭りスケールや観光客の数では採算が取れないのが悲しい。

今年はDVDの出版も望む声が強かった。
平成17年に撮影したものがまだ残っている。
本当は新しいものを撮影して出したいのだけれど、コストを掛けるやり方では
次回は無理だろう。
やはり、一般購入者の立場からするなら、何とか3000円以内にしたい。
しかし、撮影、編集、プレス、宣伝の全てを頼むと原価は2000円を超える。
しかも、500枚しか販売を見込めないのでは、どうしても難しいのだ。

毎年、その年の祭りの映像が見たいのは当然のことだろう。
何とか期待に応えたいものだ。
これは、編集機械を買って、自社で編集するしかないのかも知れない。
ただ、プロ級の仕事をするには機械も高価だ。
何かの補助金などをもらえる手立てがないかと思っている。

ひとつひとつ行くしかない。