「実録心霊シリーズ 撮影現場 心霊ファイル ~劇映画「隙魔」の撮影現場より~」
この作品は、当初は劇映画「幽霊団地(仮題)」のDVD化に際し、特典映像として付けられる「メイキング」として撮影されたものであるという。その撮影途中から異常な事態が出来(しゅったい)し、このドキュメントの性格は変わっていく……。
メイキング・ディレクターの本田とアシスタントの横山のふたりが「幽霊団地」という劇映画のプロデューサーの今井氏とO氏のふたりに呼び出されるところからこの「ドキュメンタリー本編」が始まる。
70分ほどの尺でメイキングを撮り上げること、翌日から始まる撮影をすぐに記録すること、出演俳優にもスタッフにもこのことは通達済みなので撮影に支障ない範囲ならどんどん取材して構わない……今井氏よりも押し出しのあるO氏の言葉に、本田・横山のふたりも仕事を断れようはずもない。
主演の野村恵里はクランク・イン前夜、横になった耳に水の流れる音が聞こえて気持ち悪くなり、灯りを点けたらそれが止んだと語る。
屋外撮影。「団地の隙間」に見たてられたビルの谷間で、子役の少年は誰かが見えると言い張った。
助演の山口美也子は、出演シーンの撮影を終えた後のインタビューで、撮影中は異常な肩こりに悩まされたという。
スタッフには奇妙にも怪我人が増えていた。
もうひとりの助演女優米里友利はロケバスでこの作品にはあまり出たくなかったと語った。そして現場にいる間はずっと体の芯から冷える寒さに捕らわれていたと言った。お祓いをしなかったせいではないか、とも。
団地の一室の撮影。スタートのカチンコの直後、中田 圭監督はカチンコがまたなったとNGを出した。助監督がミスを犯していないことはメイキングのカメラにも収められている……。
出演者に配られる翌日の予定表。「コンビニ店長役」の欄にはすべて「首」の文字が。用意をしたはずのADにはまるで覚えがなかったが、翌日、店長役の七瀬一樹は異常な発熱のため、首に解熱シートを張ったまま、本番を直後に控えて首を傾げていた。十年来風邪に罹ったこともないのに、と。
クライマックス・シーンの撮影。深夜の団地屋上シーン。素材映像の撮影中、中田監督が今度こそカットの声を掛けた。何かが映りこんだ気がする、と。
撮影最終日。カメラ助手の女性、笹井が失踪した。彼女はその後もしばらく姿を現さなかった。
映画本編の編集の段になり、クライマックス・シーンに、中田監督が言ったとおり、ありえない者の姿が捉えられていた。その姿を見たOプロデューサーの顔色が変わった。
もはやこの作品を巡る怪異の正体を明らかにしなければ気がすまなくなった本田と横山は、Oプロデューサーの虐めがもとで交通事故で命を落としたひとりのアシスタント・ディレクターの存在を突き止める。
その霊を成仏させるにはO氏が心より詫びるしかないと、ふたりが確信したとき……時、既に遅く、O氏は不可解な「交通事故」で命を落としてしまった。
この臭いドキュメント、もちろんフェイク・ドキュメンタリーなのである。「この作品はフィクションです。」という字幕できちんと結ばれる。
そして! なんと、フィクションとしての面白さが「隙魔」以上だという皮肉がオイシイではないか。
この作品は、当初は劇映画「幽霊団地(仮題)」のDVD化に際し、特典映像として付けられる「メイキング」として撮影されたものであるという。その撮影途中から異常な事態が出来(しゅったい)し、このドキュメントの性格は変わっていく……。
メイキング・ディレクターの本田とアシスタントの横山のふたりが「幽霊団地」という劇映画のプロデューサーの今井氏とO氏のふたりに呼び出されるところからこの「ドキュメンタリー本編」が始まる。
70分ほどの尺でメイキングを撮り上げること、翌日から始まる撮影をすぐに記録すること、出演俳優にもスタッフにもこのことは通達済みなので撮影に支障ない範囲ならどんどん取材して構わない……今井氏よりも押し出しのあるO氏の言葉に、本田・横山のふたりも仕事を断れようはずもない。
主演の野村恵里はクランク・イン前夜、横になった耳に水の流れる音が聞こえて気持ち悪くなり、灯りを点けたらそれが止んだと語る。
屋外撮影。「団地の隙間」に見たてられたビルの谷間で、子役の少年は誰かが見えると言い張った。
助演の山口美也子は、出演シーンの撮影を終えた後のインタビューで、撮影中は異常な肩こりに悩まされたという。
スタッフには奇妙にも怪我人が増えていた。
もうひとりの助演女優米里友利はロケバスでこの作品にはあまり出たくなかったと語った。そして現場にいる間はずっと体の芯から冷える寒さに捕らわれていたと言った。お祓いをしなかったせいではないか、とも。
団地の一室の撮影。スタートのカチンコの直後、中田 圭監督はカチンコがまたなったとNGを出した。助監督がミスを犯していないことはメイキングのカメラにも収められている……。
出演者に配られる翌日の予定表。「コンビニ店長役」の欄にはすべて「首」の文字が。用意をしたはずのADにはまるで覚えがなかったが、翌日、店長役の七瀬一樹は異常な発熱のため、首に解熱シートを張ったまま、本番を直後に控えて首を傾げていた。十年来風邪に罹ったこともないのに、と。
クライマックス・シーンの撮影。深夜の団地屋上シーン。素材映像の撮影中、中田監督が今度こそカットの声を掛けた。何かが映りこんだ気がする、と。
撮影最終日。カメラ助手の女性、笹井が失踪した。彼女はその後もしばらく姿を現さなかった。
映画本編の編集の段になり、クライマックス・シーンに、中田監督が言ったとおり、ありえない者の姿が捉えられていた。その姿を見たOプロデューサーの顔色が変わった。
もはやこの作品を巡る怪異の正体を明らかにしなければ気がすまなくなった本田と横山は、Oプロデューサーの虐めがもとで交通事故で命を落としたひとりのアシスタント・ディレクターの存在を突き止める。
その霊を成仏させるにはO氏が心より詫びるしかないと、ふたりが確信したとき……時、既に遅く、O氏は不可解な「交通事故」で命を落としてしまった。
この臭いドキュメント、もちろんフェイク・ドキュメンタリーなのである。「この作品はフィクションです。」という字幕できちんと結ばれる。
そして! なんと、フィクションとしての面白さが「隙魔」以上だという皮肉がオイシイではないか。