「アル、チャールズ、そしてジャックが、昨晩異端審問官の所へ連れて行かれた」と、町長のジムが言った。「理由はわかっている。司祭のヨーセが使いの者を送ってよこした」
「どういうことなんだ――」と、町の集会所に集まった男達は、口々に叫んだ。
「狼男だ。トムの事件を、どこかで聞きこんだらしい。ゲリルは、それでこの町を訪れた、ということだ」
「でも、トムとアル達が、どう繋がるんだ。確かに裁判では証人に立った。しかしだからといって、彼らに狼男の疑いがかかるとも思われない」と、男達の一人が言った。
「そのとおりだ。しかしゲリルは、そうは思わなかったらしい。多少とも疑わしい者は、取り調べるということだ」と、ジムが言った。
「アリエナは、ダイアナから聞いたと言っていたが、トムとトーマス、もちろんアル達も、なにか事件と関係があったらしい」と、鍛冶屋のリチャードが言った。
「なんだと!」
と、アルの父親が、リチャードに殴りかかろうとした。周りにいた男達が押さえたが、アルの父親は息を荒げ、収まりきらないといった表情をしていた。
「ここは集会所だ。気づいたことがあれば言ってもらって構わん。しかし、ケンカだけはなしだ。そんなものからはなにも生まれやしない」と、ジムはそう言って、二人をいさめた。
「そうだ、アリエナだよ」と、ジャックの父親が声をあげた。「あの小娘を引っ捕らえて、ゲリルの所に突き出そう。あの娘が裁判で妙な言いがかりをつけなければ、今ごろこんなことで苦しまなくて済んだんだ」
「ちょっと待ってくれ」と、ジムが立ちあがったジャックの父親を落ち着かせた。「アリエナを突き出したからって、アル達が帰されるという保証はない。だいたい、狼男の疑いがあるということで捕まったんだ。女の子には関係がない」
「でもな、ジム」と、男達の一人が言った。「アリエナが言いがかりだったと認めれば、取り調べる必要はなくなるはずだろ?」
「そうだ!」と、みんなが賛成した。
「――おまえらは、なにもわかっとりゃせん」と、フランクじいさんが立ち上がって言った。「あいつらがアル達を捕まえたのは、ほんの前触れだよ。証言がどうのと、そんなことで引っ捕らえたんじゃないんだ。あいつらは、きっかけが欲しかったのさ。アル達が取り調べられれば、それが白だろうが黒だろうが、我々にも手が回る。
たくさんの人間が、十字架を背負うことになるだろう。それは、もう運命づけられたも同然だ――あきらめるしかあるまい」
フランクじいさんの話を、その時は誰も真に受けようとしなかった。集まった男達はその日、代表者をゲリルの元に派遣するということで、話し合いをまとめた。