3月27日NHK衛星第二放送の白鯨、英語の原題「Moby-Dick」は品の悪い俗語で、敢えて訳せば「馬鹿でかいあの野郎、あのもの」といった感じ?
映画の時代は1840年代、アメリカの経済・人口急膨張期。これから約30年、石油や電気が普及するまで商業捕鯨がアメリカを支える。もともと捕鯨はアラスカ、グリーンランド海岸部等で食料獲得のために行われていたものであるが、鯨油は灯油、ろうそく、化粧油として、髭は女性用コルセットの材料として重宝され、漁場が太平洋のシベリア、日本近海にまで広がる。(20世紀に入ると、乱獲が明らかとなり、ついには国際捕鯨委員会が結成される。)
この動きが、日本の鎖国政策を揺り動かし、やがて明治開国に至る。即ち、日本に最初接近するのはロシアであるが、19世紀に入るとイギリス、アメリカの捕鯨船等が出没し始め、難破船保護、薪水・食料補給、密貿易などで日本人と接触するようになる。そこで幕府は、以下のように政策を変遷させる。
①1808、幕府は間宮林蔵に命じ、樺太・沿海州を探査
②1825、異国船打払え令(外国船との接触禁止)を発す
③1837、アメリカ船モリソン号、漂流民を送還するため浦賀に来航、打払い
④1840、アヘン戦争
⑤1842、異国船内払い令を緩和、薪水・食料を供与
⑥1853、ペリー来航、この年ヨーロッパではクリミア戦争 1842年、土佐沖で遭難し捕鯨船に救助されたジョン万次郎は、マサチュセッツのベッドフォーッドでアメリカに上陸する。彼の面倒をみた捕鯨船の船長は奴隷解放運動にかかわっていて、万次郎に教育を施し、手に職をつけ・・・やがて日本に帰って日米交渉の通訳を命じられる。
白鯨のエイハブ船長は、まさにこのときモービーディクと戦っていた。彼は船員や漂流民など人間のことより、鯨をやっつけることしか頭にない。メルビルの原作小説は色々深い意味を含んでいて文学史上も有名なものであるが・・・
旧約聖書で不信心のため大魚に飲み込まれるヨナの話をどう解釈するかとも絡んで・・・人間が自然を克服するするという姿勢を強烈に感じる。 そういえば、この映画を見ると、すぐヘミングウエイの「老人と海」を思い出す。また少しニュアンスは違うが(純粋なエンターテインメントとして)「ジョーズ」も目に浮かぶ。
最近の環境論者風に言えば「西欧文明は自然を克服、飲み込んでしまう」「日本文明は自然と共生する」などという議論を思い出す。もっとも150年前とは違って、アメリカは鯨に対する姿勢を180度変えているが・・・。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます