映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

スコットランドの義族「ロブ・ロイ」

2011-01-27 18:59:21 | 舞台はイギリス・アイルランド
ロブ・ロイという映画がある。
18世紀スコットランドに実在した人物、本名ロバート・マクレガー(1761-1834)、通称「ロブ・ロイ=赤毛のロイ」を、「アイバンホー」で有名なスコットが小説化したものが下敷きという。

映画は難しくない。政治的にイングランドに押されっ放し、宗教改革も絡み貴族たちの対立が激しく、気象条件が悪く、飢饉が続く貧しいスコットランド、特にハイランド地域・・・・・ちょうど新大陸アメリカの勃興期、そちらへ逃げ出す人が後を絶たない。そこに現れた義族ロブ・ロイ・・・・・。

何のことない、スコットランドのカウボーイである。要はハイランドで牛を買い付け、低地へ追っていって売却し荒稼ぎした。それをもとに、マクレガー族の首領として、悪徳貴族に反逆した。中味は若干違うが、スコットランド版ロビンフッドと言えよう。剣の達人、民衆の英雄としてスターリング城近くには彼の銅像があるらしい。

ところでこの映画の歴史的背景・・・当時のイギリスの政治事情。

イギリスでは1688年、「名誉革命」でジェームズ2世を追放、その娘であるメアリーとその夫ウィリアム(オランダ総督・オラニエ公ウィレム3世)をオランダから招聘し、メアリー2世、ウィリアム3世共同王として戴冠させた。かくして前期スチュアート朝が「後期スチュアート朝」に切り替わる。

そして、1707年には「イングランド・スコットランド合同法」が成立し、
1714年にはアン女王が死去し、スチュアート朝が絶え、ドイツのハノーバ選帝侯を迎え「ハノーバー朝」が成立する。

こうした一連の動きの中で、イギリスは絶対王政を脱し「立憲王政」「政党政治」を確立してゆくのだが、スコットランドの地位は低下する一方。スコットランド人のイングランド人に対する不平不満は高まる。

もともと「名誉革命」時に、ジェームズ2世追落しに反対し、その正嫡をイングランド王に復位させるべきとした人たちを「ジャコバイト」と呼ぶが、彼らの反政府運動(ジャコバイト運動)はなかなか治まらず、特にスコットランドでは、国王暗殺未遂事件や反乱などが続く。これを鎮めるため、ウォルポールらホイッグ党が活躍する。

映画の中では、ジャコバイトを「スチュアート朝支持者」という言い方で、イングランドから軍を引連れてきている悪徳貴族と対決させている。
(了)

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