映画で楽しむ世界史

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歴史に忠実か?「キング・アーサー」

2010-12-26 19:06:33 | 舞台はイギリス・アイルランド

真面目なアーサー王物語

西欧社会の中でアーサー王は「国際アーサー王学会」まであるという人気者だが、このヒーローが歴史上実在の人物なのかどうか、まだ定説がない。世にアーサー王物語は今まで40本以上の映画があるといわれるが、今回のキングアーサーはやや「真面目に」歴史物として取り組んだ物といえるのだろう。

アーサー王とはこの映画の冒頭に述べられるように、仮に実在の人物とすれば、5、6世紀の人物であり、アーサー王伝説=騎士物語が出来上がった13世紀ぐらいまでの間、相当話が捻じ曲がり、針小棒大になり・・・キリスト教的脚色を帯びたであろうことは間違いない。

もともとイギリス、ブリテン島はケルト系ブリテン人が先住民とされるが、シーザーの頃よりローマ帝国に支配される。しかし4,5世紀になるとローマの支配が緩んでゲルマン民族の移動が始まり、ブリテン島にはアングル、サクソン、ジュート族などが上陸してくる。

ケルト系は、元々はヨーロッパの真ん中スイスあたりで鉄をも造り、独特の文化を誇ったが、どうも農耕が不得意だったのかどうか、人口があまり増えず、民族間の戦いには弱くて、隅へ隅へ追いやられる。 ブリテン島でもケルトは西へ西へ追いやられる。やがてイングランドはアングロサクソン(あるいはデーン人そしてフランス人)に支配されるようになるが、その過程で500年頃、以下の伝説が生まれる。

「ケルト系ブリテン人は「アルトリウス」という英雄の下に死に物狂いの戦いを繰り広げた。500年の「ベイドン山の戦い」では少数で大勝利を収める。そしてその後しばらくは「ブリテン人の黄金時代」と呼ばれる平和が訪れる・・・」 この戦いの武将の一人がアーサー王である・・・約300年後ウエールズの僧が書いた「ブリテン人の歴史」という本の中で始めてそういう記述が始まり・・・更に300年後「ブリテン人列伝」という本の中で「アーサー王に関する物語群」が現れ・・・やがてこれがフランス語に訳され、大陸風な脚色が加わってゆく。

時あたかもキリスト教の権威高揚期・・・ヨーロッパは修道院活動、叙任権闘争、十字軍活動などローマ教皇の中央集権的支配が蔓延していた。「騎士」とは・・・各地の王様の武力サイドから言えば「将校、侍大将、旗本」のようなものだが、王様をうえから見下ろそうとする教会サイドから言えば「聖戦士、布教戦士」といったところ。キリスト教のためには「かっこよく、女性を大事にする」といったイメージをも埋め込みたかったのであろう。

かくしてアーサー王物語は、どんどん「美談風に」変化を遂げ・・・現代の若者にもお馴染みの人物や物語を定着させる、

キャメロット王国

②王の剣エクスカリバー

③伝説の王妃グィネヴィア

④強いランスロット

円卓の騎士たち

魔術師マリーンをうみ そしてケルト文化は今ではイギリス北西部ウエールスやスコットランド、アイスランドに残存するのみと言われるが、例えばピーターパンやアーサー王物語に見られるような無邪気さ、神秘主義的要素が多くの西洋人に愛されている。

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