韓国大手紙・朝鮮日報12年2月21日記事抜粋
4月の韓国総選挙を控え、与党・セヌリ党と野党・民主統合党が相次いで打ち出した福祉公約を全て実現させるためには、年間最大で67兆ウォン（約4兆7600億円）、5年間で340兆ウォン（約24兆1400億円）がかかるとする政府試算が示された。67兆ウォンは、韓国の今年の福祉予算92兆6000億ウォン（約6兆5800億円）の3分の2を超える額で、李明博政権の5年間に福祉予算が23兆8000億ウォン（約1兆6900億円）増えたのに比べ、2倍を超える金額だ。
企画財政部（省）のキム・ドンヨン第2次官は、同部の福祉タスクフォース（特別作業班）の初会合終了後、記者団に対し、2月17日までに政界から示された福祉公約を選別し必要財源を試算したところ、年間43兆－67兆ウォン（約3兆600億－4兆7600億円）が必要との結果が出たと語った。キム次官は「公約が実施可能なものかどうか、福祉タスクフォースで検証を進めたい」と述べた。
韓国政府が、政界が示した福祉公約に必要な財源を試算し、それを検証していくと表明したのは前例がない。企画財政部の高官は「これまで政府が消極的に対応してきたという印象を与えたのは事実だ。政界の要求をそのまま受け入れれば、財政の健全性が深刻に損ねられるため、これ以上放置できないとして下した決定だ」と述べた。与野党のばらまき福祉競争が、政府と政界の対立に発展した格好だ。
■日曜深夜まで財源試算
「まだ計算中で確定値は出ていない」
福祉タスクフォースの初会合が開かれる前日の19日深夜、電話の向こうから企画財政部関係者の疲れた声が聞こえた。京畿道果川市の政府合同庁舎では、企画財政部のフロアの照明が未明までついていた。政界の福祉公約に資金がどれだけかかるのか、計算を終えるためだった。
企画財政部は当初、政界の福祉公約に関する財源試算に消極的だった。正確な事業対象と範囲を明示した公約が少なく、党レベルの公約になっているのかがはっきりしないケースも多かったからだ。推定値が実際に必要な財源とかけ離れ、国民の信頼を失うのではないかという反対論が、政府部内には存在した。
しかし、相次ぐばらまき福祉公約を企画財政部が「無理な要求だ」として門前払いすると、大統領府（青瓦台）や一部官庁からは「企画財政部は安易すぎる。朴宰元（パク・チェワン）長官の姿が見えない」といった不満の声が上がり、状況が一変した。
企画財政部は予算室の職員を総動員し、セヌリ党の35項目、民主統合党の30項目の福祉公約を全て分析し、2月19日未明に推定値を弾き出した。20日に発表された推定値が43兆－67兆ウォンという幅を持たせたものになったのは、こうした裏事情が反映されたものだ。企画財政部予算室の関係者は「事業の対象と範囲を推定し、必要な予算を算出したため、誤差は拡大せざるを得ない」と述べた。
■巨額財源必要な公約相次ぐ
しかし、韓国政府は同日、二つの重要な情報を公表しなかった。どの公約にどれだけ予算が必要かという内訳と、公約がどの党のものかについて、詳細を明示しなかったのだ。選挙に影響を与えかねないことや、政界からの反論を考慮した措置とみられる。キム次官は「セヌリ党と民主統合党の公約全体を分析対象にした。事業部門別の必要財源試算は今後変わることがあり得るため、公表しない」と述べた。
ただし、企画財政部は来年1兆ウォン（約710億円）以上の財源が必要となる公約については簡単に言及した。個別事業で最も多額の財源が必要なのは「基礎生活保障受給者（生活保護受給者に相当）、扶養義務者の基準緩和」で、毎年少なくとも4兆ウォン（約2840億円）の資金がかかることが分かった。この公約は、貧困層の高齢者でも、子どもに所得がある場合、生活費支援の対象から除外している現行制度を廃止する内容で、与野党双方が掲げている。実現すれば、100万世帯が恩恵を受けると推定される。
しかし、政府内部では「正常に働いている子どもがいる高齢者が国から基礎生活費まで受け取るのは問題がある」との意見が多い。
このほか、所得下位70％層の子女を対象に大学授業料を半額化するとの公約には2兆ウォン（約1420億円）以上、軍人の給与引き上げにも1兆6000億ウォン（約1140億円）以上の財源が必要になることが明らかになった。
韓国租税研究院は、現行の福祉制度を維持するだけでも、2050年には国内総生産（GDP）に対する政府債務の割合が137％に達すると試算している。
4月の韓国総選挙を控え、与党・セヌリ党と野党・民主統合党が相次いで打ち出した福祉公約を全て実現させるためには、年間最大で67兆ウォン（約4兆7600億円）、5年間で340兆ウォン（約24兆1400億円）がかかるとする政府試算が示された。67兆ウォンは、韓国の今年の福祉予算92兆6000億ウォン（約6兆5800億円）の3分の2を超える額で、李明博政権の5年間に福祉予算が23兆8000億ウォン（約1兆6900億円）増えたのに比べ、2倍を超える金額だ。
企画財政部（省）のキム・ドンヨン第2次官は、同部の福祉タスクフォース（特別作業班）の初会合終了後、記者団に対し、2月17日までに政界から示された福祉公約を選別し必要財源を試算したところ、年間43兆－67兆ウォン（約3兆600億－4兆7600億円）が必要との結果が出たと語った。キム次官は「公約が実施可能なものかどうか、福祉タスクフォースで検証を進めたい」と述べた。
韓国政府が、政界が示した福祉公約に必要な財源を試算し、それを検証していくと表明したのは前例がない。企画財政部の高官は「これまで政府が消極的に対応してきたという印象を与えたのは事実だ。政界の要求をそのまま受け入れれば、財政の健全性が深刻に損ねられるため、これ以上放置できないとして下した決定だ」と述べた。与野党のばらまき福祉競争が、政府と政界の対立に発展した格好だ。
■日曜深夜まで財源試算
「まだ計算中で確定値は出ていない」
福祉タスクフォースの初会合が開かれる前日の19日深夜、電話の向こうから企画財政部関係者の疲れた声が聞こえた。京畿道果川市の政府合同庁舎では、企画財政部のフロアの照明が未明までついていた。政界の福祉公約に資金がどれだけかかるのか、計算を終えるためだった。
企画財政部は当初、政界の福祉公約に関する財源試算に消極的だった。正確な事業対象と範囲を明示した公約が少なく、党レベルの公約になっているのかがはっきりしないケースも多かったからだ。推定値が実際に必要な財源とかけ離れ、国民の信頼を失うのではないかという反対論が、政府部内には存在した。
しかし、相次ぐばらまき福祉公約を企画財政部が「無理な要求だ」として門前払いすると、大統領府（青瓦台）や一部官庁からは「企画財政部は安易すぎる。朴宰元（パク・チェワン）長官の姿が見えない」といった不満の声が上がり、状況が一変した。
企画財政部は予算室の職員を総動員し、セヌリ党の35項目、民主統合党の30項目の福祉公約を全て分析し、2月19日未明に推定値を弾き出した。20日に発表された推定値が43兆－67兆ウォンという幅を持たせたものになったのは、こうした裏事情が反映されたものだ。企画財政部予算室の関係者は「事業の対象と範囲を推定し、必要な予算を算出したため、誤差は拡大せざるを得ない」と述べた。
■巨額財源必要な公約相次ぐ
しかし、韓国政府は同日、二つの重要な情報を公表しなかった。どの公約にどれだけ予算が必要かという内訳と、公約がどの党のものかについて、詳細を明示しなかったのだ。選挙に影響を与えかねないことや、政界からの反論を考慮した措置とみられる。キム次官は「セヌリ党と民主統合党の公約全体を分析対象にした。事業部門別の必要財源試算は今後変わることがあり得るため、公表しない」と述べた。
ただし、企画財政部は来年1兆ウォン（約710億円）以上の財源が必要となる公約については簡単に言及した。個別事業で最も多額の財源が必要なのは「基礎生活保障受給者（生活保護受給者に相当）、扶養義務者の基準緩和」で、毎年少なくとも4兆ウォン（約2840億円）の資金がかかることが分かった。この公約は、貧困層の高齢者でも、子どもに所得がある場合、生活費支援の対象から除外している現行制度を廃止する内容で、与野党双方が掲げている。実現すれば、100万世帯が恩恵を受けると推定される。
しかし、政府内部では「正常に働いている子どもがいる高齢者が国から基礎生活費まで受け取るのは問題がある」との意見が多い。
このほか、所得下位70％層の子女を対象に大学授業料を半額化するとの公約には2兆ウォン（約1420億円）以上、軍人の給与引き上げにも1兆6000億ウォン（約1140億円）以上の財源が必要になることが明らかになった。
韓国租税研究院は、現行の福祉制度を維持するだけでも、2050年には国内総生産（GDP）に対する政府債務の割合が137％に達すると試算している。
