シニア花井の韓国余話

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アクシネット買収:フィラコリア会長の「スピード経営」

2011年06月03日 10時33分00秒 | Weblog
 (韓国大手新聞、朝鮮日報 11.5.21記事抜粋)
本社逆買収から4年、タイトリストも傘下に
 フィラコリアの尹潤洙(ユン・ユンス)会長(66)は、スポーツファッション業界であこがれの的で、「ビジネスの魔術師」とも呼ばれる存在だ。普通の会社員からスタートし、イタリアのブランド「フィラ」の韓国支社長に就任したかと思いきや、フィラ本社を逆買収し、世界のスポーツファッション業界にその名をとどろかせた。
 フィラ本社の買収は、世界トップを目指す尹会長の目標達成の過程にすぎなかった。尹会長は今回、約12億ドル(約980億円)という大型の買収案件を成功させ、「世界トップのゴルフブランド」を手中に収めた。世界のゴルファーが愛用する「タイトリスト」のゴルフボールは、1949年から実に62年にわたり世界のトップシェアを守っている。
 尹会長の成功の秘訣(ひけつ)は、想像もできないアイデアを考え出し、他人よりも先に挑戦する「スピード経営」にある。アクシネットの買収も尹会長の面目躍如だ。昨年末、アクシネットが売却されることになった瞬間から、尹会長は「ゴルフ用品業界首位の市場支配力と100年間培ってきたフィラのファッション分野でのノウハウを融合すれば、世界のゴルフ市場を揺るがすことができる」と考えた。
 尹会長は「アジア市場でフィラが蓄積したノウハウと巨大なネットワークを通じ、アクシネットがアジア市場で新たな成長機会を得られるように努力したい」と話した。
 フィラコリアは、韓国のスポーツ衣料業界で売上高2位の座にある。フィラコリアが直接経営しているフィラ米国法人は買収当時、年間6400万ドル(約52億円)の赤字を出すなど経営難に陥っていたが、昨年から黒字に転換した。フィラはブラジル、インドなど新興市場で毎年50-60%のペースで成長しており、中国では業界2位のスポーツ企業「安踏(アンタ)」と合弁で、今年だけで600カ所に出店した。
 尹会長は苦しい学生時代を過ごした。二男七女の次男として生まれ、生後100日もたたずに母と死別した。父は尹会長が高校2年だったとき肺がんで他界した。尹会長はその後、韓国外国語大政治外交学科を卒業し、30歳で海運公社(現在の韓進海運)で社会人生活を始めた。そして、米流通大手J.C.ペニーの靴、ハンドバックのバイヤーとして頭角を現し、37歳で靴メーカー、和承の輸出担当理事にスカウトされた。
 1984年に独立し、輸出事業に集中した。尹会長が生産、出荷した靴は米国で1億ドル(約82億円)を売り上げる大成功を収めた。その際、ちょうど韓国進出を狙っていたフィラの経営陣の目にとまり、91年にフィラコリアの最高経営責任者(CEO)に抜てきされた。
 尹会長の歩みはそれにとどまらなかった。2007年にフィラのイタリア本社を買収する決心を下したのだ。韓国ブランドを世界ブランドに育て上げることも重要だが、95年受け継がれたブランドの歴史と価値を一気に買い取ることで、韓国の名を世界に知らしめようとしたのだった。
 尹会長の話には必ず「創意性」「真実性」という言葉が出てくる。フィラを買収する過程では、買収資金として銀行から4500億ウォン(約340億円)を借り入れた上で、中国、南米、欧州などの販売会社からブランド使用料(ロイヤルティー)の一部を先払いしてもらい、債務返済に充てるモデルを確立させた。こうした手法による企業買収は韓国の金融史上初めてだった。尹会長を信用できなければ、それほど多額の融資取引は不可能だった。尹会長はしばしば「人を動かすのは人だ」と信頼の大切さを説く。尹会長は投資家に3年以内に株式上場を果たすと約束した。フィラコリアは昨年、韓国取引所の有価証券市場(メーンボードに相当)に上場し、約束は守られた。
 尹会長の持論は「失敗と経験から創意的なアイデアが生まれる」というものだ。損をしないと、利益も生まれないという考えだ。サラリーマンのあこがれの的である尹会長も何度か失敗し、転職した経験がある。
 内需中心の企業ではなく、世界的なブランドを目指すフィラコリアは、今回の買収を契機に、スポーツ衣料・用品の総合企業として生まれ変わる構えだ。尹会長は「2014年までにフィラの全世界での売上高を30億ドル(約2460億円)まで伸ばし、ナイキ、アディダス、リーボックと競合する世界4位のブランドに育て上げるのが目標だ」と抱負を語った。
 ゴルフ用品首位ブランドの買収にとどまらず、ナイキなど世界的なブランドと堂々と渡り合うという尹会長の目標がいつ現実となるか注目が集まっている。

●アクシネット買収:資金は未来アセット、経営はフィラコリア担当
 未来アセット私募ファンドとフィラコリアによるアクシネット買収は、韓国のプライベート・エクイティー・ファンド(PEF)業界にとって大きな意味を持つ「事件」だ。
 PEFとは、投資家から資金を集め、企業を買収し、その企業が成長を遂げた時点で株式を売却し、収益を上げるファンドだ。どの企業に投資すれば利益が出るか、どの企業に経営を任せるか、どの年金ファンドや銀行から資金を誘致するかなどを総合的に判断、決定する合併・買収(M&A)の司令塔がPEFだ。
 これまで国民年金などが海外の不動産を買収するケースや、韓国のPEFが海外でコンソーシアムに加わるケースはあった。しかし、純粋に韓国資本のPEFが主導的役割を果たし、世界の有名ブランドを買収したのは今回が初めてだ。
 未来アセットは産業銀行による5億ドル(約410億円)前後の資金支援を基に、戦略的投資者のフィラコリアと手を結んだ。資金は未来アセットが出し、経営はフィラコリアが引き受ける形だ。未来アセットはさらに国民年金などファンド系資金を誘致することにも成功した。この結果、アクシネットの経営を担当するフィラコリアの初期投資はわずか1億2300万ドル(約100億円)とされる。韓国企業が世界的なブランドを買収し、世界市場の中心に立つ過程で、資金調達の役割をPEFが立派に果たしたことになる。M&A業界関係者は「まだ初期段階にある韓国のPEFが12億ドル(約980億円)を超える大規模な取引を成功させた意味は大きい」と評価した。
 未来アセットは、申智愛(シン・ジエ)選手をスカウトし、プロゴルフチームを運営しており、これまでも世界の著名選手のスカウトなどゴルフ関連の投資を検討してきた。未来アセットは「今回の買収で、PGA(米プロゴルフ協会)やLPGA(米女子プロゴルフ協会)で活躍する選手だけでなく、世界的なブランドも韓国企業が保有することになった」と説明した。
 PEFは買収した企業が上場し、株価が上昇した段階で、実質的経営を担当する戦略的投資者(今回の場合はフィラコリア)と協議の上で株式を処分し、投資先企業から手を引くことが多い。


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