シニア花井の韓国余話

韓国交流50年の会社経営を引退しソウル定住の日本人が写真とともに韓国の案内をします。

MERSより深刻な結核【コラム】 

2015年07月30日 22時09分16秒 | Weblog
 韓国で最も深刻な感染症は何だろうか。多くの人が中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)、新型インフルエンザ、エイズなどを思い浮かべるだろう。しかし、MERSで韓国全土が非常事態に陥った7月9日、ソウル大学医学部のホ・デソク教授は「MERSよりも結核の方が深刻な病気だ」と主張した。結核こそ最も深刻な感染症だというのだ。医療界の重鎮であるホ教授の主張は、当時のMERS危機に埋もれてあまり注目されなかったが、MERS終息宣言を検討する段階となった今、綿密に検討する必要がある。
 結核は人類の歴史で最も多くの命を奪った感染症だ。紀元前7000年の石器時代の化石からも結核の痕跡が発見されている。罹患(りかん)すれば患者の50%以上が死亡するほど恐ろしい病気だったが、1940年代に抗結核薬が登場したことで、薬さえきちんと飲めば完治が可能になった。
 ところが、韓国は依然として「結核後進国」という汚名を逃れられないでいる。疾病管理本部は7月22日、結核の新規患者が3年連続で減少したと発表したが、それでも昨年3万4869人が新たに結核と診断され、2013年に2230人がこの病気で死亡した。毎日100人が新たに結核にかかり、6人以上が結核で死亡している計算になる。その結果、人口10万人当たりの結核患者数は84.9人で、この数字は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最も高い。米国は10万人当たりの結核患者数が4.1人、日本は23人くらいだ。現時点で確定診断を受けた患者が186人、死亡者が36人のMERSとは比較にならないほど深刻な病気だ。
 しかも、MERSは空気感染がほとんどなく、病院という特殊な環境で感染するケースが多いが、結核は空気感染する代表的な感染症だ。初期症状は風邪に似ており、患者のほとんどが結核に感染したことを気付かずに出歩いて感染を拡大させる傾向がある。結核患者1人が確定診断を受けるまでに平均20人に菌をまき散らすと言われている。それでも韓国社会では結核に対する警戒心があまり高くないのが現実だ。
 結核菌が体に潜伏していても90%は症状がない。これを「潜伏結核」と言うが、結核菌感染者の10人に1人は体の免疫力が落ちた時に菌が活動を始め、症状が現れる。また、結核は3・4種類の薬を6カ月間きちんと飲まなければ完治しない。だが、1カ月ほど飲むと症状が消えるため、服薬を中断する人が多い。このため再発が繰り返され、結核がまん延するのだ。結核の対処法・予防法はMERSとほぼ同じだ。保健当局は「2週間以上せきが続いたら必ず結核検査を受け、症状がある時は他人との接触を避けて、せきエチケットを守ることが結核を減らすのに重要だ」と話している。
 MERSは全国民が警戒心を持って対応した結果、終息宣言目前となっている。今はMERS対応ノウハウを礎に、同じ態勢で結核患者を減らすことに全力を注ぐべき時だ。結核もMERSのように、確固たる意志さえあれば大幅に減らせるのだ。
社会政策部=キム・ミンチョル次長
韓国大手新聞 朝鮮日報15年7月26日記事抜粋


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。