数日前、中国の杭州で幕を閉じたG20。
中国政府が威信をかけた国際首脳会議の開催に、戒厳令さながらの規制が敷かれたことが話題になったばかりである。
そんなG20関連のニュースを読んでいて、
「お!」
と目に留まった記事があった。
数日前のダイヤモンド・オンラインの記事
「中国がG20で見せた、世界で孤立したくないという本音」
の冒頭にこんな一段が出てくるのである。
「杭州サミット期間は西湖の畔にもほとんど市民が見えなかったでしょう。
杭州市民は約1週間の有給休暇をもらっていたの。杭州の戸籍を持っていれば、
全国どこの観光スポットに行っても入場券が無料になるというサービス付きだった。
ただ、ルックスが比較的良い市民、
特に党や政府関係の職場で働いている人間は半ば強制的に西湖の畔を散歩するように命じられたわ。
私もその一人」
杭州市人民政府で働く女性幹部が私にこう語った。
こ、こんなシーン、確か『紫禁城の月』にもあったような・・・・(下巻310頁)。
・・・・つまり、来客のために「俳優」の如く、エキストラを用意し、さも自発的に散歩しているように西湖の畔を歩かせる・・・・。
しかも見目麗しさが動員の選別基準とされている・・・・。
今も昔も、官僚がやることは変わっていないということか。。。
そしていつの時代もそれに振り回される庶民の悲哀は同じ・・・。
ご自身も官僚としての経験のある作者・王老師の作品の醍醐味は、ここにあると言える。
そしてこれは、日本人作家には、なかなか描けない内容だ。
肌感覚、実体験の違いは、どうしようもない・・・。
本書は今から400年も前の1600年代の「歴史小説」ではあるが、それだけのものとして読むのは、大変もったいない!
今の中国や中国の人々の考え方を理解する上でも役に立つ、中国的エピソードが満載なのである。
中国は科挙による完全な実力主義の官僚登用が確立した宋代の時点で、史学的には「近代」に突入した、と言われる。
一定の試験を経て選抜された巨大な官僚群による、皇帝の元での「合議制」。
そしてその官僚を中央から派遣して地方を治める「中央集権」。
・・・その基本的な体制が、今でもあまり変わりがないのである。
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