谷沢健一のニューアマチュアリズム

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ヒルマン監督(北海道日本ハム)の思考

2006-11-06 | プロ野球への独白
 今年の日本シリーズは、私にも予想外の4勝1敗という結果だった。その「北海道日本ハム」の日本一は、ほとんどの野球ファンの常識をくつがえす事柄が本質にあったと言える。プロ野球が創設されてから70年以上に及ぶ既成概念を覆す、SHINNJOという破天荒な一選手の最後の大舞台を、勝利の女神が演出したことも手伝って、チームとファンが一体となった見事な優勝だった。
 かつては、北海道は巨人ファンが圧倒的多数だった。だが、「コンサドーレ札幌」が結成されて以来、サッカーが一時はプロ野球よりも盛り上がった。そこへ進出した日本ハムが、球団経営に命を張って、3年で北の大地を文字通りフランチャイズ化したのである。
 ファンもまた、Jリーグの応援スタイルを導入したり、小笠原選手の応援には東京都小笠原諸島のイルカのオブジェを持ち込んだりした。北海道は、こんなにも新しいものを受容する、何事にもとらわれない、ふところの深い、決して排他的ではない土地柄だったのだ。
 札幌ドームの観衆42030人が見守る中、最初に胴上げされたのは新庄剛志であった。続いて中心打者・小笠原、ベテラン田中幸雄、亡き先代オーナーの遺影を胸に抱いた大社オーナー、なんと最後の最後にヒルマン監督が宙に舞った。昨年のバレンタインもそうだったと思うが、外国人監督として日本の文化や日本人の気質をいち早く理解した、そのポジティブなバランス感覚は頭が下がる。時には、好きなギターを弾いてエンターテナーぶりを発揮し、自ら野球ファン獲得に奔走することも厭わなかった。だからこそ、女性ファンやプロ野球に関心の薄かった層も開拓できたのではないか。
 レギュラーシーズンを一位で通過して、一通りのセレモニーを終えたヒルマンが、グランドを整備するグランドキーパーのところに行き、ねぎらいの言葉を掛けている映像を、私は目にすることができた。こんな一面は、スタッフや選手たちを前面に押し出していく彼の考え方の基盤となっているのだろう。
 3年前、ヒルマン監督が就任した時の挨拶を思い出す。古代ギリシア哲学の言葉を引用するあたりインテリジェンスを感じさせた。それはロゴスとパトスである。「最初に言葉(ロゴス)ありき。私は全ての人とコミュニケーションによって、明るいチームをつくりたい。またパトス(情熱)をもってチームを牽引していきたい」と語った。
 アジアシリーズも11月9日から始まる。ヒルマン監督はシリーズ後、いくつかの大リーグ球団からの監督要請もあり、来年度は北海道を去るかもしれないが、かつて、2年足らずの在任期間で、内村鑑三や新渡戸稲造などを育成したクラーク博士のように、その偉業は賞賛されてほしいものだ。

3 コメント

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Unknown (Unknown)
2006-11-07 02:31:40
はじめまして。いつも更新を楽しみにしています。
北海道へ日本ハムが移転してから3年で日本一になりましたね。
他ファンですが、新しいプロ野球チームがやってくる!と決まって、実際に来て、生活に溶け込んで、日本一になるまでの3年間の過程を札幌で過ごした札幌住民のみなさんがうらやましくて仕方ありません。

ところで、「はじめに言葉ありき」は聖書だと思います。。
http://www.google.co.jp/search?q=%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%AB%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%8D&start=0&hl=ja&lr=lang_ja&ie=utf-8&oe=utf-8&client=firefox&rls=org.mozilla:ja:official
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ご指摘ありがとう (谷沢健一)
2006-11-07 21:03:33
そうでした。「最初に言葉ありき」は、ヨハネの福音書でしたね。ロゴスというギリシャ語に引かれて、うっかりギリシャ哲学と書いてしまいました。
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ロゴス (「緑の星」の牧師)
2006-11-12 04:02:50
 就任の挨拶の言葉、「初めに言があった」(新約聖書のヨハネ福音書」ですが、13歳のときに洗礼を受けたヒルマン監督の信仰の姿勢がこの聖書の言葉の引用に表れていると思いました。
 キリスト教の坊主(牧師)を稼業とするものにとってはたいへん教えられます。
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