谷沢健一のニューアマチュアリズム

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キャンプ地紀行(その9)

2006-02-08 | プロ野球への独白
 高速道路で本島を北へ約40分行くと、宜野座村のタイガースタウンに着く。目の前に銀色の光彩を放つ大きな卵形のドームが現れ、初めての訪問者はみな驚かされる。
 ドーム内に足を踏み入れると、すでにアップが行われており、毛並みの長い人工芝でストレッチングをしている選手たちの顔には、高い天井から洩れてくる陽光があたり、前年ペナントを制した逞(たくま)しさがその表情に感じられる。
 この施設に地元が力を入れていることが、あちこちにかいま見られるが、その熱意の強さからいえば、40年も使い慣れた高知・安芸キャンプも短期間にならざるをえないだろう。
 第2クール1日目の練習がスケジュール表に沿って時を刻むように進行する。シートノック、投内連係、ランダウンプレー。野手たちの間では次のプレーへの指示の声が響き渡る。肩の故障も癒えた浜中選手も元気になった。呼応するように若い投手陣にも活気がある。
 チームプレーが終わると、ブルペンに足を運ぶのが解説者の常だ。「何と言っても阪神の投手陣は若くて球にも勢いがある」と感心しているのは元日本ハム監督の上田氏だった。鹿取・川口両氏とも隣り合わせだった。ご両人とはクラブチームの話に花が咲いた(鹿取氏は茨城ゴールデンゴールズ、川口氏は鳥取県ベースボールクラブ)。
 私は一通り投手陣を見終えて、本球場のグランドへ降りた。岡田監督と挨拶を交わし、雑談をまじえながら、今年の投手起用、新外国人選手と新戦力、(2軍監督時代に育てた)浜中選手への期待などを聞いた。
 選手との間では、桧山選手と打撃論について話が弾んだ。話題は、「同じ左打者でも、右投げ左打ちの打者と左投げ左打ちの打者との違い」、とくに「内角打ち」の相違点である。
 前者は、右手が器用に使えるので、フェアグランドに入れようとしてしまい、右翼ファールゾーンには大きなファールを打てない傾向がある。後者は、右手と左手が一体となり、身体の回転で内角に捌(さば)ける利点がある。これらは以前、週刊ベースボールマガジン連載の「打撃分析」でも書いたこともあり、桧山選手の賛意を受けた。
 キャンプ地で、研究熱心な選手と接して実戦的な技術論などを語り合うと、改めて野球のプレーの「深さ」を思い知らされる。