満塁打のきっかけを作った森君も、木更津から通い続けてきた。彼は寡黙なほうだから、夜から朝方まで仕事が入っていることなど、こちらは知らずに先発に起用していたが、どうも動きがかなり鈍い時がある。ミスすると、チーム内からも野次られ、それを黙殺し続けていても、鬱積したモヤモヤは爆発して取っ組み合いの喧嘩になる。1度は練習時に、2度目は試合中に起きた。私は叱りはしなかった。彼の内面をすこしはわかっていたからである。
野球一筋できた選手は、自己表現の下手な者が多い。だから、謝罪にくれば、じっくり話を聞いてやる。原則として、こちらから呼びつけない。自分に過ちがあると思えば、必ず謝りに来るはずだからだ。昨年、大きな過失を犯した選手を呼んで叱責したら、呼びもしないチームメートがついてきて、言葉では謝罪しても内心では逆に反発していた。代わって、チームメートが弁解ばかりしていた。
クラブチームは、じつに選手同士の関係がややこしい。その点ではプロ野球以上だ。メンバーの目的も技量も生活環境もまちまちである。レギュラークラスの選手たちは望みが高い。もっとも、だからこそYBCに集まってきたとも言える。自分の技量向上のためには、他を省みないなことが少なくない。それはそれでかまわないのだが、チーム全体に大きな悪影響を及ぼすことになる場合は、監督としてまた部長として黙認しておけなくなる。そのため、チームを去ることになるのが、残念なことだが珍しい話ではない。
森君をはじめ、レギュラーの大半は、プロ野球の世界やプロに準ずる(と信じられている)独立リーグの世界を目指している。そのために、他の同世代の若者と違って、安定した就職など歯牙にもかけない。貧しい生活が苦にならない。金よりも自己の向上を求める若者たちである。
そういう高い目標を胸に描いて羽ばたいて行って欲しいが、フェニー(不死鳥の雛)はチキン(鶏もしくは臆病者)でないのだから、後足で砂をかけるような所業は謹んで欲しいといつも思っている。YBCはレギュラークラスの選手のためだけにあるのではない。自分の野球観を人に語るのはいいが、押しつけるのは危うい。常に心しておきたいことだ。
平池君もふだん私からこっぴどく怒られてる口だ。はじめは彼はうつむいていた。それが悔しさを表に出してぶつけてくるタイプに変わってきた。試合で何度も打ち込まれ走られていくうちに、練習の回数も増えていった。何よりも表情が明るくなったきた。その心の変わりようが、この試合での終盤の好投に結びついたのではないかと思う。彼は久々に勝利投手になった。
さて、翌日の準決勝のJFE東日本は力量差が歴然とした結果になったが、大敗後の選手たちの顔を見ていると、生き方においても打たれ強い選手が増えてきたように思われた。YBC2年目の大収穫であった。
野球一筋できた選手は、自己表現の下手な者が多い。だから、謝罪にくれば、じっくり話を聞いてやる。原則として、こちらから呼びつけない。自分に過ちがあると思えば、必ず謝りに来るはずだからだ。昨年、大きな過失を犯した選手を呼んで叱責したら、呼びもしないチームメートがついてきて、言葉では謝罪しても内心では逆に反発していた。代わって、チームメートが弁解ばかりしていた。
クラブチームは、じつに選手同士の関係がややこしい。その点ではプロ野球以上だ。メンバーの目的も技量も生活環境もまちまちである。レギュラークラスの選手たちは望みが高い。もっとも、だからこそYBCに集まってきたとも言える。自分の技量向上のためには、他を省みないなことが少なくない。それはそれでかまわないのだが、チーム全体に大きな悪影響を及ぼすことになる場合は、監督としてまた部長として黙認しておけなくなる。そのため、チームを去ることになるのが、残念なことだが珍しい話ではない。
森君をはじめ、レギュラーの大半は、プロ野球の世界やプロに準ずる(と信じられている)独立リーグの世界を目指している。そのために、他の同世代の若者と違って、安定した就職など歯牙にもかけない。貧しい生活が苦にならない。金よりも自己の向上を求める若者たちである。
そういう高い目標を胸に描いて羽ばたいて行って欲しいが、フェニー(不死鳥の雛)はチキン(鶏もしくは臆病者)でないのだから、後足で砂をかけるような所業は謹んで欲しいといつも思っている。YBCはレギュラークラスの選手のためだけにあるのではない。自分の野球観を人に語るのはいいが、押しつけるのは危うい。常に心しておきたいことだ。
平池君もふだん私からこっぴどく怒られてる口だ。はじめは彼はうつむいていた。それが悔しさを表に出してぶつけてくるタイプに変わってきた。試合で何度も打ち込まれ走られていくうちに、練習の回数も増えていった。何よりも表情が明るくなったきた。その心の変わりようが、この試合での終盤の好投に結びついたのではないかと思う。彼は久々に勝利投手になった。
さて、翌日の準決勝のJFE東日本は力量差が歴然とした結果になったが、大敗後の選手たちの顔を見ていると、生き方においても打たれ強い選手が増えてきたように思われた。YBC2年目の大収穫であった。