ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

ジャン・ルノワール・2〜『どん底』

2017年12月10日 | 戦前・戦中映画(外国)

『どん底』(ジャン・ルノワール監督、1936年)を観た。

賭博で莫大な借金を抱えている“男爵”は一攫千金を夢見るが、とうとう最後の賭けにも負け、財産を使い尽くしてしまう。
場末の木賃宿に住むペペルは、ある夜、その“男爵”の屋敷に忍び込み、“男爵”に拳銃を突き付ける。
が、お金のない“男爵”は動じない。
自殺も考えていた“男爵”は、この盗っ人のペペルに酒を勧め、彼の生活ぶりを聞いているうちに友情を抱いていき・・・

ゴーリキーの戯曲をルノワールも共同して脚色した作品、『どん底』。

木賃宿には、ペペルほか“役者”などいろいろな境遇の人が住んでいて、宿主のコスティリョフに至っては盗品を捌いている。
そこへ、無一文になった“男爵”も、とうとうやって来て下宿人になる。
貧しいながらの人たちの、ここでの生活の自由。
“男爵”にとっての、今まで知らなかった世界の、精神の開放感と喜び。

ペペルは、宿主の妻ワシリッサと深い仲にあるが、清算したいと思っている。
そしてペペルは、ワシリッサの妹ナターシャを好いていて、一緒に新しい世界へ出て行きたいと想っている。
しかしワシリッサは言う、「私を裏切るとひどい目に遭うからね」

この木賃宿に、盗品故買を嗅ぎつけて官憲の監督官がやって来る。
監督官は、この木賃宿に同居しているナターシャを見て、大いに気に入る。

後日、この宿に監査が入る可能性が出てきた。
そうなれば、営業許可が取り消されるかもしれない。
利用されるのはナターシャ。
監督官に誘われたナターシャは、仕方なく二人だけの食事をする。
そこへ現れたペペルが、監督官を打ちのめす。
そしてナターシャに、見知らぬ土地へ行こうと誘うペペル。

その後で、この貧しい世界に起きる悲劇。
どん底の生活がなせる殺人事件。
だが、陰鬱な世界を描いているはずなのに、ラストは以外と明るい。

そのラストでビックリするのは、『モダン・タイムス』(チャーリー・チャップリン監督)のラストとそっくりということ。
『モダン・タイムス』は、二人が画面の奥に進んでいくが、この作品では、二人がこちらに向かって歩いてくる。
二作品とも1936年。
このラストは単なる偶然なのかは調べてないのでわからないが、しかし不思議な一致であった。

それと、ペペルのジャン・ギャバンと“男爵”のルイ・ジューヴェが、とても印象に残る作品であった。


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