ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『ジョーカー』を観て

2019年10月16日 | 2010年代映画(外国)
『ジョーカー』(トッド・フィリップス監督、2019年)を観てきた。

“ゴッサム・シティ”の街は、市衛生局のストでゴミが大量に散乱している状態である。
ピエロ派遣会社所属のアーサー・フレックは、商店の店じまいセール宣伝中に、ストリートギャングの若者から看板を奪われる。
アーサーは必死になって追いつくが、袋叩きに遭ってしまう。
看板を壊されたアーサーは経営者から責められて落ち込み、そのアーサーに同僚のランドルが身を護るためにと、拳銃を渡す。

小児病棟での仕事の時、アーサーはうっかり拳銃を床に落としてしまい、そのために解雇されてしまう。
しょげるアーサーが乗った地下鉄の中では、三人のビジネスマンが若い女性に絡んでいた。
アーサーはそれを制止しようとし、逆に、寄ってたかって暴力を受けて、咄嗟に拳銃を取り出す。
そして彼は、三人を射殺してしまう・・・

「一人の孤独な男が、いかにして“ジョーカー”として巨大な悪のカリスマへと変貌するにいたったか」との謳い文句。
“ジョーカー”とは、勿論、バットマンの宿敵の名。
なぜ、善良で気弱なアーサー・フレックが、社会の外的環境によって“ジョーカー”となるのかが綴られる。

アーサーは、脳神経に損傷を受けていて、緊張すると意思に関係なく突然笑いだしてしまう発作を持っている。
病弱な母親と二人暮らしの彼は、貧困に怯えながらも人々を笑顔にしようと、コメディアンを目指している。
だが、社会の不寛容がアーサーを追い詰めていく。

財政難を抱えた市は、社会保障費を削減する。
そのために、アーサーが受けていたカウンセラーと向精神薬の処方も打ち切られ、格差社会がアーサーを益々追いやる。

この作品は、当然架空であるが、その背景は正しく現在に通じる。
そもそもアーサーの発作は、小さい時の虐待が原因となっている。
一部の富裕層と大勢の貧困層。
アーサーは、殺人を犯すことによって貧困層のヒーローとなって行き、“ジョーカー”となる。
この“ジョーカー”役のホアキン・フェニックスが素晴らしい。
と言うか、真に迫っていて、我知らず感情移入させられてしまう。

久々に、これこそ傑作と言える作品と出会えたと思っている。
なお余談だが、何の説明もないが、後にバットマンになる少年ブルース・ウェインも出てきて、この作品の奥深さに感心した。
コメント
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