ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『年上の女』を観て

2017年08月03日 | 1950年代映画(外国)
以前に、廉価版の『年上の女』(ジャック・クレイトン監督、1958年)を購入し、そのままになっていたので観てみた。

イギリス北部の町、ウォーンリー。
ここの役所に赴任したジョーは立身出世を夢み、望みはウォーンリーの高級住宅に一家をかまえることだった。
それは上流社会に出入りすることをも意味する。

その目的のために彼は、町の有力者ブラウンの娘スーザンをものにしようとつけ回す。
しかしブラウンは、娘のスーザンをジョーから引き離そうとし、南仏へと旅立たせる・・・

簡単にいうと、貧乏青年が野望を手にしようと町の有力者の娘をどうにかしようとする話。
あまりにも打算的で、私にとって、どちらかと言えば好きでない話。
スーザンもジョーに夢中になるが、ことは当然のごとく、やっぱり、そんなにうまくはいかない。

それに関連して出てくるのが、事情もわかっているアリス。
スーザンも所属している素人劇団の年上の女優である。
ジョーは、人妻であるアリスに慰みを得、アリスもまた夫からの満たされない愛から彼との情事に溺れる。

前半、私の好まないセリフによる状況説明が続くが、中盤からの、アリスのジョーに対する思いと態度を見ると、もう目が離せない。
シモーヌ・シニョレのアリス。
人として、女としての秘めたる感情表現が、只々すごいとしか言いようがない。
当時の、アカデミー賞の主演女優賞、それとカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞したのも当然か、と感心する。

元々、このDVDを買おうと思ったのは、シモーヌ・シニョレの作品だから。
どちらかと言えば、少しおばさんぽい感じのシニョレを、印象としてずぅっと認識しているのは、
『肉体の冠』(ジャック・ベッケル監督、1951年)や『嘆きのテレーズ』(マルセル・カルネ監督、1952年)。
それとも、他の作品からの印象かもしれないが、シニョレ、イコールちょっとおばさん。

過去の映画で、自分が観ていなくて、だから知らない作品。
そんな中にも、埋もれた宝がいっぱい詰まっている、という事をいや応なしに目の前に突き出された傑出した作品だった。
コメント
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